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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第148話】いつまでもどこまでも     

今晩は。

投稿です。

「か、か、駆け落ち……」


 真っ赤なお顔で、そう呟いたのはイオリちゃん。

 あ、今、十蔵さんのこと、思っている?


 ん?ニトお父さん?


「その前にリュート・フルートさん」


 え?どうしたのニト先輩?

 雰囲気が?


「な、なにニト?」


「決魂してください」


 あ、時が止まった。


 リュートお母さんもイオリちゃんも、シンお姉ちゃんも動かない。


 うわぁ生プロポーズ、初めて見た!


「周りを説得しようと努力をしたが、認められなかった。婚約という形をとったが、2人だけの約束になってしまった。一切認めてもらえなかった……ならば奪わせてもらう。私の妻になってください」


「……はい」


 生まれ変わっても、夫婦になる。

 ……なんか凄くないか?

 別の人は選ばない。


 勿論、この二人は前世の記憶はない。


 記憶が無いのに、別の人生なのに、別の人、選ばないのだ。


 いつまでも、どこまでも、二人三脚。


 引かれ逢うんだ。


 そして生れる子供は……。


「おめでとう」


 シンお姉ちゃんが二人に告げる。


「おめでとうございます」


 イオリちゃんも祝福を口にする。


「おめでとう!」


 一組の、夫婦の誕生だ。


「明季姫……」


 真剣なお顔。

 何かしら?


「なんでしょう?」


「正直に話す。私達は、決魂を反対されている。リュートの母と、お姉さん、それ以外は敵なのだ」


 敵とは表現が厳しいな。


「子供を取られる恐れがある」


「なっ!」


 思わず声が出た。


「穏やかではないですね?」


「笑顔で近づいて、ナイフを刺す。そんな一族なのだ。喜ぶふりをして、祝福するふりをして、子供を取り上げるだろうな」


「なぜ?」


「私やリューをコントロールできる」


 汚っ!なに?大人のすることか?いや、大人だからできるのか?


「どうするのです?」


「南の港町か、東のゴブリン砦に向う予定だったけど……」


 その時突然、殺気が部屋中に漲り始める。

 誰だ、これ?

 何事!?


 最初に動いたのはシンお姉ちゃんだ。


「明季、身内だ」


「え?」


 話が見えない1


「季羅お父さんが、お前に付けた影だ。もう一人はセンバ騎士団長の部下であろう」


『言葉だけで失礼します、季羅村長の影、ノラといいます。今の話、取られました。お気をつけください』


 取られた?


 え!?聞かれたってこと!?

 妊娠がばれた!


「……ノラさん、怪我をしているんじゃないの?」


 私は聞いてみた。

 波動がおかしい。


 これは、向こうの間者と一戦、交えているな。

 獣人族なら、回復力が凄いはずなんだけど?


『……ご心配は無用です』


「サンヌ、いるだろう?話せ、何用だ!」


 え?イオリちゃん?怒っている?サンヌって!?


『……バイオリーナさま、フルート家はリリが2名在籍しております。リュートさま、ニトさまは、このままでは危険です。お子のお命も』


 命!?


 リリってそんなにヤバい組織なの?

 え?でも校長先生、構成員の一人だって?


「兄には伝えたのか?」


 兄?ああ、センバ騎士団長のことだ。


『はい』


「兄は、なんと答えた?無言か?」


『今のままでは手が出せぬと……』


「情けない英雄殿だな」


 そして皆が一斉に私を見る。


 え?何?なんで?

 え?ニトお父さん!?


「私の考えが甘かったようだ、龍門の守護者、庇護を……」


「龍門の守護者?庇護?」


 誰それ?なにそれ?


「明季、お前のことだ」


「え?なにそれ、シンお姉ちゃん?」


「学生達に襲いかかる魔昆虫や虫宿師を退け、校内で発生した商工会のゾンビ倒し、入学式ではドラゴンを追い払う。乱暴者で一族より追放同然のオークを従え、ハーピーの裂き姫と語り合う。お前は影で、龍門の守護者と呼ばれているぞ」


 はい?


 ええええっ!?

 は、初耳なんですけどぉ!?


「えっ?なにそれ?いつから?恥ずかしいよ!」


 そして、皆、真剣な眼差を私に送る。


 ああ、リュートお母さん泣きそうだ。

 祈るような気持ちが伝わってくる。


 リュートお母さんの感じている未来、明るくないんだ。


 私にどうしろと?


 私に、何ができる?


 シルバーっちもゴルちゃんも、ただ見ているだけだ。

 私の行動を冷たい目で見ている。

 彼らに相談はできない、私が判断、選択するのを待っている。


 ……ならば。


 ここは危ないな、この地では絶えず危険に晒されるだろう。

 東の砦は分校も建設中、北のゴブリン、ン・キングにドロトン先輩、アイお姉ちゃんにリンドウもいる。あそこはタリの影響も受けないのでは?


「リュート先輩、ニト先輩、東のゴブリン砦に向いませんか?あそこなら少なくともここよりも安全です」


「……」


 黙して頷くニトお父さん。


「ノラさん、季羅お父さんとアイお姉ちゃんに連絡を!大恩あるニト先輩の危機、必ず守り通してくれと」


『はっ』


「秘のゴブリン、これは動く価値があるでしょう?どう?」


 私は天井に向かい話し掛ける。

 お腹の子はサイザンお兄ちゃんだ。


 絶対に動く。


 例え魔力が少なくても、いや魔力が無くても、その魂に魅せられるはず。


 どうにかしてやりたいと、心が動くはず!


 あるのでしょう?あの時の記憶が、私と同じ時代を走り抜けた、誰も知らない記憶が!

 悲しく、悔しく、燃えるような記憶が!


「アッキー?秘のゴブリンは都市伝説よ?」


 そうだね、イオリちゃん。


「引受けよう」


「!」

「い、今の声は何だ?」

「け、気配すらしない、虚空からの声?」


「リュート、ニト、今から行くぞ」


 え?シンお姉ちゃん!?


「早い方がいい、荷物、用意は無しだ」


 あ!ハピ子?


「立ち聞きして悪いが、その護衛、我らも付き合わせて貰おう。アイナン、第3小隊を呼べ」


「王母さまの直属ですが?」


「母上や、私の部隊は曲者が紛れ込んでいる、今より飛んで呼んでこい」


「はい」


 校長先生、聞いていたでしょう?どうします?リリに連絡しますか?


(リリよりも生徒が大事でな、我は若者の味方じゃ)


 その言葉、信じていいのでしょうか?


(秘のゴブリンは、確認されたことがない存在だ。それを呼びつける者と敵対しても、いいことな無かろう?)


 校長先生が、リリから狙われたりしませんか?


(お互いを狙いだしたら、組織が滅ぶ。それに基本理念はン・ドント大陸の発展じゃ)


 発展?自分達だけの発展じゃないでしょうね?


(言うではないか!)


 あの二人、貴重な人材なのですね?


(ああ、ニトの薬草知識は驚異じゃ。恐怖すら感じるぞ。それにリュートの知識。誰もが欲しがるであろうな)


 まあ、薬草の知識は前世からだし、リュートお母さんの織物や染め物もそうだしね。


 そして二人は、ゴブリン東の砦へ向った。


 ハーピーの群れや、獣人族、秘のゴブリンに護られて。


 夜明け前、私とイオリちゃんは王都東門に立っていた。


 追手が掛かったら全て討つ予定である。


次回投稿は 2023/06/06 22時の予定です。

サブタイトルは 南のダンジョン です。


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