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14話 聖女、王宮生活に馴染んでくる

 百合の花はキース王子の指示で、あっという間に王宮中のあちこちに分散して置かれることとなった。

 王宮は広い。

 私が客室を使わせてもらっている正殿以外にも沢山の離れがある。

 正殿では1階の肖像画の並ぶギャラリーのあたりに花瓶が置かれ、見事な百合の花が歴代王の肖像画と並ぶことになった。


 使用人の住む離れ、兵士たちが使う兵舎、官僚たちが使う離れの離宮にも並べられたらしい。

 部屋にむせ返る百合の花の香りは消え、ささやかに、花瓶2つ分だけの白百合が残った。

 それだけでも十分豪華で良い香りがするんだけれど……。

 

 聖女として王宮に召し上げられて一週間。

 

 だんだんと生活のルーティーンが出来てきた。


 朝は自室で朝食。入浴や身支度。

 午後一番は、王宮神殿で護国の結界の儀式に立ち会う。

 私は王子達が魔法陣の上で祈りを捧げるのを見ているだけだけど……。


 その後は、キース王子と黒曜石宮に移動して握手で魔力供給。

 

 その握手が、聖女の努めとはいえ、キース王子に触れるからいまだにドキドキするんだけど……。

 キース王子も手を握っている間はずっと嬉しそう。

 じっとキラキラした目で私を見つめてくる。

 私は恥ずかしくなって頬を熱くして、目を伏せてしまう……。

 魔力供給は数分で終わる。

 その後は、そのついでというか、キース王子のご希望で彼と数十分程度歓談して、自室に戻る。

 

 自室に戻った後は、軽い昼食。

 そして、ビアに聖女としての公務としてアステリアの歴史や地理、王宮のしきたりや儀式について教えてもらう。

 

 夕方にまた自室で夕食をとり、後は自由時間。

 シンシアやビアに案内され、王宮の広い庭を散歩したり、読書などでのんびり過ごす……。


 私が魔力供給でへたる事も無くなった。

 これまで寝込みがちだったキース王子も、私からの魔力供給ですごぶる体調が良いという。

 キース王子は寝込んでいた間に溜まった公務があるとかで忙しいようだ。

 それなのに彼はもっとアルナと話したいと言ってくれて、魔力供給後に離れる時はいつも名残惜しげ。


 黒曜石宮へ呼びに来るビアか、キース王子の付き人のシェリーをじっとりとした目で睨み、渋々と私の退室を許してくれる。

「アルナは今日も聖女の勉強?頑張ってね」

 私が退室する時、ちょっと拗ねたように云うんだから。

 私も離れがたくなってしまう……。

「キース王子も公務を頑張ってくださいね。応援しております」

「うん。アルナがそう言ってくれるなら頑張ろうかな」

 にっこり。

 屈託ない笑顔でいるとキース王子は本当に天使のような美少年……。


 不機嫌だったり拗ねた時とは別人のようだ。

 このギャップにハラハラするけれど、根は素直で優しいキース王子。

 はあ。やっぱいい。好き。


 握手での魔力供給はうまくいっているし、問題ないみたい。

 一応推しとのキスは……回避できてるし、これでいいのかな?

 もったいない気もするけど、私みたいな喪女が王子様とキスなんて残念すぎる!

 これでいいんだ……私のアステリアへの貢献はこれでOK!

 あとは聖女として、あれこれ勉強をしていかなきゃね。

 

 処女神リーン選ばれた以上、しっかりお務めさせていただきます!

 

 ◇◇◇◇◇


 午後の遅めの昼食。


 魔力供給の後って妙にお腹が空くんだよね。


 今日は虹色鳥にじいろどりのレッグのコンフィ。お肉を低温の油でじっくりと煮た料理。

 フォークを入れるとほろほろと崩れるお肉に、果物とバターと香辛料で作られたソースを絡めて食べると最高。

 アステリア国を流れる大河で捕れたスモークサーモン、クリームチーズ添え。

 香草と果物とナッツを和えたサラダ。爽やかな風味とナッツの香ばしさがたまらない。

 スープは姫かぼちゃのポダージュ。

 デニッシュとふわっわふわの白パン。たっぷりのハーブバターを添えて。

 デザートはリンゴのタルト。

 

 アステリア料理の最高峰という感じ。

 どれも美味しい。

 お腹いっぱい……。


 食休みの後、白百合の間にビアがやってきた。

 ビアは上級の王宮神殿巫女。

 日々神殿で巫女としての努めを果たしつつ、王宮内の離れに住んでいるらしい。

 

「正殿から見て、神殿の奥……官僚の一部が住む孔雀石宮マラカイトのみやに住まわせて頂いております」

 

 彼女は図書館棟から持ってきた本を執務机に置いて一息ついて言った。

「巫女や神官の一部のみ、王宮内に住んでおります。後は日々市街から王宮に通ってお仕事をしております。巫女や神官も、王族の傍系の子孫、貴族の家の出のものが大半。それぞれタウンハウスを持っておりますからね。もちろん官僚や武人も……。

