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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第146話】夢で逢えたら     

今晩は。

今日は満月です。

外は明るく、神秘的です。

 ここは?


 辺りを見回す。


 日本庭園!?


 やった!来れた!超空間!


 チャポン。

 水の音!


 カメさん!


(一度だけだ、思い残すことなく話すがよい)


 え?一度だけ?


 そして目の前には、魔王になって死んでしまった兄。


「メイドンは?」


 え?そこ?

 ここは素直に再会を喜びましょうよ!


「メイドンは眠っているわ、起こしに行こうよ!お兄ちゃん!」


「そうだね」


 ぎゅっ。


!!!!!!!


 打打打打打打打打打打、抱きしめられちゃったっ!?


「ん?」


「な、なに?サイザンお兄ちゃん?」


「弟よ、弟は妹か?」


 ?


「あっ!そうだよ、今は私、女の子だよ、獣人族の!」


「え?ゴブリンの男の子に見えるけど!?」


「え?」


「……妹よ、兄はどう見える?」


「ゴブリンの男の子」


 ここは超空間、人によって、見え方が違うんだ!


 私は、兄をじっと見る。


 自然と涙がこぼれ落ちた。


「泣くな、妹よ」


「……ごめんなさい」


「謝る必要はない。兄は産まれて、親孝行をする予定だ!とーちゃんとかーちゃんを散々泣かせてしまったからな。それに魔王になって鱗の人族を滅ぼしてしまった……だから東の大陸に対して、できることをするつもりだ!」


「お、覚えているの?魔王になったこと?」


「いや、覚えていない」


「……」


「炎の巨人に会った」


「!!!!!!!!」


 あ、あ、あの巨人に!?


「兄は真っ白になって、皆のことは忘れるそうだ」


「……そう」


「だが、魂は知っていると言っていた!」


「……!」


「だから妹よ、兄は、お前を思い出せないかも知れないけど、兄に力を貸してくれ!ああ、そうか……獣人族なら、もう妹は他人なのか?」


「そうなるの……かな?」


「……それは悲しいぞ、それはイヤだな……」


 他人?違う、魂の系列では、私はこの人の弟であり妹だ!


「血の繋がりはないけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ!私だって、お父さんやお母さんには幸せになって欲しいし!サイザンお兄ちゃんだって!」


「そうか!兄は嬉しいぞ!」


 え?


 ああ、サイザンお兄ちゃんが薄れていく!


 時が来たのだ、お兄ちゃんとの邂逅はここまでなのだ!


 言いたいこと、一杯あるのに!まだ何も言っていないのに!


 そんな!


「お兄ちゃん、私、お兄ちゃんが産まれて、お兄ちゃんを見て、突然泣き出すかも知れないけど、変な女の子とか思わないでね!?」


「ああ、忘れないようにするよ!」


「それから、それから!それから!?」


 ふっと消えてしまうサイザンお兄ちゃん。


「か、かめさん!お願い!まだ、言いたいこと、いっぱい、いっぱいあるの!」


(現世で会える)


「でも!朱天童子が言ったわ!ホルダーの記憶は猛毒だって!確かにそう、前世の記憶は邪魔なのよ!」


(それでも会える。出会いを大切にするのだ)


「……ううっ」


 私は両手でお顔を覆い、泣き出した。


(泣いてばかりはおれんぞ)


 え?


(いい出会いもあれば……)


 !

 

 悪い出会いもある!?


 ちゃぽん!


 か、かめさん?


 ダークエルフ!?

 いや、それだけじゃない、東の大陸とか言っていたぞ!?


 ……お兄ちゃん?


 我が兄の進む道は、とんでもなく大変な道のような気がしてきた。


 ん?


 唇が濡れた?


 ぱちっ、と目が開く。


 どこだ、ここ!?


 ぐっ、ち、力が入らない!

 全身が痛くて……発熱している?


 あ、知っている天井だ。


「……イオリちゃん」


 もの凄く掠れた、小さな声しか出ない。

 これ、本当に私の声!?


「!」


 イオリちゃんの綺麗なお顔が、目の前にあった。


 整った爪、握られた綺麗な布。

 その布は湿り、私の唇を少し潤していた。


「うっ、ううううううっ」


 え?


「……そ、そんなに泣かないでよ」


 囁くような私の声。


「うう、アッキー……アッキー……」


 亜紀、私のために泣いてくれる人がいるよ、それも一人じゃない。

 そうだね明季、私はこの人達の幸せを願わずにはいられないよ。


 寮の私のお部屋には、癒やしの波動の結界が張り巡らしてあった。


 シンお姉ちゃんとハピ子が両手で印を結び、軽く目を閉じている。


 床に座り込み、細く長い呼吸音が規則的に聞こえてきた。


 隣のお部屋では、リュートお母さんとニトお父さんが、何やら薬を作っている。


「目が覚めたようじゃな、我はこれで失礼する。シンお姉さま、もう明季姫は大丈夫です」


「ありがとう、ソレル姫」


「いえ、シンお姉さまは私の導きの大姉ですから。キン子、南のダンジョンは二日後じゃ。次の日、倒れた者が続出してな、延期となった。早く元気になれ」


 そう言ってハピ子はヨロヨロと立ち上がり部屋を出て行った。


「ハーピー族に伝わる呼吸法を教わった。門外不出だろうに、明季の命が大事だとさ、礼を言わなければな、明季。それとグラウディーくんは無事だ、魔石をだいぶ消費したらいいが、ケインが今補充しに向っている」


 こくこく。


「気が付いたか?」


 そう言ってお部屋に入ってくるニトお父さんとリュートお母さん。


 ……あれ、何でだろう?この二人を見ると、なんだか恥ずかしいぞ?


 ニトお父さんは私の胸の傷に薬草を塗っている。


「この傷は勇者からの傷、残念だが消えない」


「そんな、アッキー……アッキー女の子なのに……」


 悲しい顔をするリュートお母さん。


 リュート……お母さん!?


 あ!


 自然と目が行く、リュートお母さんのお腹。


 あああああっ!

 そうだった!

 どうしよう!?


 何と伝えよう?


 誰も気が付いていない。


 魔力感知も霊視もまだ反応しない。


 いや霊視は私のレベル不足だ、レイランお姉ちゃんレベルなら分かるはず。


 えーと、えーと?


 皆の前では駄目だ。


「汗を拭くね、アッキー」


 リュートお母さんの細い指が、私の髪に触れる。


 今だ!


(ママ・リュー、二人だけでお話しがしたい、とても、とてもとても、大事なことなんだ)


(え?)


 ちょっと驚くリュートお母さん。


(いいわよ、アッキー)


 よし、コンタクトできた、後は話すだけだ。


 ……えっと、どう話せばいいんだ?

次回投稿は 2023/06/04 22時の予定です。

サブタイトルは リュートの想い です。

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