【第139話】 アシュリー王 3
今日は、号外です。
日曜日の15時です。
お茶の時間です。
ポシェットくんの問に、カラン先生は何と答える?
「ここは王宮、我々は玉座を目指しますよ」
え?それだけ?玉座を目指す?
このトラブルの中で?
数人、気分悪くて倒れていますけど?
いや、毎年恒例ならば、先生には分かっていたはず。
この状況になるのが。
クラスをまとめなくて、いいの?
「ゴブ、どうする?進むゴブ?」
そうね、ゴンズイくん、どうしようか?
「ここまで来たゴブ!アシュリー王に会いたいゴブ!」
お、ドングリくん、言ったね!
「え?怖いゴブ……」再び私の袖を握るクルミちゃん。
そしてそのクルミちゃんの手を握る、うめちゃん。
「ゴブゴブ、俺はいいぞ、リーダーに付き合うゴブ!」
そうは言ってもゴンズイくん、足、震えているよ?
いけるか?
私は右手を天に翳した。
「なにゴブ?」
思わず上を見るドングリくん。
ハピ子の一族が見せたんだよね、物寄せ、アポーツ。
ブーステッド・フェアリー、ゴブリンの目で見たからね、魔力の流れは分かったし、さっそくマネをしてみる。
私の魔力が震え出す、すると意識し、イメージした朱槍も振動し始める。
魔力の共振だ。
そしてこの波が高まり、重なった瞬間!
ふんっ!
呼び寄せるっ!
「アクセス!我が手に来たれ、希望の朱槍よ!勇士の旗よ!」
ドオオンと虚空より現れる朱槍。
そしてぶわっ、と広がって落ちてくる『護武鈴好』の旗!
私は、落ちてきた旗を朱槍に素早く括り付け、掲げてみせた。
目をパチパチして、この光景を見るクルミちゃん、うめちゃん。
まあ、ビックリするよね、何もないところから降って湧くんだから。
「ゴブウウウゥ!」
明らかにキラキラした目で、見つめるドングリくんとゴンズイくん。
「か、かっけーゴブゥ!」
テンション、士気上がった?
やっぱ男子の反応、面白いっ!サイザンお兄ちゃんみたい!
手にした朱槍からは、ドライアドの浄化の魔力が溢れ出る。
朱槍、勝手に魔力を放出している!
ここの場所に反応している?不思議な場所だな、ここは。
バチン、バチン、とラップ音が響き出す。
朱槍の魔力と結界の魔力がぶつかっているようだ。
ヤバい場所だな、だけどまだ対応できる。
呆然として、私達チーム『護武鈴好』の旗を見つめるクラスメート。
ふん、知っているんだから、旗作っているとき、冷めた目で見ていたでしょう?そこのパーティーなんて、お裁縫パーティー?とか言ってゲラゲラ笑っていたでしょう?
パーティーの象徴は大事なんだから!
まあ、これが奪われたり、燃えちゃったりするととんでもない逆効果だけど。
ただし、今は朱槍と旗を見て、士気が上がる護武鈴好。
「あと少しだけ進んでみようか?」
「ゴブ!」
「ゴブ、で、でも、みんなはどうするゴブ?お友達、心配ゴブ」
く、くるみちゃん、優しいっ!
あいつら私達のこと友達とか、これっぽっちも思っていなって!
クラスの先頭で、立ち止まる護武鈴好。
さて、カラン先生を無視した形だけど、センセーどうでます?
あれ?カラン先生は私達を止めない?
注意勧告もしない。
これは出しゃばった私の言ったとおり、各自の判断に任せるということか?
それでいいのか?
クラス担任としての責任は?
