【第72話】 お祭り?
今晩は。
少し遅れました。
私は孤児院経由でとりあえず寮に帰ってきた。
「アッキー、バトルは禁止と聞きましたが?」
「アンアン!」
なぜ分かるの?
「まずは、お風呂へ、お食事は用意できております」
「アンアン」
言葉を換えてみる。
もう、早くお風呂にはいりなさい!ご飯、できているから!
……おかんやん。
まるでお母さんではないか!
私は、得がたいものを得たのでは?
お風呂は薬湯だった。
とてもいい香りで、ゆったりできた。
脱衣室では、なんと風魔法で髪を乾かし、香りのいい櫛でといてくれた。
「まるで、お姫様だね」
「姫ですよ?自覚はおありですか?」
「ありません。ですが、イオリちゃんには大感謝です」
彼女は鏡の中で、それはそれは嬉しそうに、微笑んだ。
お風呂が終わると夕食だ。
お待ちかねのご飯は肉である。
ぱくぱく。
美味しいが、一人で食べている。
「イオリちゃんは食べないの?」
「給仕のお仕事があります」
「一緒に食べよう?その方が美味しいよ?」
「アッキー、一人で食べることも学んで下さい」
覚えてどうする?
イオリちゃん、さすがに料理も上手だ。
「マナーとかあるの?食べ方の」
「ありますよ、でもそれは後ほど。今は美味しく自由に食べて下さい」
あるんだ。
でも気にしない。
美味しく食べる。それが一番って知っているから。
食べ終わると、一緒に後片付けをする。
「私の仕事ですが?」
「へへっ、お皿の洗い方を学ぼうと思ってね?」
効率的なお皿の洗い方を学ぶ。
扱い方、乾燥の仕方。
奥深かったりする。
イオリちゃんとの生活は、上手くいきそうである。
嫌がるから言っていないけど、イオリちゃんからはとてもいい匂いがするのだ。
同じ匂いが、センバ団長やピア副団長からもしている。
鍛錬の匂いだろうか?
匂いと感じ取っているだけで、実は何かのフェロモンかもしれない。
「明日は、入学式の用意で、朝から賑やかですよ」
「?」
「入学式は、市場方面や、商業施設の道路に出店が並びます」
「へ?」
「学校周辺には花屋が並びますよ」
「ええ!?」
「王都に多くの者が集まりますよ」
「それって、お祭り?」
「そんな感じですね」
王都を出歩くのは、控えたがいいのかな?
ならば、ン・キングに会いに行くか。
私にはすることが沢山ある。
まず!
文字ですな、読み書き。これを覚えないと!
「お願いします!イオリ先生っ!」
「いいですよ」
「それから一つ、聞きたいことがあるのですが?」
「何でしょう?」
「メイドンは、何処に?王都にいると聞いたのですが?」
これが、王都に来た一番の理由!
これこそが全て、といってもいいのだが?
「西の塔に」
「どのような状態か、知っていますか?」
「いえ、知りません。私達、メイさまに繋がる一族でも、会えないのです」
「?」
「騎士団『護』の本営です。彼らが死守していますので……メイさまは勇者格の英雄ですから」
「ン・キングが挑んだと聞きましたが?」
「あれはもう、凄い戦いでしたよ。ン・キングが最後には引きましたが……あの戦いを見て、商工会はメイさまの利用を諦めたらしいです」
「それほどに?では、その、西の塔の攻略は無理だと?」
「はい」
「なら、慎重に進めないと……」
「え?アッキー?挑むの?」
思わず言葉が出るイオリちゃん。
「当然。獣人族の生活向上、王都とのパイプも大事だけど、それ以上にメイドン復活を望んでいるの」
「復活ですか?メイさまは壊れていると聞いておりますが?」
「修理、できるかもしれない人物を知っている」
明日から満月期が始まる。
召喚して聞いてみるとしよう。
「修理!?」
「その話があるから、明日は朝からン・キングに会いに行きます。場所は王都北です」
「分かりました。校長先生には伝えておきますね」
「校長?」
なんでトルクちゃんに?
「校長先生は寮長でもありますから」
「え?」
「隣が、ご自宅ですが?」
「えええっ!?こ、ここに住んで居るの!?」
「ほとんど、校長室で過ごされています。こちらに来られるのは稀ですけど」
雇ってよかった!
学校の情報も聞けるし!
そして、取敢えず読み書きの勉強をして、初めての寮での一日は慌ただしく終わった。
もそもそとベッドに入る。
「眠るまで、ここにいますよ」
おかんやん!
!?
(一歳で、精霊憑き。闘神の記憶を持つホルダーで、召喚士でもあるという。ご主人さまの運命は、過酷なものになるに違いない)
……過酷は嫌だなぁ。でも、そのための能力か?
(この方に使えるのが、私の天命であろう。全身全霊でお仕えしなければ、半端な気持ちでは、こちらが潰れてしまう)
「イオリちゃん」
「は、はい!」
「今日から、ずっとよろしくね。途中で辞めたらいやだよ?」
「辞めることはありません」
その言葉を聞いて、安心したのか、私はいつしか寝てしまった。
おかしいなぁ、夢を見ない。
上昇期、満月期だから超空間に行けるはずなんだけど?
目を開ける。
どのくらい寝たであろうか?
獣人族は夜目が利くから、暗闇は暗闇ではない。
耳がいいから外の虫の音も聞こえる。
場所もおおよそ分かる。
時計は?
3時。
知らない天井を見る。
一人、こんな所まで来てしまった。
学校生活は、どんな生活になるのだろう?
亜紀の学校とは明らかに違う。
勉学の場は同じだけど。
アイお姉ちゃんや他の皆は、私の家族は、どうしているだろう?
亜紀を思い出す。
死は一瞬で訪れた。
阿騎の時もだ。
これは、出会いや別れは大事にしなければ。
この世界は、死が更に身近にある気がする。ほとんどの人物が武器を携帯しているし。
魔法は便利だが、その分、危険な生物も沢山生息している。
何処の世界でも、生き抜くのは大変だな。
入学式、新しい生活、どんな出会いがある?
……とりあえず、ぼっちは回避できた。
ポシェットくん!
校長先生に感謝だね。
次回投稿は 2023/04/12 20時頃の予定です。
サブタイトルは ン・キングとドロトン君 です。




