【第150話】駆けつけた応援団
今晩は。
いいね、ありがとうございます。
励みになります。
雷の速さはとても速い。
重速術は発動時、世界がゆっくりと動きだすという、タイムラグが発生する。
その隙を狙っての、死角からの雷撃だ。
まあ、音だけでも凄かったけど。
普通なら、耳がキーンと鳴っているのだが。
期待したけど、彼らは見事、視覚、聴覚を守ってみせた、なかなかの戦士である。
阿騎だったら魔法のコントロール、どんぶり勘定だからやり過ぎていただろうなぁ。阿騎は大雑把な男子だし。
まあ、その点、私は繊細な女子よ……とは言わないけど。
でもこれ、勇者や魔王は絶縁していそうだな、通電はしないだろう。
他にオリジナルの技、あるけど、思い出せないっ!ここが悔しい所だな、亜紀、お願い!もうちょっと分かりやすくコンタクトできない?
まあ、亜紀は私だけど。
前方の14名を眺める。
その傷ではもう、全力は出せないだろう。
どう出る?
不死身の獣人族にアタックしたのだ、勝算があってのことでしょう?
先制攻撃の重速術で、仕留めるはずだった?
確かに今は、満月でも、新月でもない。
攻撃を仕掛けるには好機。
自身、最高の技で先に攻撃する、この作戦はよかったけど、まさか潰されるとは思わなかった?
次の攻撃手段はあるの?
私は、油断すること無く、朱槍に再び魔力を流し始める。
すっ、と絶妙のタイミングで動く剣聖。
「あっ」
イオリちゃんの横をすり抜け、私に斬りかかる。
「駄目ですっ!」
イオリちゃんの制止の言葉も届かず、剣聖とのバトルが始まる。
それともイオリちゃんの言葉は、私に投げかけたのかな?
「え?」
衝撃波!?
剣が伸びた!?
私のいた場所がバラッと砕ける。
何だ!?今の!?
スッ、と剣を振る度、剣が伸びるように見え、大地が砕ける。
これ、空気による攻撃だ!
多分、夢の亜紀なら使えるはず!
いや……覚えているのではないか?この技!
どちらにしろ、私は技を見た。
早速、マネをしてみる。
槍で。
「ふんっ!」
ドンドンッ!
「なっ!?」
驚く周囲の戦士達。
「ア、アッキー?」
できた。
『抜き』とは違う攻撃だ。
抜きは内部破壊が目的だ。
これは外部破壊が目的みたい。
それに『抜き』より間合いがあるな、中距離攻撃ができる!
剣聖と技の応酬が始まる。
手数が多いな、さすが剣聖。
受け流すが、どれも一撃が重い!
イオリちゃんも黒い騎士達に挑んでいる。
え!?二刀流!?
大小の剣を巧みに使い、次々に相手を切り伏せている!
イオリちゃん、足捌きが凄い!
ステップ?踊っているようだ!
あ、でも、腕や、足を斬っているけどトドメは刺していない?
「馬鹿な……わ、技を見ただけで?」
騒ぎ出す周囲。
「見ただけで盗んだ……修得だと?」
「おい、これは……」
「ああ、まるでこれは……」
「魔ゴブリンではないか!」
剣聖が技を出せば出すほど、私のスキルが増えていく。
踏み込み、受け、払い、流し、剣の握り方、呼吸。
「いや、魔ゴブリンでも、ここまで正確に早く修得は……」
魔ゴブリン……その名前を聞いて、怒りと悲しみがじわり、と私に湧く。
魔ゴブリン、彼らも私達なのだ。
メイドンやエルフさんがいたから、北のゴブリンや秘のゴブリンが派生した。
「口上、聞いたでしょう?私はゴブリンでもあるのよ!」
そう言って倒れている者達を、怒りを漲らせ睨む。
「ぐっ!」
え?なに?
睨まれた者が苦しみ、大地に伏せる。
え?どうしたの?
「皆の者、気をしっかり持て!魔眼だっ!」
剣聖が警告を発する。
「!!!!!!!」
「こ、この者、魔道士!?ネ、ネクロマンサーか!?ぐわっ!」
「戦いの中で、よそ見とは余裕ね?」
イオリちゃんが冷たく言葉を漏らす。
これで、立っている者は剣聖一人。
しかし、魔眼って?人を不幸にする眼差し?呪いを送る眼?
ち、ちょっと!それ!その言い方、酷くない!?
澄み切った綺麗な眼、とは言わないけど……。
そんな眼が、何かを捉えた。
なんだあれ?
ちゃっぱ、ちゃっぱ、忙しく何かが揺れている。
せわしいな。
剣聖達の、かなり後方で何かがうごいているのだ。
剣聖達も気が付いた?
ゴブリンの眼でも、獣人族の眼でも確認が難しい程遠くだ。
それでも魔力が揺れているので、眼を引く。
?
旗か?
パタパタ。
誰かが、せわしく旗を振っている!?
なぜ?なに?こんな朝早くから?
(卑怯だぞ~っ)
え?
(女の子二人に皆で!それでも騎士かぁ!)
えっ!?
(おい、ゴンズイ、お前も何か言えよ!)
(……これ、重くって!ん?おい!皆、倒れていないか?)
あ!あれ!護武鈴好の旗だ!
ゴンズイくん、が振っている?
(な、なあドングリ、ここ、遠すぎないか?ここで応援して、見える?聞こえる?)
(見えるし、聞こえるよ!……多分……)
「ゴブ、じゃあさあ、ゴンズイ、近くに行くゴブ?」
(うめちゃん、無理だよ、こえーよ!あの黒い騎士さん達、おっかねーよ!)
……何しているの?
「「「!!!!!!!!!!アッキー!!!!!!!!!」」」
「お、応援しにきたゴブ!」
(頑張れ!アッキー)
え?
(お、俺達、ほ、ほら繋がっているし、何か危ない感じがして……さ)
(それでね、それでね、クルミちゃんが応援に行こうって!)
いや、危ないって!
でも遙か遠くのその場所なら……取敢えず安全か?……ん?
で、クルミちゃんは?
彼女だけいない。
ク、クルミちゃんは……どうしたの!?
(あ、くるみちゃん?クルミちゃんは最初の雷の攻撃で……)
(おい、ゴンズイ!ストップ!ストップ!駄目だって!)
(びっくりして、お漏らしして着替えに帰った)
どかっ!ぼこぼこ、げしげし!
(駄目だろ!クルミちゃん、口聞いてくれなくなるぞ!)
(え?なんで?いででででっ!う、うめちゃん!抓るのやめてぇっ!)
今のは、聞かなかったことにしておこう。
ゴンズイくん、正直に話すだけでは駄目なのよ。
私なんて、正直に報告書、書いただけで殺されたんだから……。
さて、剣聖、どう出る?もうあなた一人だよ?
こっちは力強い応援団もいるんですけど?
次回投稿は 2023/06/09 22時の予定です。




