【第80話】 明日は入学式 4
今晩は。
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大木は朱槍にもどり、大地には魔法陣が残った。
満月期は注意しないと、まったく何が起こるか予測出来ない。
月からの魔力と、私、内部の魔力が何倍にも膨れ上がる。
容易く暴走モードになりそうだ。
シルバーっちは私の奥底で、怒りと悲しみに震えていた。
どうしても許せなかったのだろう。
ゴルちゃん、何とか言ってあげてよ!
《……》
沈黙?
言葉を掛けてあげてよ!
《時の流れは無情じゃ。だが、倒れた者の意思を継ぎ、敬意を払う者もおる。だから泣くなシルバー》
敬意を払え?
最近、何処かで聞いたぞ?
あ、校則!
《今、彼女達が生きているのは、名もなき戦士達が死んで守ったお陰です。遙か過去、忘れ去られる程昔の出来事です。ですが……これでは……あまりにも!》
「ま、幻じゃ!明季、そなた幻を見せたであろう!」
あれが幻だと?
こいつはっ!
あ、また切れそう。
「あれが幻だと?人は信じたいものしか信じない。ハーピーさん達はどうでしょうか?どう、受け取りましたか?これは警告だと、言って欲しいのですか?それとも私が騙したと?幻と言う者に、何と言えば?」
「明季、今の精霊は?」
ランお母さんが尋ねる。
ランお母さんは信じたみたいだ。
「精霊の言葉、心に響いたぞ、戦士の言葉だ」
「過去に恐ろしい大戦があったのだな、できれば今現れた精霊の名が知りたい」
季羅お父さん、普段は何も聞かないのに、余程知りたいのだな。
騎士団は呆然としている。
センバ騎士団長は……魔法陣を見ている?
それと、女王に進言したハーピーさんと何か念話している?
「今の精霊は、さまよえる賢者より、エンキドウの名を授かったゴブリンの精霊です。闘神はシルバーと名付けたようですが」
まあ、格好付けて闘神とか言ったけど、要は私だ。ここは誤魔化しておこう。
ん?センバ騎士団長?
「東の砦では、金狼が怒り現れたと聞いたが、今度は王都か?」
すみません、取敢えず無視します、と。
「では、これにて」
もう退散します。
「明季姫、待たれよ」
私を止めたのは、女王に進言したハーピーさんだ。
「そなたは、過去の大戦を知っているのだな?」
「答える必要はないぞ、明季」
季羅お父さんが釘を刺す。
「先程、お前が言ったとおり、我々は信じたいものしか信じぬ。信じぬものに何を言っても無駄だ。毒にしか成らぬ」
「そんなことはない!我々の伝承にもある、大戦に挑んだ戦士達!魔族の力はとても強く、我々ハーピーは城を追われたとある。そして女王の命で魔族に挑んだ戦士達。その数は我々が聖数……」
「24」
「!」固まるハーピーさん達。
「何故知っている!」
私にとって、あの大戦は1年も経っていない。
あの勇敢なハーピーさん達が、今ではこれか?
「ならばハーピーさん達の聖なる色は紫か?」
絶句するハーピーさん達。
「女王の命令で同行した紫隊24名、隊を率いた隊長はド・ナさん。女王の命令は盾として散れ、と言うものだった。進んで散ることは許さない、と言ったけど……彼女達は……」
飛龍隊を庇って全滅した。
「……思い出せば、怒りで大地を割りそうだ。これ以上私に喋らすなよ?」
歩き出す私達。
進言したハーピーさんが、それでも立ち塞がる。
「どきなさい。これ以上、話すことはない」
彼女は必死に食い下がる。
「伝承の一族である、私しか知らないことがある!その時の、女王の容姿だ!このことは歴代王家の者も知らぬ」
「言ってどうなる?」
「伝承が正しかったと示したい!」
「駄目だよ、あなたが満足するだけだ。何も変らない」
ん?まて!?今、何か過ぎった!?
このハーピーさんの思いは、私ではないのか?
私が死んだ後、皆がどうなったのか知りたい気持ちと、同じ気持ちではないのか?
とても似ている気がする!
あの時のことが、知りたい気持ちと!
「お願いだ、明季姫!知っているなら教えてくれ!変えてみせる!戦士達の話を一言でもいい、聞かせてくれ!私達の先祖の話だろう!?」
どうする?
でも、女王の容姿?
《あの時、ハーピーの女王は右腕と、右の翼がありませんでした》
ああ、そうだね、エノンが重速術を披露したんだ。
「右腕と右の翼」
見開かれる目。
「……聖女は、聖女ド・ナさまは……」
「ド・ナさんは革の鎧が似合っていた。綺麗な声の、可憐なハーピーだった。ん?」
今、何か光った!?
周りを見回す。
一人のハーピーが目に止まる。
私を見ようとしないハーピー。
「あの人は、誰?ド・ナさんにそっくりだ」
その一言で、大半のハーピーさん達が更に青ざめ、謝罪の言葉を口にし始めた。
どうかお許しを。
このような行為はもう二度と。
言い当てたぞ、本物だ!
許しを請わなくては!
「ド・ナさまは彼女に似ていましたか?」
「ええ、そっくりです」
「ドナ様は彼女の家から出た聖女と言われています。女王、謝罪の言葉を!シュート家・明季姫は間違いなくホルダーです!」
女王は首を横に振り、よそを向いた。
「はっ、ホルダーだと?戯言を!偽物に決まっておる!裏路地にもおるぞ、自称ホルダー共が!」
センバ騎士団長が間に入った。
「妖精達が増えてきた、ここまでです。ハーピーの語り部、よろしいな?」
気がつくと群衆が。
「感謝する、シュート家の方々、騎士団『闘』の皆様」
(ドライアドの杖を見ても、女王は変らぬのか!少しでも顧みてくれれば……)
女王さま以外にも、何か、問題抱えている?
ん?まさか、同じクラスとかないよね?このハーピー女王の娘さんと。
私達は騎士団『闘』に導かれ、王都の正門を目指した。
声が聞こえる。
「認めぬ、我は認めぬぞ!あの伝承は、高貴な我々が、ゴブリン風情に助けられたとある!あり得ぬであろう!」
「戒めです、女王。先程の朱槍は警告です!」
まずは、少しでも認めれば、気持ちが楽になるのに、多分。
ハーピーのド・ナさん。
お話が、語り継がれている。
どんなお話なのだろう?
シルバーっち、ハーピー一族の中には、彼女達のことを尊敬する者、必ずいる!
英雄譚、憧れて頑張ろうと思う者、いるよ。
まあ、政治的に利用されないことを祈るけど。
ド・ナさん、彼女のエピソード?
会話を少し、交しただけだしなぁ。
さすがに、聖女のパンツ覗きましたとは言えん。
いや、あれは覗いたのではなく、見えたのだが。
本当です、信じてください……駄目だ、はなせるわけがない!
このエピソードは私だけのエピソードにしておこう。
(参照:一章 第103話 気がついたら海岸線3~ )
次回投稿は 2023/04/18 20時頃の予定です。
サブタイトルは 入学式 です。