各パーティーのレベルはバラバラだけど、進むのであれば指示しないと。
グロスやハピ子のパーティーは強者揃いだし、ダンちゃんのパーティーはダンちゃんだけが強い。
まあ、魔力的に見てだけど。
私達のパーティーは、バトルより回避・攪乱特化になりそうだな。
他のパーティー、魔力は高そうだけど、細い。そんな感じだ。
ここから先は、魔力の細いパーティーは引き返した方がいい。
エルフや、人族のパーティーが下した判断は間違っていない。
だけど、ここで休息、待機はまずいな、どんな悪影響が出るか分からない。
実際、数人倒れているし。
お、カラン先生に動きがあるぞ、なんと指示する?
「アシュリー王謁見の判断は、各パーティーに任せる!」
え?それだけ?他指示なし?私と同じこと言って、どうします?
さすがに一言、言うか?
倒れている人達、明らかに結界の影響受けているし。
そのまま放置するの?何もしないの?
「うめちゃん、倒れている人達に、たまご・ボーロ、分けてあげて」
「ゴブゥ、いいの?私達やアッキーを、散々笑ったエルフ族や人族よ?」
うめちゃんは不服そうである。
「今回だけよ」
「ゴブゴブ、アッキーほんとう?でも……私から渡しても、食べるくれるゴブ?」
野良ゴブリンとか言われていたしなぁ。
「その時は我がもらう!」
あ、ハピ子、目聡い。
さて、もう一言。
「カラン先生、指示はしないのですか?重症化しますよ?」
「各自の判断に任せる」
ぷち。
「カラン、お前の意味は?」
こいつは先生ではない。
少なくとも私の知っている先生という概念から外れている。
「素人集団相手に何をしているのだ?年長者の知恵、知識は?指導する気がないなら先生やめな!混乱の元でしかない!」
「それだ」
「え?」どれだ?
なんだ?
「依存しない、自分での判断だ」
「は?」
そう言って老ケンタウロスはニヤリと笑った。
「今回はシュート家・明季がクラスの長だな」
「へ?」
クラスの……長?
が、が、学級委員長!?
「次席はグラウディー・ポシェット、いいな?」
あ、ポシェットくん、固まっている。
え?病弱だけどいいの?
まあ、重速術の使い手だけど。
「他の者達、異存は許さん。この者達、クラスのことを思い、良い質問と判断をした。特に明季くん、一時的とは言え、アシュリー王の結界を防いだ。近年まれに見る魔法使いだ。以後、1年5組全員は長の判断を尊重するように」
「お断りします!」
やなこったい。
めんどい!
勝手に決めてもらっても困ります!
早速グロスが物言いだ。
「横暴だぜ、カラン!鼻血と軟弱の下に付けと?」
ばちこーんとぶん殴られるグロス。
あ、また飛んだ。
「カランせんせい、いいな?せんせい、だ。年長者は敬え」
え?私もカランって言っちゃったけど?
私は、ばちこーんしなくていいの?
(わはははっキン子、それはしないぞ)
なにダンちゃん?
(お前をぶん殴ろうとしたら、ヒットする前に相手は倒れている、カラン先生は相手をちゃんと見ているのさ。だいたい、オークの俺様を蹴り倒し、壁をぶち抜くパワーの持ち主だぞ?そんな物騒な獣人族、まともに相手しないって。挑むのは愚かなグロスだけだろう)
人を怪物みたいに……あ、今、私、獣人族だった。
ん?……念話ができている!?
ああ、この朱槍、ドライアドの杖の影響か。
クラスに変化が起き始めた。
座り込んでいた者が、立ち上がり始めたのだ。
あ、たまご・ボーロ食べている。
遠目に弱ったエルフの唇が、ありがとう、と動くのが見えた。
……うめちゃん、ちょっと嬉しそう?
(アッキー、これ弱っているエルフ族や人族に全部あげちゃっていい?)
いいよ、私もまだ持っているし、クルミちゃんも持っているから。
ゴブリンの信頼、少し上がったかな?
「さて、長も決まったし、説明をしようか、皆、集まれ」
え?カラン先生?雰囲気変った!
「さあ、速く!ここはいい場所ではないのだ!」
次回投稿は 2023/05/28 本日22時辺りの予定です。
サブタイトルは 謁見 です。




