【第149話】 追手
今晩は。
サブタイトルが変りました。
「私のご主人さまは、凄い方なのですね」
「なに?イオリちゃん?私、凄い?」
凄いとは?まあ、勇者にボコられて、次の日は復活しているけど、これか?
これは獣人族の能力、満月、新月パワーだよ。
それに、勇者朱天童子もボコしたけど回復してくれたし、お守りもくれたりしたし。
「勇者に挑み、王都の影、商工会、タリに挑み一組の夫婦のために命を賭けるのですもの」
え?だって前世の両親だし。
今生でも散々おせわになっているし。
リュートお母さんやニトお父さんは助けるのは当たり前だと思うけど。
それよりもなによりも、あの二人が大好きだし。
……赤ちゃんもお腹にいるし。
「まあ……言われてみれば、そうね?いや、どう考えても損な性格ではなくて?」
そう言えば、私の利益って、なに?
ただの自己満足か?
あ、今シルバーっち、クスクス笑った!
ゴルちゃんも鼻で、フンッ、した!
辺りはまだ暗く、闇が支配していた。
夜明け前、さすがに暗いなぁ。暗さが増していないか?
「虫の音が止みましたよ」
「そうね、イオリちゃん」
静かになりすぎる周囲。
黒い影が、どこからともなく現れる。
14名の武装集団……え?強そうだな。
装備品、皆、黒色だし。
「メイドナ家の筆頭が騙されおって!恥をしれ!」
お、邂逅第一に非難か?
中央の長身の戦士が詰る。
この人が多分、一番強いな。
で、誰が騙したのかしら?
答えたのは、右側の戦士。
「きさまだ!北の田舎者め!このような文字も持たぬ蛮族に、誑かされるとは!」
カッチーン。
わたし!覚えたわよ!勉強したわよ!人の努力をなんだと思っているのよっ!
「文字はなくても、あなた達より品性、徳性は遙かに高いのですが?」
「……」
ん?
「言葉に詰まったの?図星?」
中央の戦士を睨む私。
「アッキー、彼は下の者とは直接口を利きません」
下?
「え?下って基準はなに?身長?彼、背が高いけど。私、槍術、剣術、武術一般、彼らより遙か上よ」
「……彼、剣術では、王都筆頭ですよ」
「ふん!まあ、私が言うのもナンだけど、武術や芸術に性格は関係ないしね」
「彼がセンバ騎士団長、剣術の師よ」
「え?こいつが!?こいつから剣教わったの?センバさん、苦労したんだね。イオリちゃんも教わったの?」
「いえ、私は……彼は女性に剣技は教えません」
「なんで?」
「必要ないそうです」
悔しそうな、イオリちゃんのお顔。
剣技を押しつけるのはよくないが、自ら求める者には、与えるべきではなかろうか?
「この時代、身を守る術は必要よ?なに?代わりに守ってくれるとでも?毎日何処かで人族や妖精が死んでいるのに?教えないとはケチンボね!」
チラッ、とお顔を見る。
暗くてよく見えないや。いや、魔力で隠している!凄いな。
匂いも変らないや。
平常心?
あ、お髭、伸ばしている?
「アッキー、以前になく挑発しますね?」
周りの戦士達が口を開く。
「どけ、バイオリーナ。我らの強さ、知っているであろう?」
「何を間違った?メイさまが悲しむぞ!」
「ホルダーの名前に騙されおって、これだから女は……」
ぷち。
「おい、今の言葉訂正しろ」
「ア、アッキー!冷静に!彼らの手口です!」
「イオリちゃんはお前らより、遙かに立派だ」
「バイオリーナを騙しておいて、何を言うっ!ホルダーなどこの世に存在しない!自称ホルダー蛮行を、見たことがあるのか?聞いたことがあるのか!?知らぬと言うのか!」
知らないけど?
「知りもしない過去の話をでっち上げ、子の病や、戦場での負傷、不運につけ込み、金品を巻き上げ、異を唱えれば地獄に落ちるぞと言葉で縛り、財がなくなれば身体を売らせ、盗みを進める!ホルダー自身が地獄を作っているではないか!ホルダーは毒物でしかない!」
毒物?それは当たっているかも。
しかし、世のホルダーってとんでもないことしているのね。
いや、ホルダーの名前が。
「私はイオリちゃんに、お金払っているけど?まあ、安いかも知れないけど……さ」
中央の黒い騎士が合図をする、
一斉に剣、槍、弓を構える黒い騎士達。
問答無用ってか?
ここで素朴な疑問。
こいつら、誰だ?
リリの関係者ってのは分かるけど。
「挨拶は大事よね、イオリちゃん。大人がちゃんと示さないと。あ、まだ名乗りを上げていなかったわね」
先ずは自己紹介?向こうは私を知っているみたいだけど。
「……」
無視か?
私は朱槍に力を込め、大地を突いた。
「ふんっ!」
ズンッ、と重く揺れる大地。
「きぁ!」
思わず、可愛い声を上げるイオリちゃん。
すっ、とお腹に力を溜める。
行くぞ、言葉に魔力を込めて、せーの!
「大地、虚空の音にこそ聞け!近くば寄って、目にも見よ!やあ、やあ、我こそはイニシエのゴブリン戦士、闘神の記憶を持ち、アトラの超戦士、数百のゴーレムを友と呼び、異界にては式神アーティフィシャル インテリジェンスを使い世界を滅亡に導く!東はゴブリン砦を破壊し、西は竜騎士を地に落とし、封じられた黒き竜を解放、さらには魔族チクリを賢者に落とす!誇り高き獣人族、季羅、乱の子、婆娑羅、傾奇者ホルダー明季なり!」
「!!!」
ビックリするイオリちゃん。
黒装備の戦士達も固まっている。
「名乗れ!その方達、名も無き戦士か?ならば墓標に無名を刻もうぞ!」
これでも……名乗らない。
お返事もしない。
あ、日が昇り始めた。
朝日に照らされる黒い騎士14名。
ん?
朝日に照らされ、次々に浮かび上がるその容姿。
中央のリーダーらしき者は髭を蓄えていた。
……何という名前の髭だろう?
横に広がっている?
カイゼル髭?
「ちょっと揃えたら?左右おかしいよ?その、バランスが……ね?」
思わず声に出た。
正に、思わず。
だって見た目、変。
折角のお髭。
この一言が逆鱗に触れた。
プチ。
ん?霊音か?
「っっっっっきさまあああああっ!我を侮辱するかあああああっ!皆の者!必ずっ!必ず仕留めよよおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!」
「イオリちゃん、お返事?してくれたよ!」
お髭は禁句だったのね、でも私、知らなかったし。
「ア、アッキー……彼、剣聖よ?どうするのよ!怒らせちゃって!」
「はん!剣聖が聞いて呆れる!その称号、勝って私が貰う!」
次回投稿は 2023/06/07 22時の予定です。
一章46話までイラストが入りました。
よろしければ、ご覧ください。




