【第143話】 朱天童子 2
今晩は。
投稿です。
「……いや?」
「いやですよ、勝てないし。弱い者いじめは駄目でしょう?仮にも勇者なんだし!お相手する意味は?」
「アシュリーは反逆者だ、封印を解かれては困る」
「解けるような封印、しないで下さい!」
「今後のことを考えると、消えてもらいたいのだが」
「抵抗しない者を消すのですか?さて勇者とは、何者?」
「……ふむ」
あ、何かよからぬこと、考えている!
だいたい、魔力500万以上なんて、瞬殺よ?
まあ、魔王以外にその力、使うかどうか、分からないけど。
それに何?この大きさ。
3m?
質量的にもアウトでしょう!
あ!?
するすると小さくなる朱天童子。
180㎝程か?2mはないな。
勇者朱天童子はニヤリと笑う。
小さくなっても圧倒的存在でしょ?
大きさ関係ないくせに!
ポシェットくん、ゆっくりと、この場から離れて!
(いやだ!明季姫をおいて、逃げることはできない!)
困ったな。
生き残ること考えないと、駄目なのに。
あいつのお目当ては私、ならポシェットくんは逃げないと。
名前こそ勇者だけど、内容は魔王と変らないのよ?同じなの、知っている?
気づいているの?
対魔王勇者ゴーレム、あるにはあるけど、召喚システムの根幹、ネクロマンサーが今使えないし、
どうしたものか。
「魔王サイザンに、トドメを刺したのは地牛のメイドンだ」
「!」
「お、反応したな?」
「……何が言いたい」
あ、駄目だ、私、切れそう。
その名前、私にとってスイッチの一つだ。
「その魔王を追い詰めたのは、俺だ」
「……」
「そして、メイドンを破壊したのも俺だ」
「……」
「修復終わって、今度は魔王に挑み、壊されたみたいだが?あのポンコツ、無事か?」
「……挑発しているの?挑ませて、消す理由ができたと?」
「どう思う?」
「勇者と魔王の最低重速術は50だ。最も速いとされる勇者八咫烏は200を軽く越えると聞いた」
「え!?そ、そんなに速いの!?」
ポシェットくん、もういいから離れて!
「……ほう、詳しいな、どこで仕入れた知識だ?」
「カメさん」
「なんだそりゃ?」
500年、夢の中で修行したんだ。
全て思い出していないけど、少しずつ思い出している。
ゴブリンでは使えなかった技も、獣人族では使える。
……おごるなよ勇者、一撃、入れてやる!
ふっ、と勇者朱天童子が消える。
私の周囲に斬撃の音が響く。
「どうした、勇者?当たんねーよ?」
「……すごいな、避けるとは思っていたが、受け流し、弾くとは」
だが、私はもう血だらけだ。
……ゴルちゃんとシルバーっちは、沈黙している。
これは私の戦いってことか?力添えはできないと?
相当重要な戦いみたいだな。
手抜きでも、攻撃が重くて速い。
どうする?
固まるポシェットくん。
「い、今、何があったの!?」
今のうちに早く!
これでも、こいつは本気じゃない。
絶対に戦って勝てる相手じゃないんだ。
ブラックホールに挑む、檜の棒なんだ。
メイドンは惑星破壊兵器を例えに使った。
それくらいヤバい相手なんだ。
だけど、こいつだけはゆるせん。
サイザンお兄ちゃんを、魔王にしたのは、私だ。
少なくとも私は、引き金、トリガーの一つだった。
そしてメイドン。
彼女が、どれだけ悲しかったか!
魔王が倒されるのは仕方ない、けどこいつは死者を利用した。
私を挑発?勇者が聞いて呆れる!
メイドンを笑った。こんな者が勇者か?笑わせる!名義変更しなっ!
……ここで死んでも構わん、こいつだけはゆるさん。
前言撤回。
挑んでやるよ!
「シュート家・明季、まいる」
ギリギリの魔力で全力攻撃した。
満月期だったら、届いたかも知れない。
全ての攻撃は、届く途中で無効化された。
周囲を何かが覆っている!
そして勇者の一撃!
反逆の朱槍は発動する前に封じられた。
勇者朱天童子は私ではなく、ポシェットくんを狙ったのだ!
私は、ポシェットくんと、勇者朱天童子の間に立つことしかできなかった。
右腕は折れ、左腕は朱槍ごとちぎれ飛んだ。
そして私の胸に食い込む勇者の指、3本。
親指と小指以外、全てが深々と突き刺さった。
あ、この傷跡は残るかも。
胸に七つじゃなくて3つか、オリオンの三つ星?
「……ひ、卑怯者め、こ、ここまでしなくても……勝てただろう?」
「あ、明季……姫……」
「おい、少年、お前がいたからこいつは全力が出せなかった、お前は邪魔なんだよ、相手は勇者だぞ?なぜ、明季姫の言うことを聞かなかった?愚か者め!」
引き抜かれる指、流れ出る赤黒い血。
あ、傷が深いな。
それでも私は倒れなかった。上から見下ろす勇者朱天童子。
「お前も甘い、あのまま朱槍が発動したら俺に攻撃が届いたぞ?こいつは見捨てるべきだったな」
「あ……あんたなら、み、見捨てるのか?ゲホッゲフッ」
「俺は強い、だから仲間は見捨てない、そして俺の仲間は俺より強い」
「私は弱い、でも仲間は見捨てないよ」
なぜなら、亜紀は、誰も助けてくれなかったからだ。
見て見ぬふりだぞ。
亜紀の孤独、あいつは今でも孤独だ!
そして捨てられた苦しみや、悲しみを知っている!
ああ、手を差し伸べた男の人がいたな、だけど彼の手は届かなかった。
そして、彼も……くそっ!
……目の前で友達を見捨てることなんて!できないっ!
一瞬、勇者朱天童子が驚いたように怯んだ。
「亜紀だと?」
一歩踏み出す、勇者朱天童子。
間合いに入った!
無意識の一撃は避けられない。
攻撃する私でも意識していないのだ。
それに今、こいつは無防備だ、至近距離なら攻撃も届くだろう。
思いっきり踏み抜かれる足の甲。
「!」
腕はもう動かない、踏んだ足を軸にして、回し蹴りで蹴り上げる!
ははっ2撃入れたぞ、思い知れ!わたしの大好きなサイザンお兄ちゃんの思い、ダチのメイドンの思い!
勢いのまま倒れ込む私。
勇者朱天童子はどうなった!?
ポシェットくん!逃げろ!全力で!生き延びてこそ次に繋がる!
跳ね起きで起き上がり、周囲を警戒する……はずだった。
あ、真っ暗だ、ここまでかな、もう身体が動かないや……。
うう、腕が痛いよう。
涙も出ない程痛い。
近づいてくる足音。
おおきいな、勇者朱天童子だ。
ここまでか。
せめて満月期なら、もう少し頑張れたかな?
ん?なに?何を言っているの?
「君は……君は秋津川さんなのか?だから小角は僕に行けと?」
上手く聞こえない、何を言っているのだ?
次回投稿は 2023/06/02 22時の予定です。
サブタイトルは 朱天童子3 です。
1章43話までイラストが、今から入ります。
30分程お待ちを。




