【第84話】 入学式 前夜 4
今晩は。
投稿です。
「ジキさんは西の大陸からこられた人なの」
「西?」
「ああ、私は移民なのだよ。西の大陸の一部が海に沈んでね、私達はその大陸から来た人達の、子孫なのだ」
その記憶は無いな?
阿騎の後かしら、前かしら?
いや、それよりも、名前だ。
まどかと田崎さんは従妹だった。
センバ団長とイオリちゃんも従妹だ。
それにジキさんが?
親族の構成が似ていないか?
では、二人が結ばれると、生まれてくるのは?
ドキドキしてきた。
いや、でも、亜紀の世界と同じとは限らない。
違うかも知れない。
うう、混乱してる?
ならば、イオリちゃんは、まどかのお母さん?
確かに、似ているんだよなぁ。
目元とか。
私がすぐに好きになったのは、まどかに似ていたからかも。
もしかして、魂は知っている?
どうする?
この二人、応援するか?
いや、無理に応援したって結果は分からない。
それに私は、男女の恋愛経験の記憶が……皆無だ。
皆無、全くなし……いいのか?私?
応援はするけど、自然の流れに任せた方がいいのでは?
私の利益(赤ちゃんはまどか?)重視で、第三者の恋愛を応援って?
ああ、前世の記憶がなければ、素直な目で見れるのに!
私のことだ、欲が絡むと絶対いい結果にならない!
ここは素直な目で見つめていたいな。
ん?と、いうことは、ジキさんは他の国の人?だから強いのだろうか?
「ダラムさんに聞いたのですが、センバ騎士団長と組み手をされるとか?」
「ん?ああ、姫は武術に興味がおありか?ああ、獣人族は皆、戦士か」
「アッキーでいいですよ?」
「ははっ、私は姫と呼ばせてもらうよ」
真面目な人だなぁ。
「獣人族内では父は村長ですし、私は明季ですよ。王都に着くまで、お姫様の自覚なんて皆無でした。今もほとんどありませんよ」
この言葉にイオリちゃんが反応する。
「アッキー、それでも……」
「うん、大丈夫だよイオリちゃん、立振舞いはやはり村の代表だし、注意している」つもり、と。
「私が団長と組み手ができるのは、家系でしょう。私の先祖は、魔王から勇者になった5番目の勇者、朱天童子と言われています」
「!」
「センバ騎士団長は4番目の勇者、竜野小太郎の家系」
「勇者って??」
「魔力が覚醒した者のことです。魔王になるか、勇者になるかはその時の、勇者因子と魔王因子が関係しています」
「討伐対象とは?」
「詳しいですね、どこかで勉強されましたか?討伐対象は覚醒し、魔王になった者、もしくは魔王因子の多い者です」
ここで、はっ、とする。
やっちゃった!
ギギギギッと、首を回してイオリちゃんを見る。
そのお顔の表情からは、何も読み取れない。
ごめんなさい!お話、取っちゃったよ!
あああああっ私のお馬鹿者っ!
せっかくセンバ騎士団長が、気を利かせてくれたのにぃ!
そしてあっさり学校到着。
「では、私はこれで、おやすみなさいませ」
礼をし、その場を去るジキさん。
落ち着いているというか、思慮深いというか、おじいちゃん、は失礼か、お父さんっぽい?長年長者?って感じだ。
「ありがとうございました」
呟くような私の声……泣きたい気分だよ。
ごめんよ、イオリちゃん。
二人の時間で、私はおまけにならないといけないのに!
ああ、これは言葉に出して言った方がいいのか?
寮の部屋に戻ると、いきなりイオリちゃんは私の両手を取って、ぶんぶんと上下に振った。
いや、それもかなり激しく!
え?え?え?
「アッキー、どうしよう!送ってもらっちゃった!」
は?
「十蔵さんと、夜の道を歩いたのよ!」
えーと?
ジキさんではなく?十蔵さん?
「ごめんなさい、イオリちゃん、私、お邪魔だったかしら?」
「え?一緒にいてよ!?アッキー!?十蔵さんと二人きりとか無理。心臓速すぎて止まるか、その場で固まって止まる」
死ぬじゃん、それ。
それぐらい溢れていると?
「いや私、お話しして、イオリちゃんの時間取ったみたいだから……」
「アッキーごめんなさい、何のお話か、半分も耳に入らなかったの」
「え?」
「辛うじて、最初のお話だけ耳に残っていて、後はもう無理……」
これは……。
「え?スカート、見てとか、言っていたでしょう?」
「あれが精一杯。見られる前に恥ずかしくて、逃げたの」
「応援する」
「え?」
「二人を祝福する!」
思わず声が出た。
「ええっ?アッキー?」
「イオリちゃんが、そんなに溢れているなら、藤木家・十蔵さまに対する想いが、成就するよう全力で応援する!」
「アッキー!いや、ご主人さま!ありがとうございます!」
まどかの件は抜きで、そんなに好きなら、応援しなければ!
まあ、具体的にはと聞かれると、なんとも言えないけど。
それから2時間ほど、藤木家・十蔵さまについてお話を聞いた。
騎士団『闘』についても色々と情報が入った。
メンバー全員、怪物クラスらしい。
……ん?そこの副団長に就任予定だったよね?イオリちゃん。
え?怒らせると、いけない存在かも。
「すみません、ご主人さま。話し込んでしまって」
「え?嬉しいけど?」
「明日からは新しい生活が始まります。今日はお早めに就寝されなければいけないのに、こんなに時間を、私のために」
「気にしないよ、満月期は不眠不休でも問題ないよ」
「いえ、それでも明日は門出です。支度はお任せを」
明日は入学式、どんな人と会えるのだろう?
新しい生活の始まりだ。
次回投稿は 2023/04/22 20時頃の予定です。




