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聖剣を巡る思惑

そのツッコミだけが、崩れた店に響いたーー。


しばし、静寂。

先ほどまでの激戦が嘘みたいに、場に残るのは焼け焦げた匂いと、崩れた瓦礫だけだった。


「……終わった、のか」

蓮が床に転がったまま呟く。


「たぶんね」

マーリンが小さく息を吐く。

「今回は、だけど」


「その言い方やめろ。次ある前提なの怖いんだが」


アーサーは剣を鞘へ戻し、ゆっくりと周囲を見渡した。


「ですが、妙ですね」

蓮が顔だけ向ける。


「何が?」


アーサーの表情は変わらない。


「"回収対象"、と言っていました」

一瞬、空気がわずかに張る。


「たしかに」

マーリンも頷いた。


「ただ襲ってきただけじゃない」

「最初から目的があったってことだね」


蓮が眉をひそめる。


「つまり最初からエクスカリバー狙いってことか」


(当然でしょ)


エクスカリバーが鼻を鳴らす。


(私、人気者だから)


「その人気、命懸けすぎるだろ……」


その時だった。


「ば、馬鹿な……」


震えた声が、崩れた入口側から聞こえた。

全員が振り向く。


そこに立っていたのはーー

ヴェルナーだった。


「え」

蓮が間抜けな声を漏らす。


ヴェルナーは顔面蒼白だった。

信じられないものを見るみたいに、その場を見渡している。

崩れた店。裂けた床。消えた刺客。

そして、立っているアーサー。


「なぜだ……」

震える声。

「なぜ失敗する……!」


その言葉で、空気が凍った。


「……おい」

蓮がゆっくり立ち上がる。


「今、なんつった?」


ヴェルナーがハッと口を押さえる。

「あ……」

遅い。


マーリンが、じっとヴェルナーを見る。

その瞳から、いつもの軽さが消えていた。


「へぇ」

小さく呟く。


「やっぱり関係者なんだ」


ヴェルナーが一歩後ずさる。

「ち、違う!」


反射的に叫ぶ。

「私はただ……!」


言葉が止まる。


アーサーが一歩前に出た。


「説明していただけますか」

静かな声だった。

だが、先ほどまでよりずっと冷たい。


ヴェルナーは汗を浮かべる。


「私は……私はただ!」


半ばやけくそみたいに叫んだ。


「聖剣を回収したかっただけだ!!」


沈黙。

蓮が眉をひそめる。


「回収?」


ヴェルナーは息を飲む。


「っ……」

言ってしまった。そんな顔だった。


アーサーの視線が鋭くなる。


「誰の指示ですか」


「指示ではない!」

ヴェルナーが叫ぶ。


「ただ……貴族たちの間では当然の話だ!」

「聖剣ほどの遺物を、一個人が所有するなど本来ありえない!」

「管理されるべきものなんだ!」


マーリンが静かに目を細める。

「管理、ね」


その一言だけで、空気が少し冷えた。

ヴェルナーがびくりと肩を揺らす。


マーリンは淡々と言う。

「聖剣を欲しがる連中なんて、ろくでもないに決まってる」


ヴェルナーの顔が引きつった。

「なっ……!」


蓮が腕を組む。

「なるほどな」


ゆっくりとヴェルナーを見る。


「つまり貴族連中の中に、聖剣を狙ってる連中がいるってことか」


ヴェルナーは口を閉ざした。

だがその沈黙自体が答えだった。


アーサーも小さく息を吐く。

「面倒な話になりましたね」


「ほんとそれ」

蓮が即答する。


トリスタンが周囲を見回し、ため息をついた。


「その前に、わしの店どうしてくれるんじゃ」


全員が黙る。

崩壊した店内。割れた窓。砕けた壁。

蓮がそっと視線を逸らした。


「……あ」


マーリンも小さく目を逸らす。


「結構、派手にやったね」


アーサーだけが真顔で言う。


「申し訳ありません」


トリスタンのこめかみに青筋が浮かぶ。


「後で全員、片付けじゃ」


「ええええええ!?」

蓮が叫ぶ。


戦いは終わった。

だがーー

聖剣を巡る、もっと面倒な問題が静かに幕を開けようとしていた。


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