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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第81話】 入学式前夜

今晩は。

投稿です。

 孤児院へ直行である。


 誰も何も私のことは聞かないし、喋らなかった。

 まあ、聞かれても答えるのが難しい。


 私のお話は、全て作り話と言われても、しょうがないのだ。


 証明できない。


 当時を知る者は、メイドンしかいないだろう。

 ドライアドさん達は、表に出ないそうだし。


 ちょっと聞こえたけど、強い念話力で、意思を読んだのであろう、とかハーピーの女王は言っていたな。


 ホルダーはやはり、沈黙で通した方がよさそうだ。


 てくてく。

 カチリ、カチャン、鎧の擦れる音。


 え?まだついてくるの?センバ騎士団長?


 ついて来るのは他にもいた。


 子ネコである。


 王都に入ってから、数匹の子ネコが、ランお母さんの後をついて来たのだ!


 どこから現れた?

 1,2,3……5匹!?


 足下にじゃれつき、一匹は勇敢にもランお母さんに飛びつき、登り始めた。


「季羅、この者達は母親が帰ってこないようだ。孤児院で受け入れてくれるだろうか?」


 母猫が?なぜ分かる?


「傭兵団の孤児院だ、受け入れてくれるだろう」


 いや、季羅お父さん、それはどうだろう?

 まずはエノンかコロさんに相談だよ!


 子ネコは可愛いけど、すぐに大きくなって、ドンドン増えるのだ。


 亜紀の時代、施設の近所で飼育崩壊した家を、私は見ている。

 痩せ細った大勢のネコ達、病気のネコも沢山いた。

 次々に捕獲され、ケージに入れられたネコ。

 あの猫達はどうなったのだろう?


「そういえば爪長鳥が飛んでいたな、食われたのかもしれん」


 ……はい?


 ツメナガドリ?

 なんじゃそりゃ?

 ネコ、食べるの!?


「小動物を食べる魔物だ。ネコや犬の天敵だ」


 そんなのいるの!?

 

 2匹はランお母さんが抱き上げ、季羅お父さん、センバ騎士団長がそれぞれ抱っこした。


 残りの一匹は、私の足に噛みついている。


 がじがじ。


 まあ、甘噛みだけど。

 どうしてくれよう?


 爪を立て、私に登り始める。


 ……満月期だから痛くはないのだが。


 手を差し伸べ抱き上げると、指をしきりに舐め始めた。

 ザラザラした感触が、指先を刺激する。


「ランお母さん、お腹空いているのかな?」


 ん?


 視線が集まる?


 小さい私が、小さなネコを抱いている姿は、皆さんの心の何処かに触れたらしく。


 あ、なんか生暖かい視線で、見られているんですけど?


 孤児院の門では、シンお姉ちゃん、エノン、子供達が待っていた。


 ネコ、飼ってもらえるかな?


「王都へ、孤児院へようこそ、季羅、ラン!うち達、大歓迎するよ!」


「シン、エノン、変わりないか?」


 大きな声で尋ねる季羅お父さん。


 後ろに下がり始める子供達。

 そして、エノンやシンお姉ちゃんの後ろから、子供達は季羅お父さんを見上げる。


 ……怖くて泣くかな?優しいよ?


「うわぁ、シンお姉さまのお父様、おおきい!」


 あ、季羅お父さん、嬉しそう。


「うわぁ、シンお姉さまのお母様、お……」


 げしげし。


「男子、サイテー」


「し、仕方ないだろう!目が吸い寄せられるんだよっ!」


「……」


「どうしたの?」


「ねこ、埋もれてる。ネコになりたい……」


 げしげし。


「ほんと男子!なに考えているのよっ!」


 ん?誰かが袖を引っ張る。


 ちっちゃい子である。


 私がしゃがみ込み、目線を合わせると、わらわらと集まってきた。


 何故だろう?ちっちゃい子供達が、最近よく寄ってくる。


「ねこ」


「ああ、ネコだよ」


 子ネコに群がるチビちゃん達。


「ちっちゃい」


 きみ達もね。


「明季くん、5匹は無理だよ」


 エノンは困り顔である。


「では騎士団で1匹、私が1匹もらうとしよう」


 センバ騎士団長が2匹つかみ取る。


「では一匹は、この王都のお花屋さんが貰うわ。ネコのいるお花屋さんってかわいくない?」


「あ、ホッシー!?」


「へへっ、明日は頑張って歌うからね、自慢しに来たの。それとこの二人、連れてきたわよ」


「あ!」


 そこには美観さんと玲門さんが並んでいた。


(ホッシイイイイイッ!お、王さまいるじゃん!お妃様もっ!後にしましょうよ!お取り込み中だって!)


(え?取り込み中?ネコの譲渡会か?)


(違うわよ!今、孤児院に着かれたみたいだし!長旅でしょう!?お邪魔よ!私達!)


(もうアッキーに話したよ?ほれ!ごめんなさいって言うんでしょう?入学式前には謝るんでしょう?ほれ!頑張れ生徒会!)


 ……みんな聞こえている。


(だいたい、なんて呼んだらいいの?明季姫?明季さん?アッキーは駄目でしょう?)


(え?もう入学手続きしたから後輩よ、後輩!)


(あ、相手は北の王族よ!)


(違うわよ!アッキーは村長の娘さんよ!)


(同じことよ!)


 美観さんがちょっと前に出る。


 あ、美観さん、既に、もう泣きそうではないか!


 喋ろうとすると、エノンが先を取った。


「美観、玲門、ごめんね、うち意地悪したんよ」


「エ、エノンさん、でも森で助けてくれたし……恩人だし、手当も」


「あれはラッキーのためよ。怪我はもういいの?」


「ええ、今日はちゃんと謝ろうと思って……その皆の前で」


 私、知らないふりとかできるかな?


 絶対に、ポメだとばれないようにしなければ!


「ごめんね、明季くん」


 そう言って玲門さんから、オーク屋のクッキーとドーナツ、小さな可愛い花束を渡された。


「私の方こそ、冷たいこと言ったし、ごめんなさい」


「えっと、それと、これも……お母さんに相談したら、珍しい鳥を狩ってきたの。とても美味しいらしくて。どうしても持って行けって。これも受け取ってください!明季くん、傷つけてごめんなさい!」


 そう言って、美観さんから渡されたのは一羽の鳥。


 これ、お家からここまで下げてきたの!?

 お家、何処か知らないけど。


 お母さんってどんな人?


 ん?この鳥!?


「この鳥の名前……確か……」


「虹鳥って言うんだって」


「……ふーん」


 思い出の鳥だ!


 まさか食べる日が来るとは!

 この鳥の意味、伝わっているのかしら?

 数千年以上前だからね、伝わっていないだろうなぁ。


「ありがとう、こんなに沢山。先輩方、これからもよろしくお願いします!」


 私が先輩方と言うと、美観さんと玲門さんは両手でお顔を覆い、泣き出した。


 そう、魂は知っている。

 私だってこの二人との仲違いは、倒れるくらい辛かった。

次回投稿は 2023/04/19 20時頃の予定です。

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