 私は幼少期に巫女の才能を認めて頂き、王宮の住まわせて頂き、巫女としての教育を受けたのですよ」

「へえ、すごい。エリートだね」

「そんなことは」

 照れた様子のビア。

 私はちょっと考えて尋ねた。

「って事は、王子様達のこと、子供の頃から知っているのよね」

「ええ、幼い頃は一緒に遊ばせていただいたりすることもありました。子供ですからね。遊び相手もさせて頂いたものです」

「……キース王子は、どんな子供だった?」

 恐る恐る尋ねる。

 ビアの表情が少し強張った。

 緊張した様子になり、所在なさげに視線を持ってきた本に向けてみたり、目を泳がせたり。

 そしてゆっくりと口を開いた。

「そうですね……。

 大人しい性格でした。

 上の兄王子様達と少し年齢も離れていますから、一人でおられることが多くて。

 それに、今と同じ、病弱でした。

 本を読むのが好きで、よく図書館棟で借りた本を、お庭で読んでおられましたね。

 今は亡き王妃様に懐いておられて、お母様とおられる時はとても楽しそうでしたが……王妃様が持病で臥せってからは、足繁くお母様の元に通って付き添っておられました。

 本当にお母様思いのお優しい方で……」


 遠い目をして語るビア。

 レオリオ国王陛下の妻は、キース王子が幼い頃に亡くなったと聞いている。

 キース王子の健気なエピソードを聞いて胸が痛んだ。

 

「毎日、裏庭で詰んだ薔薇の棘を一輪、一本一本落として、王妃様に届けておられましたね。

 王妃様もとてもお喜びになって。

 王妃様が亡くなった後は、とても落ち込んで自室にこもることが増えて。

 その頃、私も巫女としてのお務めが本格的となり、王子様達の遊び相手という年齢ではないと神官達に嗜められまして、会話する機会が減ってしまいまして。

 キース王子は内気で人見知りですから、晩餐会や舞踏会でも他の貴族のご子息令嬢とはあまり話さず、すぐ自室に戻ってしまいます。

 話し相手兼従者のシェリー以外との交友が少なくて……。

 お部屋にこもって、コレクションの魔道具や異国の品を眺めたり、読書や散歩、一人でお過ごしになるのがお好きです。

 病弱ですし、どうしても閉じこもりがちで、それが好きなようで」


 引きこもりがち王子。

 うーん。

 王子様らしからぬけど、そこがいい。

 元オタクの私は共感しまくり……。


「アルナ様との、魔力供給の後の歓談はとても楽しそうですわ。

 ですが、もともと体も弱く、お一人が好きな方ですし、溜まった公務もありますから。

 あまり邪魔しないほうがよいかもしれませんね」

 ビアは肩をすくめて言った。

「そうね……。キース王子はお話したいと言ってくれるけど……あまり長居はしないほうが良いのかも……」

「そうでした、アルナ様!アルナ様の鞄ですが、神殿のものに尋ねてもやはり見つからず。

 エドワード王子とジェシー王子が、あの日あの場にいらしておりましたので、お二人の従者に尋ねてみれば何かわかるかもしれません。

 明日、儀式へ一緒に行ってみませんか?

 そこで尋ねてみましょう」

 

 私の無くした鞄!

 そう、ずっとビアに頼んでいるけど見つかっていないのよね。


「ええ、ぜひお願い、ありがとうビア」

「アルナ様のためなら喜んで」

 ビアは上品にニッコリと笑った。

「さあ、今日はアステリアの地理と天候について学びましょう。

 儀式で天候の安定も支えておりますからね。

 そう。これは国家機密なのですが、近頃、魔物の力が強くなり、結界を維持するのに必要な魔力が増えてきております」

 

 そういえば。

 夢の中で出会ったリーンが言っていたような……。

 魔物たちの勢力が強まって、王子達の結界術が跳ね返されつつある……。と。

 キース王子が魔の息吹の影響を強く受けていると……。そうも言っていたな。

 今は私の魔力供給で魔の息吹の呪いの影響での体調不良はだいぶよくなったみたいだけど。

 

「そうだったのね」

 私は相槌を返した。

「ええ、内密にお願いしますね。

 この国の平和が保たれているのは、護国の結界のおかげなのです。

 国の創立以来の結界術の効果が弱まりつつあると魔物や他国に知れたら、大変な危険が及びます。

 三王子が揃ったので、儀式の力が強まって今は拮抗していますが、一部の地域で魔物が結界の内側に侵入する事も増え……王都からも派兵が検討されています。

 本来だったら、魔物は結界の中に入れないのですが。

 聖女アルナ様。儀式の要はキース王子ですが、エドワード王子とジェシー王子にもいずれ魔の息吹の影響が及ぶかもしれません。

 今はキース王子のみに魔力供給をされておられますが、そのうち兄王子二名にも魔力供給を行い、効果を見たいと神官たちが申しておりました。

 そのおつもりでいて下さいませね」

「そんなことになっていたのね……。わかりました。

 必要とあらば、私ができる事をいたします」

 

 そ、そっか。

 最初にキース王子を選んだけれど、他の王子様達にも必要に応じて魔力供給は必要なんだった……。

 もちろん握手でだけど。


 でも、キース王子、嫉妬しそうだな。

 私が兄王子の手を握ったら、メンヘラ起こして怒り出しそう……って、私彼が嫉妬するのを想像してちょっと喜んでる?

 ダメダメ!

 聖女のお勤めなんだから、余計な事考えない!!


 こうなると、ますますあの無くした鞄を探して中身を読みたくなる。

 だって、ストーリーやこの国を守る為のヒントが書かれているかもしれないんだから。

 

 というわけで、お勉強タイムです。

 読書大好き&オタク気質の私。

 バッチリ勉強させて頂きます!


 私は夕方まで張り切ってビアの講義を受け、がむしゃらに知識を詰め込んだ。

 私に出来る聖女としての努め。

 やれるだけやるぞ~!

 

(続く…

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