【第145話】 朱天童子 4
今晩は。
号外です。
……ふふっ、と笑った勇者一寸法師。
お顔は可愛かったけど、内に秘めた力は凄かった。
例えば、目の前でライオンの赤ちゃんが転がる。
大きい猫みたいで可愛いが、私はご飯になる可能性がある。
勇者一寸法師は可愛いが、大陸を沈める力を持っている。
ご飯どころか、世界か危ない。
「俺達は色々と忙しい、お前のことなど、その内忘れるだろうな」
一寸法師はそうでしょうね、あなたは?あなたは私のこと、忘れるの?実は優しい朱天童子さん。
「……殺されたいのか?」
あの勇者一寸法師が先に来ていたら、私は死んでいたわ。
「……」
どうして助けてくれたの?
「助けた覚えはないが?」
……そう。でも、ありがとう。
「さあ、来たぞ」
え?
「お前の声に呼ばれた夫婦だ」
(どこだ阿騎!?)
(方向は合っていると思うけど、上手く魔力が働かないわ)
え?
え?季羅お父さんと違う!?
(アシュリー王の封印が一時、解けたとの噂もある)
(アッキーかしら?)
……リュートお母さん?
(学校からの連絡では、怪我人はいなかった、と聞いたが……ペガ、エルフの像へ)
……ニトお父さん?
ん?
え?え!?夫婦!?夫婦?
決魂したの!?
そんなお話し、聞いていないけど!?
動く眼でチラリと勇者朱天童子を見る。
「……夫婦ではないのか?手を繋いで寝ていたが?違うのか?」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ス、スゥ、ストオオオオオオオオオップウウウウウ!
はい、そこまでぇえええっ!
ひどい!変態!変質!ドスケベ!エッチ!
な、何を!の、のぞいているのよっ!
「我は勇者朱天童子、悪意はない。それに、のぞきは犯罪だぞ?」
いや、だけどね?ああ、もう!
だから、リュートお母さんとニトお父さんお話しはやめてっ!
「それに女の方は……」
ちょっと聞いている?私のお話聞いている!?
「着床しているぞ」
ち、ちゃく、しょう?
「着床だ。女の方は着床して間もない。本人は気が付いていないようだが?ペガサスには乗らぬ方がいいと思うが」
着床?
なんだっけ?
!
妊娠!?
赤ちゃん!?
「……ほう」
あ、また変な魔力使っている!
今度はなに?リュートお母さんに酷いことしないで!
「この波動は、知っている」
な、何を覗いたの!もう!
「サイザンだ、子はサイザンの生まれ変わりだぞ」
……え?
「勇者の判定だ、間違いない。魔力は以前ほど無いな、魔王因子も定数以下だ。今回は討伐対象にはなるまい」
……え?
「……意思が眠っている。お前と違ってホルダーではないな、ん?どうした」
ほ、本当?本当なの?
「嘘を言ってどうする?」
……。
お兄ちゃん。
サイザンお兄ちゃん!!
も……もう、もう会えないと思っていた。
「忠告だ」
?
「サイザンの新しい人生だ。酷いこと言うかもしれんが、一切干渉するな」
!
「友人、知人として振舞え。ホルダーの記憶は猛毒になる、気をつけるんだな」
そう言って勇者朱天童子は私の右手を握った。
「あっ、あああっ?」
魔力が!?
え?腕が動く?感覚が戻った!?
治療してくれた!?
「ナノマシンの攻撃だ、傷跡は残る」
「……ぐっ」
「……まだ動くな、勇者の攻撃を受けたのだ、しばらくは安静にしておけ」
自分の、お顔の怪我は治さないのですか?
「……この怪我は、魔力で治したくないんだ」
?
あれ、雰囲気が?
「ああ、今の僕は和魂が強く出ている。普段の僕は荒魂の塊みたいなヤツだからな」
?
あ、また雰囲気が変った!?
「おれの和魂は遙か昔、大切な人を守れなかった。お前を見ていたら、そいつが前に出てきた。さっき話した奴がそうだ」
分からん。何を言っているのだ?
性格が幾つかの層になっている?それとも人格が円グラフみたいな?
ん?待てよ、ここまでハッキリと分かれてはいないけど、私も似ていないか?亜紀と阿騎と明季。
ホルダーって何か目的があるのか?
あ、勇者朱天童子、いまニヤッとわらった?
「いいか、2、3日は安静だぞ」
「た……助けてくれ、て、て、あり……がとう」
「む、無理をするな!今言ったであろう!」
「げほっげほっ」
あ、吐血した!
……念話ではなく、ちゃんとお礼を言いたかったのだけど……。
本来なら、私は死んでいたのだ、アシュリー王の封印を解いたことで。
勇者より危険人物と見なされ処理されていたのだ。
それをシューちゃんが『お仕置き』で止めてくれた、と見るべきだろうな。
この世界はいったい?
ミント先輩なら、何か知っているかな?
聞いてみたい。
「ごら、シュート家・明季姫、シューちゃんとはどこの、誰のことだ?」
私は勇者朱天童子をチラ見する。
うう、意識が遠のく、クラクラしてきた。
シューちゃんは私の朱槍に話し掛けていた。
え?朱槍とお話しできるの?
朱槍はドライアドの杖に姿を変えた。
あ、綺麗な魔石!
シューちゃんは自身の魔力を結晶化させ、素晴らしく綺麗な魔石を作り出した。
それをドライアドの杖に填め込むと、私を見た。
「お守りだ、秋津川さん。まさかこの世界で君に会えるとは」
え?
「君を傷つけたけど、今回は助けることができた……それじゃ」
ち、ちょっと待って!今!今、何?なんて言ったの?
意識が混濁する、うう気持ち悪い。
一瞬にして夜空の星になる勇者朱天童子。
今、彼、何て言ったの?
秋津川さん?そう聞こえたけど?
うう、瞼が重い。
空から舞い降りてくるペガサスが見えた。
あれ?ポシェットくん?
(誰だ!あいつ!なぜ知っている!?)
何を言っているの?
「アッキー!そこにいたの!?ポシェットくん?」
豪快にペガサスから飛び降りるリュートお母さん。
おかああさん!駄目だよ!そんな激しい運動っ!
ん?
プチ。
スイッチが切れるように、突然私の意識はここで途絶えた。
私は深く、静かに夢の世界にダイブした。
そして、その夢の世界には彼がいた。
「弟よ、会いたかったぞ!」
「お、お兄ちゃん!」
次回投稿は 2023/06/03 22時か23時の予定です。
サブタイトルは 夢で逢えたら です。




