表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
98/181

帰る場所

「……そっか」

キツツキが、小さく呟く。

「私、生きてるんだ」

静かな声だった。


その横で、

セシルはようやく肩の力を抜いた。

「本当に……」

「無茶をしすぎです」


「いやぁ」

キツツキが苦笑する。

「でも、先輩守れたので」


「……っ」

セシルの表情が揺れる。

その時だった。コンコン、と。

部屋の扉がノックされた。


「入るよ」

エルメスだった。

その後ろには、蓮とマーリンもいる。


「おぉー!!」

マーリンが目を輝かせた。

「生きてる!!」


「縁起でもないこと言わないでくださいよ……」

キツツキが苦笑する。


蓮も小さく息を吐いた。

「まぁ……元気そうで何よりだ」


その時。

「失礼する」

低い声。

部屋へ入ってきたのは、大タカだった。

その空気だけで、部屋が静まる。

大タカは、キツツキの姿を確認すると、

小さく頷いた。

「……生きていたか」

ぶっきらぼうな言い方だった。

だが、どこか安堵が滲んでいる。


キツツキが笑う。

「族長」

「残念でしたね。まだ死にませんよ」


「減らず口を叩けるなら問題ないな」

短いやり取り。

だが、その空気は以前よりずっと柔らかかった。

やがてーー大タカが、ゆっくり口を開く。


「……この地は捨てる」

その一言で、空気が変わった。


蓮が眉をひそめる。

「里を……?」


「鵺がまた来る可能性がある」

大タカの目は真剣だった。

「今のままでは、村人達を守り切れん」


静かな声。

「だから、新たな拠点を作る」

誰も口を挟まなかった。

それが、苦渋の決断だと分かったからだ。

大タカは、今度はセシルへ視線を向ける。


「……セシル」

その呼び方に、

部屋の空気が少し止まった。

セシルの瞳が揺れる。

かつての異名ではない。

“ハヤブサ”ではなく。

一人の人間として、

その名を呼んだ。


大タカは続ける。

「里が落ち着いたら、鷹を飛ばす」

「その時はまた来い」


セシルは、少しだけ目を見開き――

静かに頷いた。

「……はい」

短い返事だった。

だが、その声は少し震えていた。


大タカは、ゆっくりエルメスへ向き直る。

「エルメス殿」

深く頭を下げた。

その場にいた全員が、目を見開く。

族長である大タカが、頭を下げたのだ。


「セシルを……頼みます」

静かな声だった。


エルメスは、

少し驚いたように目を瞬かせ――

やがて、優しく笑った。

「もちろん」

「彼女は、うちの大事な秘書だからね」


その言葉に、セシルが少し困ったように俯く。

だが。どこか、嬉しそうだった。


そして――

「……あ」

突然、

蓮が声を漏らした。

全員の視線が集まる。

蓮の顔が、少しずつ青ざめていく。


「……トリスタン」


静寂。

マーリンが首を傾げた。

「そういえば‥‥‥‥」


「完全に忘れていた」


部屋の空気が止まった。

数秒後。

「…………」

全員、目を逸らした。

気まずい沈黙。

誰も、セシルと目を合わせない。

キツツキですら、そっと視線を逸らしていた。


やがて。

「……おじさん、生きてますかね?」

キツツキが恐る恐る呟く。


「いや知らん!!」

蓮が即答した。

「というかアイツ、まだ陽動してる可能性あるぞ!?」


その瞬間。全員の顔色が変わった。

「……っ」

セシルが立ち上がろうとする。


「いやいやいや……」

ベッドの上で、キツツキが引きつった顔をした。

「流石におじさん可哀想ですね」


「今それ言います!?」

セシルが珍しく声を荒げる。


エルメスが小さく咳払いした。

「……とりあえず」

「迎えには行こうか」


「そうですね……」

アーサーも苦笑する。

その時だった。

――ドゴォォォォン!!!!

遠くから爆発音が響いた。


「…………」

全員、

ゆっくり窓の外を見る。


「まだやってる!!?」

蓮が叫んだ。


マーリンが引きつった顔で呟く。

「トリスタン……」

「意外と頑張り屋さん……」


「そこじゃねぇ!!」

再び、遠くで爆音が轟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