【第138話】 アシュリー王 2
今晩は。
投稿です。
王宮はボロボロだった。
整備、清掃、もう数百年単位で放置されたようで、これはもう廃墟。
雑草、樹木、伸び放題、あ、今トビトカゲが横切ったぞ!
王都の中心、それも一番背の高い建物が廃墟?
なぜ?
ここ、王さまのいる場所だよね?
王さまいない?
警備も少ない。
カラン先生の話によると、騎士6名である。
たった6名?門に二人いたから、あと4名?
更にお城だけあって、無駄に広い。
部屋数も多く、これはもうダンジョンである。
高い天井、崩れ去った扉。
ここ、本当に王都?王宮?
この異様な光景に、みな口数が少なくなる。
もしかして、皆も知らなかったの?王宮のこの惨状。
奥に進む。
ここ、おかしい。
ひび割れ、砕けた廊下、落ちた天井。
音がしない、静かすぎる。
街の喧騒も聞こえないのだ。
建物が高くなると、ある程度騒がしい音が聞こえてくるモノだが、何故聞こえない?
聞こえるのは反響し、響く足音だけ。
どのくらい歩いただろうか、雰囲気が変ってきた。
草や樹木がなくなり、辺りが薄暗く感じられ始めた。
陽の光は変らないはず、それなのに薄暗い?
ヤバくないか?
涼しさが増し、今では寒いくらいだ。
まあ私は獣人族だから寒さには強いんだけど、この寒さ、異常だ。
魔力感知は入城した時からエラーだし。
……周りは?
みんな不安そうだな。
ハピ子、ヤバかったら私、暴れるからね。
通じない?……念話もエラー!?
誰かが私の袖を握ってきた。
ん?誰だ?
振り向くと……クルミちゃん?
「ア、アッキー……握っちゃだめ?」
「いいよ」
そう言って私は、クルミちゃんの手を握った。
「こっちが安心するでしょう?」
こくこく。
「あ、ありとう、アッキー」
……反対側の左袖はうめちゃんが握った。
「……私も」
「いいよ」
お?
ドングリくんは私の右前、ゴンズイくんは私の右後ろに移動して歩き出した。
見えない私の右側、死角をガードしている!
これは、ナイトの立ち位置だね。
前方で停滞が生じる。
「誰か、倒れたみたい」
視野が狭く感じる。
これ、アタック?
……結界か?
サイコアタック?マズいな。
お城なんて、遠足程度に考えていたけど、大間違いだった。
ああ、前世の記憶邪魔だな、そう、ここは小学校でも中学校でもない。
まして義務教育なんて無いところなのだ!
「気分が悪くなった者は休憩しておけ」
カラン先生?
ここに置いていくの?
もはや、私はカラン先生すら信用しなくなった。
ダンジョンで死者が出るんだ、先生だからといって簡単に信用してはいけない。
自分で確かめないと、自分の命だ。
まず、そのためには、日頃から自身を鍛え上げとかないといけないな。
私はどうだろう?
ここは多分、特殊な結界がある。
気分が落ち込んだり、薄暗く感じたり、寒さを感じるのは、第三者を寄せつけない、否定的な結界が張り巡らされているからだろう。
カラン先生、目的は何?
「クルミちゃん、うめちゃん、ちょっといいかな?祓うから」
「え?はらう?」
私は右手と左手に魔力を集め始めた。
上昇期の獣人族はひと味違うからね。
左右の手のひらが、ボンヤリと光り出す。
徐に、両手を合わせる。
ポーン、と手が鳴る。
その瞬間、辺りが地震のように揺れた。
いや、揺れるように感じた。
私の魔力が弾け飛び、周囲の闇を一気に追い払う!
私以外は全員、その揺れに耐えきれず、座り込んでしまう。
「な、なんだ今のは!?」
「お、おい、辺りが!?」
辺りは昼間の明るさを取り戻し、狭まった視野も広くなった。
「ほう、見事ですね」
カラン先生?
感心しないで結界のこと、知っていたでしょう?できれば説明を!
まあ分かったことは、ここはかなり危ない、危険な場所ってこと。
掃除や建物の修理をしないのではなく、できない場所なのだ。
近づけないのだ。
誰だ?こんな、とんでもない結界を張ったヤツ!
こんな所に説明もなく新入生を連れてくるとは、何を考えている?
私はお腹に力を込めて皆に警告した。
そうしないと、気力が萎えるのだ。
それほどここは、元気を吸い取られる場所、アンチ・パワー・スポットなのだ!
「今のは魔力を破裂させた波動だ!実際は揺れてもいないし、揺れたように感じただけだ!この結界は、お城全体を包んでいる!だから、また黒い波動に包まれる!今後どうするか、各班で決めろ!」
ポカーンとするクラスメイト。
おい、速く反応しろ!じっとしていると、また変な闇みたいな波動に包まれるぞ!
最初に反応したのはケンタウロス・グロスだ。
「ああん?なに勝手に仕切っているんだよ!鼻血!進むに決まっているだろうっ!」
「お?元気いいな?いつまで続くか見せてもらおうか?次は助けないよ?」
「ぐっ!」
まあ、助けると思うけど。
「僕たちはここまでだ」
そう言ったのはエルフのチームと、人族がメインのチームだ。
そんな中で、ポシェットくんがカラン先生に質問をする。
「ここは本当に王宮なのですか?こんな所にアシュリー王がいるとは思えません、これは何かの試験ですか?それとも?」
罠とでも言いたいのかな?
ポシェットくん、体調悪そうだな、顔色が悪い。
それに、目の下にクマができている。
声を掛けようにも、ポシェットくんのパーティーメンバーが、威嚇するように間に立つ。
いや、威嚇だね、これは。
そして俯き、その後ろで蹲るポシェットくん。
隠れた?明らかに私を避けている……うう、なんで?気持ちが沈んでしまう。
駄目だ、今は護武鈴好の事だけを考えよう。
「カラン、これは南のダンジョンに挑む前の、力量試しか?そうであろう?」
そう言ったのはハピ子。
私もそう思う。
「見事だな、キン子。一時的とは言え、この結界の呪力を遠ざけるとは」
「お礼は、帰ってからでいいよ?」
「はん!頼んでもおらなんだが?キン子が勝手にしたこと、我は知らぬ!」
おお、ハピ子らしい。
ダンちゃんは……元気よさそう。
パーティーメンバーは青いお顔だけど。
カラン先生は……沈黙である。
取敢えず、この先生は警戒対象にしておこう。
次回投稿は 2023/05/28 22時あたりの予定です。
サブタイトルは アシュリー王 3 です。
ある日のお話し
MAYAKO
元帥さん(のモデル)
「連載1年、どぎゃんや?」
「え?どう、と言われましても?」
「感想ば、聞きたかね」
「駆け足の一年でした。毎日、このお話のことを考えて、暮らしています」
「そぎゃんね」
「はい」
「毎日投稿は大変じゃろ?たまには休みなっせ、身体が資本ばい?無理はいかんとよ」
え?いつになく、優しいお言葉?
「ん?」
「……」
「それは、イラストが追いつかないから休め、じゃないですよね?」
「そ、そげんこつじゃなか!し、心配しとるったい!」
ほんとうかしら?
一年間、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
お話しはまだまだ続きます。
ページ下部の評価欄から、評価をしてもらえると嬉しいです。
いいね、ブックマーク、感想等ももらえると非常に励みになります。
よろしくお願いします。




