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ケラウノス

ガキィィィン!!

轟音。

鵺の大剣が止まる。


「あぁん?」

鵺が目を細めた。


目の前。そこには――

かつてアーサーと剣と拳を交えた男が立っていた。


「待たせたな」

低い声。


アーサーの目が見開かれる。

「あなたは……」


「ランスロット!?」


以前は両腕へ鎖を巻いていた男。

だが今、その腕には黒銀の甲冑型遺装武器ガントレットが装着されていた。


ギギギギギッ……

鵺の大剣を、真正面から受け止めている。


「ランスロット!! なんでお前が!?」

蓮が驚愕する。


セシルも目を見開いた。

「なぜ……彼が……」


「僕が呼んだんだよ」


その声に、セシルの呼吸が止まる。

ゆっくり振り返る。

そこにいたのは――


「師匠……!!」

蓮が思わず叫ぶ


エルメスだった。


「待たせたね」

優しく笑う。


その瞬間。セシルの瞳から、涙が溢れ落ちた。

「エルメス……様……」


エルメスは静かに頷く。

「迎えに来たよ」


震えながら、セシルが答えた。

「……はい」


ガンッ!!

鵺がランスロットを弾き飛ばす。

「なんだお前」

鋭い殺気。

「ウゼェな……」

再び、大剣を振り上げる。


その時だった。


「ランスロット」

エルメスが静かに呼ぶ。


次の瞬間。

ランスロットの両腕の甲冑が、淡く発光した。

バチバチと、雷鳴のような音が響く。


ランスロットが呟く。

「――轟け」


踏み込み。拳。


次の瞬間ーー

ドゴォォォォォン!!!!!

爆音。雷光。


鵺の身体が、

凄まじい勢いで吹き飛んだ。

「っ……!!」


地面を削りながら、初めて鵺が膝をつく。

「あぁん!!?」

初めて、鵺の表情が歪む。


アーサーも息を呑んだ。

「すごい……」


その時。

聖剣エクスカリバーが呟く。


「あれは……」

「なんであいつがここにいるのよ!!」


「ランスロットを知っているのですか?」


「違うわよ。ランスロットじゃない」

聖剣の視線は、両腕の甲冑ガントレットへ向いていた。

「あれは私と同じ――"遺装武器"よ」


空気が変わる。

エクスカリバーが、信じられないものを見るように呟く。


「あの武具の名は――ケラウノス」

「かつて、雷帝ゼノン・カリオスが使っていた遺装武具よ」



雷帝ゼノン・カリオス。

その名を知らぬ者はいない。

かつて大陸全土へ轟いた、最強の雷使い。

天を裂く雷鳴。山を砕く拳。

戦場に立てば、稲妻だけが視界を埋め尽くしたという。


そして――

彼が生涯唯一装備していた遺装武具。

それこそが、ランスロットの両腕を覆う黒銀の甲冑。


【ケラウノス】


神の雷を冠する、伝説級遺装武具だった。


バチバチ……。

青白い雷が、ランスロットの両腕から溢れ出す。


鵺がゆっくり立ち上がった。

「あぁん……?」

ギロリ、と。獣のような目でランスロットを睨みつける。


「何だお前」

吐き捨てるような声。

「妙な武器使いやがって」


ランスロットは答えない。

ただ静かに、拳を構える。


その時だった。

「彼は僕の護衛だからね」

穏やかな声。エルメスだった。


鵺の視線がそちらへ向く。

「……お前がハイクラスか?」


奴隷商人。

その言葉に、蓮が僅かに目を細める。


エルメスは微笑んだまま頷いた。

「いかにも」

「僕のことを知っているようだね」


鵺が口元を吊り上げる。

「お前のことはよぉく知ってるぜ」

「裏でコソコソ動き回ってる、気色悪ぃ奴隷商人だろ?」


だが、エルメスの笑みは崩れない。

「それはどうも」

「僕は君みたいな野蛮な人間は知らないんだが」


空気が変わる。

鵺の額に、僅かに青筋が浮かんだ。


エルメスは気にした様子もなく、セシルへ視線を向ける。

「うちの秘書は返してもらうよ」


セシルの瞳が揺れる。


鵺は鼻で笑った。

「返すとでも?」


「もちろん」

エルメスが静かに答える。

「君にはすでにチェックがかかっている」


「……あぁ?」

鵺が眉をひそめた。


エルメスは、まるで盤面でも眺めるように微笑む。

キング一人で、どう切り抜くのかな?」


静寂。

次の瞬間。

鵺が獰猛に笑った。


「ハッ!!」

殺気が爆発する。

「雑魚がどんだけ群がろうが――」

大剣を肩へ担ぐ。

「雑魚は雑魚だろうがッ!!」


ドンッ――!!

地面が砕ける。

鵺が、真正面から突っ込んできた。



夜叉。

その名を聞けば、誰もが顔をしかめる。

極悪非道の外道集団。

強盗。虐殺。略奪。

金になるなら何でもやる。


いや――


金にならずとも、気に入らなければ平然と人を殺す。

大陸全土へ名を轟かせる、最悪の犯罪組織だった。


そして、鵺はその幹部の一人。


ーー厄災。

そう呼ばれる怪物達。

夜叉の団員は、一人一人が軍隊に匹敵する戦力を持つ。

故に群れない。故に従わない。

己の欲望のまま、好き勝手に暴れ回る。


それが――

「夜叉」だった。

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