強制終了
空気が張り詰める。
アーサーが剣を構え直した。
呼吸を整える。
だが、キツツキはまだ余裕がある。
対してこちらは、トリスタン負傷。
囲まれた状態。
長引けば不利なのは明白だった。
蓮は小さく舌打ちする。
(仕方ねぇか)
「アーサー」
短く呼ぶ。
アーサーが振り返った。
「はい!」
蓮の目が細くなる。
「同期するぞ」
その一言で、空気が変わった。
アーサーの瞳がわずかに見開かれる。
だが、すぐに真剣な表情へ切り替わった。
「了解です」
蓮が右手を軽く掲げる。
***************
【同期開始】
***************
視界に淡い文字が浮かぶ。
***************
【対象:アーサー・アルトリア】
【適合率:20%】
【英雄化:起動】
***************
ドクン。
心臓が強く脈打った。
「っ……!」
蓮の胸に鈍い痛みが走る。
だが、耐える。アーサーの身体が淡く発光した。
「これは……!」
彼女の纏う空気が変わる。
魔力の密度。身体能力。
すべてが一段階跳ね上がる。
エクスカリバーが小さく笑った。
「ようやく本気ね」
アーサーが地面を蹴る。
ドンッ!!
「っ!?」
キツツキが目を見開いた。
速い。
先ほどまでとは明らかに違う。
一瞬で間合いを詰める。
ガギィィン!!
激しく火花が散る。
キツツキが短刀で受け止めるが、表情に驚きが浮かぶ。
「わっ」
そのまま押し込まれる。
「まだです!!」
アーサーが追撃。
連続斬撃。速度が一気に上がる。
ガキン! ガキィン!!
キツツキが後退する。
枝へ飛ぶ。
だが。
「逃がしません!」
アーサーがさらに踏み込んだ。
斬撃が頬を掠める。
「……あれ?」
キツツキの声に、僅かな警戒が混じる。
頬から一筋、血が流れた。
指でそっと触れる。
「私、傷つけられたの初めてかも」
笑ってはいる。
だが目は笑っていなかった。
蓮は息を荒げながら状況を見る。
(押してる……!)
胸は痛む。
同期維持の負荷はある。
だが、このまま押し切れば――
キツツキがふっと笑った。
「なるほど」
短刀を逆手に持ち替える。
「そういうことですか」
「?」
アーサーが眉をひそめる。
キツツキが突っ込んだ。
「っ!」
ガキィィン!!
剣で受ける。だが、違和感。妙に浅い。
「……?」
短刀が、わずかにアーサーの腕を掠めた。
プツリ。ほんの小さな切り傷。
「浅い――」
そう思った瞬間だった。
「っ……!?」
アーサーの膝が崩れる。
「え……?」
剣先が地面へ落ちた。
「アーサー!?」
蓮が目を見開く。
アーサーの呼吸が乱れる。
腕の傷口から、じわりと黒い痣が広がっていく。
マーリンが青ざめた。
「毒……!?」
キツツキがにこりと笑う。
「忍びなので」
「くっ……」
アーサーが歯を食いしばる。
「まだ……動けます……!」
「無理するな!!」
蓮が叫ぶ。
その瞬間。
視界に文字が浮かぶ。
***************
【警告】
***************
「っ?」
蓮の顔色が変わる。
***************
【同期対象:アーサー・アルトリア】
【状態異常:毒侵食確認】
***************
嫌な汗が背中を伝う。
「おい……待て」
文字は続く。
***************
【同期維持率低下】
***************
ビィィィッ――
視界にノイズ。
「っ!?」
***************
【接続不安定】
***************
アーサーが苦しそうに声を漏らす。
「マスター……っ」
***************
【ERROR】
***************
蓮の瞳が見開かれる。
「嘘だろ」
***************
【同期が切断されました】
***************
ブツン。
何かが無理やり引き剥がされる感覚。
「がっ……!!」
蓮が膝をついた。
胸が軋む。呼吸が乱れる。
アーサーの身体から淡い光が霧散していった。
「うっ……」
そのままアーサーも崩れ落ちる。
「アーサー!!」
マーリンが駆け寄った。
キツツキが少しだけ目を細める。
「‥‥‥あれ?」
「今の、何ですか?」
蓮は息を荒げながら顔を上げる。
最悪だった。同期切断。強化解除。毒。
全部まとめて崩れた。
キツツキは短刀をくるりと回した。
「なるほど」
にこり、と笑う。
「あなた達、思ったより面白いですね」
一歩、前に出る。
月明かりに照らされた刃先が鈍く光った。
「でも」
笑顔のまま、告げる。
「ーーここまでです」




