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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第145話】 朱天童子 4     

今晩は。

号外です。

 ……ふふっ、と笑った勇者一寸法師。


 お顔は可愛かったけど、内に秘めた力は凄かった。


 例えば、目の前でライオンの赤ちゃんが転がる。

 大きい猫みたいで可愛いが、私はご飯になる可能性がある。


 勇者一寸法師は可愛いが、大陸を沈める力を持っている。


 ご飯どころか、世界か危ない。


「俺達は色々と忙しい、お前のことなど、その内忘れるだろうな」


 一寸法師はそうでしょうね、あなたは?あなたは私のこと、忘れるの?実は優しい朱天童子さん。


「……殺されたいのか?」


 あの勇者一寸法師が先に来ていたら、私は死んでいたわ。


「……」


 どうして助けてくれたの?


「助けた覚えはないが?」


 ……そう。でも、ありがとう。


「さあ、来たぞ」


 え?


「お前の声に呼ばれた夫婦だ」


(どこだ阿騎!?)

(方向は合っていると思うけど、上手く魔力が働かないわ)


 え?


 え?季羅お父さんと違う!?


(アシュリー王の封印が一時、解けたとの噂もある)

(アッキーかしら?)


 ……リュートお母さん?


(学校からの連絡では、怪我人はいなかった、と聞いたが……ペガ、エルフの像へ)


 ……ニトお父さん?


 ん?


 え?え!?夫婦!?夫婦?

 決魂したの!?


 そんなお話し、聞いていないけど!?


 動く眼でチラリと勇者朱天童子を見る。


「……夫婦ではないのか?手を繋いで寝ていたが?違うのか?」


 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 ス、スゥ、ストオオオオオオオオオップウウウウウ!


 はい、そこまでぇえええっ!


 ひどい!変態!変質!ドスケベ!エッチ!

 な、何を!の、のぞいているのよっ!


「我は勇者朱天童子、悪意はない。それに、のぞきは犯罪だぞ?」


 いや、だけどね?ああ、もう!


 だから、リュートお母さんとニトお父さんお話しはやめてっ!


「それに女の方は……」


 ちょっと聞いている?私のお話聞いている!?


「着床しているぞ」


 ち、ちゃく、しょう?


「着床だ。女の方は着床して間もない。本人は気が付いていないようだが?ペガサスには乗らぬ方がいいと思うが」


 着床?


 なんだっけ?


 !


 妊娠!?

 赤ちゃん!?


「……ほう」


 あ、また変な魔力使っている!

 今度はなに?リュートお母さんに酷いことしないで!


「この波動は、知っている」


 な、何を覗いたの!もう!


「サイザンだ、子はサイザンの生まれ変わりだぞ」


 ……え?


「勇者の判定だ、間違いない。魔力は以前ほど無いな、魔王因子も定数以下だ。今回は討伐対象にはなるまい」


 ……え?


「……意思が眠っている。お前と違ってホルダーではないな、ん?どうした」


 ほ、本当?本当なの?


「嘘を言ってどうする?」


 ……。


 お兄ちゃん。


 サイザンお兄ちゃん!!


 も……もう、もう会えないと思っていた。


「忠告だ」


 ?


「サイザンの新しい人生だ。酷いこと言うかもしれんが、一切干渉するな」


 !


「友人、知人として振舞え。ホルダーの記憶は猛毒になる、気をつけるんだな」


 そう言って勇者朱天童子は私の右手を握った。


「あっ、あああっ?」


 魔力が!?


 え?腕が動く?感覚が戻った!?


 治療してくれた!?


「ナノマシンの攻撃だ、傷跡は残る」


「……ぐっ」


「……まだ動くな、勇者の攻撃を受けたのだ、しばらくは安静にしておけ」


 自分の、お顔の怪我は治さないのですか?


「……この怪我は、魔力で治したくないんだ」


 ?


 あれ、雰囲気が?


「ああ、今の僕は和魂が強く出ている。普段の僕は荒魂の塊みたいなヤツだからな」


 ?


 あ、また雰囲気が変った!?


「おれの和魂は遙か昔、大切な人を守れなかった。お前を見ていたら、そいつが前に出てきた。さっき話した奴がそうだ」


 分からん。何を言っているのだ?


 性格が幾つかの層になっている?それとも人格が円グラフみたいな?


 ん?待てよ、ここまでハッキリと分かれてはいないけど、私も似ていないか?亜紀と阿騎と明季。


 ホルダーって何か目的があるのか?


 あ、勇者朱天童子、いまニヤッとわらった?


「いいか、2、3日は安静だぞ」


「た……助けてくれ、て、て、あり……がとう」


「む、無理をするな!今言ったであろう!」


「げほっげほっ」


 あ、吐血した!


 ……念話ではなく、ちゃんとお礼を言いたかったのだけど……。


 本来なら、私は死んでいたのだ、アシュリー王の封印を解いたことで。


 勇者より危険人物と見なされ処理されていたのだ。


 それをシューちゃんが『お仕置き』で止めてくれた、と見るべきだろうな。


 この世界はいったい?


 ミント先輩なら、何か知っているかな?


 聞いてみたい。


「ごら、シュート家・明季姫、シューちゃんとはどこの、誰のことだ?」


 私は勇者朱天童子をチラ見する。


 うう、意識が遠のく、クラクラしてきた。


 シューちゃんは私の朱槍に話し掛けていた。


 え?朱槍とお話しできるの?


 朱槍はドライアドの杖に姿を変えた。


 あ、綺麗な魔石!


 シューちゃんは自身の魔力を結晶化させ、素晴らしく綺麗な魔石を作り出した。


 それをドライアドの杖に填め込むと、私を見た。


「お守りだ、秋津川さん。まさかこの世界で君に会えるとは」


 え?


「君を傷つけたけど、今回は助けることができた……それじゃ」


 ち、ちょっと待って!今!今、何?なんて言ったの?


 意識が混濁する、うう気持ち悪い。


 一瞬にして夜空の星になる勇者朱天童子。


 今、彼、何て言ったの?


 秋津川さん?そう聞こえたけど?


 うう、瞼が重い。


 空から舞い降りてくるペガサスが見えた。


 あれ?ポシェットくん?


(誰だ!あいつ!なぜ知っている!?)


 何を言っているの?


「アッキー!そこにいたの!?ポシェットくん?」


 豪快にペガサスから飛び降りるリュートお母さん。


 おかああさん!駄目だよ!そんな激しい運動っ!


 ん?


 プチ。


 スイッチが切れるように、突然私の意識はここで途絶えた。


 私は深く、静かに夢の世界にダイブした。


 そして、その夢の世界には彼がいた。


「弟よ、会いたかったぞ!」


「お、お兄ちゃん!」


次回投稿は 2023/06/03 22時か23時の予定です。

サブタイトルは 夢で逢えたら です。


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