【第144話】 朱天童子 3
諸事情により、予告時間より早い投稿になりました。
喉が渇いた。
水が欲しい。
目を開けると、知らない天井が……ない?
星?
空だ。
夜空。
獣人族の本能か、目を動かし月を探す。
まだ、出ていないのかなぁ。
ああ、水が欲しい。
身体全体が痛い、動けない。
「ううっ」
声も出ないのか?
どうした獣人族!
時期満月だぞ!怪力と無敵の回復力はどうした!
このまま、死んじゃうのかなぁ。
アイお姉ちゃん……なぜかアイお姉ちゃんを思い出した。
アイお姉ちゃん、私が死んでもカチコミは駄目だよ。
空中都市に駆け上がり(どんなところか知らないけど)、破壊の限りを尽くすアイお姉ちゃん。
ああ、駄目だよ、相手は強すぎる。
勝負にもならないよ。
だが脳内の、見たこともない空中都市は地上へ落ちていった。
……虚しい。
すると視界に突然、鬼のお顔が入ってくる。
おわっ!
私は驚き、瞬き一つ。
寝起きに見るモノではないな。
「……悪かったな、怖い顔で」
……。
「どうした?」
ぐすっ……いまから弄ばれて、殺されるのだろうか……。
「おい、俺は一応勇者だ、女性に酷いことしないぞ?」
……うそつけ、私の腕とったくせに。身体に消えない傷、つけたクセに!
「あれは戦いだ、戦いに男も女もない」
……都合のいい言葉だ。うう、この傷、エノンに何て言えばいいのよ!
「どうした?」
ポシェットくんは?
「横にいるぞ」
あ、いた。
「……僕は、邪魔でしかなかったのか?あれほど明季姫が逃げるようにって言ったのに……結局、また何もできなかった」
「おい、そう落ち込むなよ、お前、腕、治療しただろう?」
……おい!こら、知ってる?私をここでで怪我させたのはあなた、だよ?
腕……改めて動かしてみる。
動かない。
でもあるみたい。
うう……ニトお父さん、痛いよう。
喉、渇いたよう、ランお母さん……。
……涙いっぱい出てきた、際限も無く。
「水が欲しいのか?」
……ふん。
「水が欲しいの?じゃ、僕が!」
「おい、魔法は駄目だぜ?お前の魔力は、明季姫と相性が悪い。腕は繋がったが、完全に回復はしていないだろう?」
さらに落ち込むポシェットくん。
このアッホ!言葉変えなさいよ!
ポシェットくんなりに、一生懸命治療してくれたのよ!
で?この悪人は何をしているのだ?
「俺様に対して悪人だと!?」
私にとって、あなたは悪人以外、何物でもないわよ!
……。
「なんだ?言いたいことがあるのか?」
……お顔、どうしたの?
私は、どうしても気になっていることを聞いてみた。
答えてくれるかな?
「あ?この顔か?」
そう、勇者朱天童子の左顔半分、目が塞がるほど腫れ上がっているのだ。
頬骨、折れているよね、これは。
「お前の蹴りだ」
え?
「おい、今、あからさまに嬉しい波動を感じたが?」
気のせいでしょ?
……でもおかしい、勇者だったら私達、獣人族以上の回復力があるはず。
なんで、回復しない?
「お?お前が呼んだのか?」
え?なに?
何も感じないけど?呼ぶ?とは?
「あの夫婦だ、お前の声に反応したぞ」
?何言っているの?
夫婦?
季羅お父さん!?
ん?強い光!?
これは分かる。
勇者だ!
もう一人来るの!?
「……ちっ」
え?朱天童子、今、舌打ちした!?
「やはり来たか、一寸法師。真面目なヤツだな……」
「な、何か来るよ!」
だよね、ポシェットくん。
その小さな光の粒は遠方に見えたが、瞬き一つで、目の前に現れた。
「処分は終わった?朱天童子?」
「確認か?法師?」
「うん、アシュリーは僕たちでも手に余る存在だよ?しっかりと封印しておかないと!開封者は?」
「ああ、お仕置きしだぜ」
「え?処分していないの?」
処分!?……恐ろしいこと言うなぁ。
「処分はしない、お仕置きで充分だ」
「そう……きみの判断?」
「俺様の判断だ、他に誰がいる?」
無表情な目で私を見る勇者一寸法師。
その大きさは正に一寸、おおよそ3㎝?
だが、その存在感は朱天童子と変らない、見た目で判断してはいけないのだ。
ポシェットくんはその魔力に当てられて、気を失っているし、私だって失神ギリギリだ。
あ、胸の傷を見ている!?
「封印したの?」
え?封印?
「いや、封印は止めた」
「どうして?またアシュリーを開封したら大変だよ?処分しないなら、ちゃんと能力を封印しないと。それにその顔の怪我、どうして回復しないのさ?」
「余興だ」
封印?毒による攻撃?相手の能力を無効化、封印する攻撃か?もしかして?それってナノマシンによる攻撃?
「!」
「!」
あ、マズい?
勇者二人が瞬時に私を見た。
「君、それを知っているの?どこで得た知識?」
あ、雰囲気変った?
「法師、こいつはホルダーだ。我々の知らない、誰かの計画の試作品かもしれん。無闇に処分はよくない」
「でもこの世界は、僕たちや魔王に任されているよ?」
「いや、それでも星々の世界からの介入はある。ナノマシンやアシュリー程度で、過剰に反応するのはやめろ」
「……きみらしいね。小角さんには、ありのまま報告するけど、いい?」
「かまわん、報告は正確に、当然だ」
「じゃ、僕はこれで帰るよ。余興はほどほどにね」
「うるせー」
「ふふっ」
来た時と同じように、勇者一寸法師は消えていった。
次回投稿は 2023/06/03 22時の予定です。
サブタイトルは今のところ未定です。




