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役割分担

「いやいやいや、待て待て待て」

トリスタンが両手を前に出した。


「なんで当然みたいな流れになってんだよ」


「当然だからだろ」

蓮が即答する。


「説明になってねぇ!」


「だってお前、一番目立つし」


「さっきからそれしか言ってねぇな!?」

トリスタンが眉を吊り上げる。


マーリンが小さく首を傾げた。

「でも、トリスタンって騒がしいし」


「追撃やめろ」


アーサーも控えめに口を開く。

「敵の注意を引くという意味では、適任かと」


「お前もか!!」

祠に声が響く。


蓮は肩をすくめた。

「ほら、満場一致」


「民主主義の暴力を感じる……」


「そんな大層なもんじゃねぇよ」


「いや十分だろ」


トリスタンが深いため息をついた。


「で?」

腕を組む。

「具体的には何やらせる気だ」


空気が少しだけ切り替わる。

大タカが地図を指した。


「お前には、ここで騒ぎを起こしてもらう」


「雑だな」


「目的は注目を集めることだ」

大タカは気にせず続ける。

「地下水路側の警戒を薄くする」


蓮が補足する。

「派手にやれ」

「見つかって、逃げて、引きつけろ」


「全部嫌なんだが」


「安心しろ」

蓮がにやりと笑う。

「得意分野だろ」


「どこがだよ」


「普段から無駄に騒がしい」


「悪口じゃねぇか!」


マーリンがこくこく頷く。

「うん」


「お前は否定しろよ!」


アーサーが少しだけ困ったように笑った。

「ですが、トリスタンなら生き残れそうです」


「評価が雑すぎる」

トリスタンが頭を抱える。


数秒、唸る。


「……はぁ」

大きく息を吐いた。

「分かったよ」


「お」

蓮が眉を上げる。


「やる」

トリスタンが不満げに言う。

「どうせ誰かやんなきゃなんねぇんだろ」


その言葉に、少しだけ空気が落ち着いた。


蓮が口角を上げる。

「助かる」


「貸し一つな」


「高ぇな」


「命張るんだから当然だろ」


大タカが静かに頷く。

「では、詳細を説明する」


蓮がふと眉をひそめる。

「決行はいつだ?」


「今日だ」

大タカが即答する。


トリスタンが目を瞬かせる。

「今日?」


「時間がない」

低い声だった。

「ハヤブサの状況は安定していない」


マーリンの表情が引き締まる。

「じゃあ夜?」


「いや」

大タカは首を横に振った。

「夜は警戒が強まる」

地図を指差す。

「見張り増員」

「巡回増加」

「地下水路も封鎖確認が入る」


「なるほど」

蓮が頷く。

「つまり逆か」


「ああ」

大タカは続ける。

「動くなら昼」


トリスタンが嫌そうな顔をした。

「めちゃくちゃ目立つじゃねぇか」


「だからお前なんだろ」


「納得いかねぇ……!」

トリスタンが露骨に顔をしかめる。


「安心しろ」

蓮が肩を叩いた。

「ただ走り回るだけじゃない」


「そこだけ聞くと少し安心するな」


「もっと嫌な役目がある」


「安心を返せ」


蓮はにやりと笑う。

「お前、鍛冶師だろ」


「そうだが?」


「なら、それ使え」


トリスタンが眉をひそめた。

「……どういう意味だ」


大タカが口を開く。

「正面から入れ」


「また嫌な予感がする」


「見張りに接触しろ」


「予感じゃなく確信になった」


蓮は構わず続ける。

「で、武器見て文句言え」


沈黙。

数秒。

「は?」

トリスタンが素で固まった。


マーリンが首を傾げる。

「文句?」


「そう」

蓮は頷く。

「鍛冶師なんだから、武器見りゃ色々分かるだろ」


「いや、分かるけど」


「だったらそれっぽく批評しろ」


「それっぽくって何だよ」


「例えば」

蓮は適当に指を折る。

「刃付けが甘い」

「重心がズレてる」

「焼きが足りない」


トリスタンが少し真顔になる。

「……普通に言えるな」


「だろ?」


「いや待て」

トリスタンが顔を上げる。

「それ普通に喧嘩売ってないか?」


「売るんだよ」

蓮が即答した。

「目的思い出せ」


「最低だなお前」


アーサーが少し納得したように頷く。

「確かに」

「武器への指摘なら自然に口論へ持ち込めそうです」


「"自然に口論"って言い方ある?」


マーリンも小さく手を叩いた。

「いいかも!」


「いいのか……?」

トリスタンが遠い目になる。


大タカが静かに補足した。

「鷲の里は武具へのこだわりが強い」


「ほう」


「侮辱と受け取られれば、反応は早いはずだ」


「つまり」

蓮が口角を上げる。

「勝手にキレてくれるってことだ」


「最悪だなこの作戦」


だが、トリスタンは少し考え込み、

やがて小さく息を吐いた。


「……まあ」

肩を回す。

「それなら確かに、ワシ向きか」


「だろ?」


「嬉しくねぇけどな」

トリスタンが不満げに答える。


蓮は満足げに頷いた。

「よし、決まりだ」


大タカが地図へ視線を戻す。

「では、侵入経路の最終確認に入る」


その声に、全員が地図へ目を向けた。

本番が、近づいていた。

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