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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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338/406

【第138話】 アシュリー王 2     

今晩は。

投稿です。

 王宮はボロボロだった。


 整備、清掃、もう数百年単位で放置されたようで、これはもう廃墟。

 雑草、樹木、伸び放題、あ、今トビトカゲが横切ったぞ!


 王都の中心、それも一番背の高い建物が廃墟?


 なぜ?


 ここ、王さまのいる場所だよね?


 王さまいない?


 警備も少ない。

 カラン先生の話によると、騎士6名である。


 たった6名?門に二人いたから、あと4名?


 更にお城だけあって、無駄に広い。


 部屋数も多く、これはもうダンジョンである。


 高い天井、崩れ去った扉。

 ここ、本当に王都?王宮?


 この異様な光景に、みな口数が少なくなる。

 もしかして、皆も知らなかったの?王宮のこの惨状。


 奥に進む。


 ここ、おかしい。


 ひび割れ、砕けた廊下、落ちた天井。

 音がしない、静かすぎる。


 街の喧騒も聞こえないのだ。

 建物が高くなると、ある程度騒がしい音が聞こえてくるモノだが、何故聞こえない?


 聞こえるのは反響し、響く足音だけ。


 どのくらい歩いただろうか、雰囲気が変ってきた。


 草や樹木がなくなり、辺りが薄暗く感じられ始めた。

 陽の光は変らないはず、それなのに薄暗い?


 ヤバくないか?


 涼しさが増し、今では寒いくらいだ。


 まあ私は獣人族だから寒さには強いんだけど、この寒さ、異常だ。


 魔力感知は入城した時からエラーだし。


 ……周りは?


 みんな不安そうだな。


 ハピ子、ヤバかったら私、暴れるからね。


 通じない?……念話もエラー!?


 誰かが私の袖を握ってきた。


 ん?誰だ?


 振り向くと……クルミちゃん?


「ア、アッキー……握っちゃだめ?」


「いいよ」


 そう言って私は、クルミちゃんの手を握った。


「こっちが安心するでしょう?」


 こくこく。


「あ、ありとう、アッキー」


 ……反対側の左袖はうめちゃんが握った。


「……私も」


「いいよ」


 お?


ドングリくんは私の右前、ゴンズイくんは私の右後ろに移動して歩き出した。


 見えない私の右側、死角をガードしている!

 これは、ナイトの立ち位置だね。


 前方で停滞が生じる。


「誰か、倒れたみたい」


 視野が狭く感じる。


 これ、アタック?

 ……結界か?


 サイコアタック?マズいな。


 お城なんて、遠足程度に考えていたけど、大間違いだった。


 ああ、前世の記憶邪魔だな、そう、ここは小学校でも中学校でもない。

 まして義務教育なんて無いところなのだ!


「気分が悪くなった者は休憩しておけ」


 カラン先生?


 ここに置いていくの?


 もはや、私はカラン先生すら信用しなくなった。


 ダンジョンで死者が出るんだ、先生だからといって簡単に信用してはいけない。

 自分で確かめないと、自分の命だ。

 

 まず、そのためには、日頃から自身を鍛え上げとかないといけないな。

 私はどうだろう?


 ここは多分、特殊な結界がある。


 気分が落ち込んだり、薄暗く感じたり、寒さを感じるのは、第三者を寄せつけない、否定的な結界が張り巡らされているからだろう。


 カラン先生、目的は何?


「クルミちゃん、うめちゃん、ちょっといいかな?祓うから」


「え?はらう?」


 私は右手と左手に魔力を集め始めた。


 上昇期の獣人族はひと味違うからね。


 左右の手のひらが、ボンヤリと光り出す。


 徐に、両手を合わせる。


 ポーン、と手が鳴る。


 その瞬間、辺りが地震のように揺れた。

 いや、揺れるように感じた。

 

 私の魔力が弾け飛び、周囲の闇を一気に追い払う!


 私以外は全員、その揺れに耐えきれず、座り込んでしまう。


「な、なんだ今のは!?」

「お、おい、辺りが!?」


 辺りは昼間の明るさを取り戻し、狭まった視野も広くなった。


「ほう、見事ですね」


 カラン先生?

 感心しないで結界のこと、知っていたでしょう?できれば説明を!


 まあ分かったことは、ここはかなり危ない、危険な場所ってこと。


 掃除や建物の修理をしないのではなく、できない場所なのだ。


 近づけないのだ。


 誰だ?こんな、とんでもない結界を張ったヤツ!


 こんな所に説明もなく新入生を連れてくるとは、何を考えている?


 私はお腹に力を込めて皆に警告した。

 そうしないと、気力が萎えるのだ。


 それほどここは、元気を吸い取られる場所、アンチ・パワー・スポットなのだ!


「今のは魔力を破裂させた波動だ!実際は揺れてもいないし、揺れたように感じただけだ!この結界は、お城全体を包んでいる!だから、また黒い波動に包まれる!今後どうするか、各班で決めろ!」


 ポカーンとするクラスメイト。


 おい、速く反応しろ!じっとしていると、また変な闇みたいな波動に包まれるぞ!


 最初に反応したのはケンタウロス・グロスだ。


「ああん?なに勝手に仕切っているんだよ!鼻血!進むに決まっているだろうっ!」


「お?元気いいな?いつまで続くか見せてもらおうか?次は助けないよ?」


「ぐっ!」


 まあ、助けると思うけど。


「僕たちはここまでだ」


 そう言ったのはエルフのチームと、人族がメインのチームだ。


 そんな中で、ポシェットくんがカラン先生に質問をする。


「ここは本当に王宮なのですか?こんな所にアシュリー王がいるとは思えません、これは何かの試験ですか?それとも?」


 罠とでも言いたいのかな?


 ポシェットくん、体調悪そうだな、顔色が悪い。

 それに、目の下にクマができている。


 声を掛けようにも、ポシェットくんのパーティーメンバーが、威嚇するように間に立つ。


 いや、威嚇だね、これは。


 そして俯き、その後ろで蹲るポシェットくん。


 隠れた?明らかに私を避けている……うう、なんで?気持ちが沈んでしまう。


 駄目だ、今は護武鈴好の事だけを考えよう。


「カラン、これは南のダンジョンに挑む前の、力量試しか?そうであろう?」


 そう言ったのはハピ子。


 私もそう思う。


「見事だな、キン子。一時的とは言え、この結界の呪力を遠ざけるとは」


「お礼は、帰ってからでいいよ?」


「はん!頼んでもおらなんだが?キン子が勝手にしたこと、我は知らぬ!」


 おお、ハピ子らしい。


 ダンちゃんは……元気よさそう。


 パーティーメンバーは青いお顔だけど。


 カラン先生は……沈黙である。


 取敢えず、この先生は警戒対象にしておこう。


 次回投稿は 2023/05/28 22時あたりの予定です。

 サブタイトルは アシュリー王 3 です。


 ある日のお話し


 MAYAKO

 元帥さん(のモデル)


「連載1年、どぎゃんや?」


「え?どう、と言われましても?」


「感想ば、聞きたかね」


「駆け足の一年でした。毎日、このお話のことを考えて、暮らしています」


「そぎゃんね」


「はい」


「毎日投稿は大変じゃろ?たまには休みなっせ、身体が資本ばい?無理はいかんとよ」


 え?いつになく、優しいお言葉?


「ん?」


「……」


「それは、イラストが追いつかないから休め、じゃないですよね?」


「そ、そげんこつじゃなか!し、心配しとるったい!」


 ほんとうかしら?


 一年間、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 お話しはまだまだ続きます。


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