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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第147話】リュートの想い     

今晩は。

ちょっと遅れました、すみません。


 どう話す?


 できてます。

 いますよ。


 いや、違うな?


 おめでたですよ?


 どうして分かったの?と聞かれたら?


 ……ここは正直に話す?


 勇者朱天童子とバトルして、赤ちゃん指摘されたと?


 ……意味不明だし!


 あ、リュートお母さん。


「アッキー、大丈夫?お話しって?私は明日でもいいんだけど?」


 確かに今、部屋には誰もいない。

 そっ、と私の手を握るリュートお母さん。


 あ、いる。


 手を通し、命の鼓動が伝わってくる!

 確かにサイザンお兄ちゃん、いる!


「ど、どうしたのアッキー!?どこか痛いの?」


 な、涙が、涙が止まらんっ!

 無理、これは無理だ!我慢できないっ!


 あの、サイザンお兄ちゃんがここにいるっ!


 ううっ、産まれる前からこれかっ?産まれたらどうなるの?号泣する?


 ちっちゃいサイザンお兄ちゃんに、お姉ちゃんとか、いもうちよ、とか言われたらもう、死ぬ!


「うう……あ、赤ちゃん……凄く優し……くて……お……母さんとお父……さんが大好きな赤……ちゃん……がいるっ」


「え?」


「さ、触って……さ……いるのよ、感じるでしょう!?お母さん!」


「!?」


 お腹をそっと触るリュートお母さん。


「あ?」


 身をくねらせ、喜びまくる子供のイメージが伝わる。


 はははっ分かるんだ!サイザンお兄ちゃん!


 リュートお母さんだよ!


「あっ……」


 頬を染め、歓喜の表情を浮かべるリュートお母さん。


 そして……!


 一瞬でお顔は青ざめ、震え出す。


 え!?


 なに?どうしたの?どういうこと!?


「ママ・リュー?」


「……どうしよう……赤ちゃん……できちゃった」


 え?


 ……望んでいなかった……の……?


「アッキー……」


 バカだ、私は!


 二人は決魂していないのだ。


 今からなのだ、決魂は。


 いや、決魂するものだとばかり、思っていた!


 私は恋愛経験ナシだ、こんな時、どうすればいいのだ!?

 この世界の倫理観って、どうなっている!?


 相談最適任者、誰だ?


 ランお母さんか?駄目だ、獣人族の仕来りが全てに通じるわけではない、それにランお母さんも妊娠中だ。


 誰だ?校長先生?生徒会長?保健の先生?


 ……いや違う。


 まずは、ニトお父さんに言うべきだ。


 その前に、とても大事な確認。


「……ニト?」


 掠れた声で私は尋ねる。

 俯き、小さく頷くリュートお母さん。


「ニト先輩に話そう、一人で悩んでは駄目だ」


「……でも、怒ったりしないかな、嫌われたりしないかな……」


 ニ、ニトお父さんはそんなこと!……待てよ?私が知っているニトお父さんとニト先輩は魂は同じでも別の人と見るべきでは?


 あああっ、もう!前世の記憶邪魔だ!


 ニトお父さんはどの時代に産まれても、みんな優しい、頼もしい、とは限らないではないかっ!


 考えろ!


 そうだ、素直に考えてみよう!


「……う、産みたいの?」


「私の……赤ちゃん、産みたい!」


「な、何が心配?何が不安?」


 リュートお母さんは服や、染め物、もう経済的には安定している。


 不安要素は?


 ニトお父さんはもう名のある薬師だし、騎士団との繋がりもある。


 残りは?


 ……両親?


「反対している人がいるの?ご両親?」


 そうだ、妊娠、出産は男女二人の問題だけど、それだけじゃない。


「……一族に反対……されている」


 そう言ってポロポロと涙が……。


 おい!ニトお父さんとリュートお母さんのどこが不満なのだ!


 一族?ニトお父さんの一族?それともリュートお母さんの一族?

 どっちだ!?両方か?ふざけんなっ!


 私の両親(元)を否定するのか!?


 5年の命を、必死に生きた二人だぞ!

 私とサイザンお兄ちゃんの両親だぞ!


 身体に力が漲り、発汗が始まった。


 え?


 ゾアントロピー!?


 私は犬耳でくるくる尻尾の半獣人になっていた。


 驚き見つめるママ・リュー。


「ご、ごめんなさい、驚かして……」


「……本気で心配して、怒ってくれたのですね、アッキー?」


「……」こくこく。


 半獣人の私は、力が漲っていた。


 これ、以前より、調子いい?


 怒り?の感情で回復した?

 ……なんだろう?これ、何か重要な現象だ。


 感情が、身体を強化する?回復させる?


「どうした!?今、魔力が弾けたが?」


 慌てて部屋に飛び込んでくるニトお父さんとイオリちゃん。


「アッキー!?大丈夫ですか!?」


「だ、大丈夫だよ!」


 私の姿を見て、視線を固定する二人。


「「……」」


「えっと……あの、そんなに変かなぁ?その、あまり見られると……恥ずかしいのです、けど……」


 ここでニトお父さんはリュートお母さんの異変に気が付く。


 赤い目、涙の後。


「リューどうした!?」


 びくっ、として視線を逸らすリュートお母さん。


 そしてその視線は私を捕らえる。


 あ、リュートお母さん、私を頼っている。

 どうしていいか、分からないんだ。


「ニト先輩」


「なんだ?明季姫?」


「真剣勝負しましょう」


「え?」


「私は小さな子供です、ねえニトお父さん、なんでこの風車は回るの?」


 驚いた目で私を見るイオリちゃん。


 何かを感じ取るリュートお母さん。


一瞬、眉をひそめ、そして、真剣に考え出すニト先輩。


 どう答える?


 相手は子供だぞ、理論は通じない。


 風が吹くから回る。

 では、風ってなに?子供は聞いてくるぞ。

 そんな大人の答えでは、子供は納得しないのだ!


「それは……」


 ニト先輩はなんと答える?


「それは?なに?教えてニトお父さん!」


「それは、元気がいいから回るんだ」


「!」


「だから、明季、君も早く元気になるんだ、みんな待っている」


 ニコリ、とするニトお父さん。


「リュート先輩、ニト先輩はちゃんと真剣に子供のこと、考えてくれるよ。子供目線で子供が喜ぶ答えを、言ってくれるよ」


 私を見つめ、それからニトお父さんを涙目で見るリュートお母さん。


「!」


 あ、気が付いた。


「リュー、いるのか?そこに、そこにいるのか?……俺達の、子供が!?」


「……はい」


 次だ、私の知りたい言葉は。


 どうか、喜びの言葉と行動をしてください、ニトお父さん!


 え!?


 か、考えている?

 考えることなの!?


 嬉しくないの!?

 素直に喜べないの!?


 ニトお父さんは、とんでもない言葉を口にした。


「駆け落ちしよう」


次回投稿は 2023/06/05 22時の予定です。

サブタイトルは いつまでもどこまでも です。

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