同期
アーサーが踏み込んだ瞬間だった。
「っ――!?」
蓮の身体が、唐突に軋んだ。
心臓を直接握り潰されるような圧迫感。
肺が潰れ、まともに息が吸えない。
「がっ‥‥‥!?」
膝が落ちる。
「マスター!?」
マーリンが振り返る。
蓮は胸元を押さえたまま、荒く息を吐く。
「な、んだよ‥‥これ‥‥‥」
視界の端に、ウィンドウが浮かぶ。
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【同期】進行中
対象:アーサー
負荷分散率:20%
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「はぁ!?聞いてねぇぞこんなの!!」
その瞬間。
頭の中に、直接声が響いた。
(うるさいわね)
「っ!?」
蓮の肩が跳ねる。
耳じゃない。頭の中に、直接。
「なんでお前が頭の中にいんだよ!?」
(同期してるんだから当然でしょ)
即答だった。
(アンタの魔力と生命力を少し借りて、この子の出力を安定させてるの)
「少しってレベルじゃねぇんだよ!!」
(死ぬほどじゃないって言ったでしょ)
「そのラインが信用できねぇんだよ!!」
マーリンが小さく目を細める。
「‥‥リンクしたんだね」
「そんな軽い説明で済ませる話かこれ!?」
(文句が多いわね。黙って魔力貸してればいいのよ)
「扱い雑っ!!」
「マスター!」
アーサーが振り返る。
「こっちはいい!!さっさと倒せ!!」
一瞬だけ、アーサーの目が揺れた。
だが、すぐに前を向く。
「了解しました」
マーリンが小さく吹き出す。
「息ぴったりだね」
「全然嬉しくねぇよ!!」
その間にも、アーサーの周囲では風圧が増していく。
白い光が、剣身を走る。
足元の砂埃がふわりと浮いた。
男が、静かに目を細める。
「気配が変わったな」
アーサーは剣を正面に構える。
無駄な力が抜けている。
呼吸すら、剣と同調しているようだった。
(いい感じ)
エクスカリバーが満足げに言う。
(ようやく少しは見られる形になったわ)
蓮が荒い呼吸のまま顔を上げる。
「おい‥‥俺、三分これ耐えるのか?」
(文句あるなら切るけど?)
「それは困る!!」
男はそのやり取りを静かに見ていたが、やがて剣を持ち直した。
「なるほど」
低い声。
「面白い術式だ」
影が、再び地面を這う。
黒が足元から滲み出し、空間を侵食していく。
「ならば、その繋がりごと断てばいい」
ズズッ、と。影が一斉に広がった。
「来るよ」
マーリンが短く告げる。
アーサーは踏み込む。
ドンッ!!
地面が砕けた。
ただの踏み込み。それだけで石畳に亀裂が走る。
「っ――!?」
男の目が、初めて大きく見開かれた。
速い。さっきまでとは次元が違う。
「そこです」
アーサーが消える。
キィィィン!!!
激突。
男の剣が、辛うじて受け止める。
だが完全には止めきれない。
ギリギリと火花が散る。
「馬鹿な‥‥」
押されている。
男の足が、地面を滑った。
蓮が目を見開く。
「押してる‥‥!?」
(当然)
エクスカリバーが鼻を鳴らす。
(今だけは、少しだけ本物に近いもの)
アーサーがさらに踏み込む。
「はあああああッ!!」
一撃。二撃。三撃。
今まで見えていたはずの軌道が、男にとっても追いづらくなっていた。
ガガガガガガガッ!!
金属音が連続する。
影が迎撃に伸びる。だが――
「遅いです」
白光を纏った剣が、影ごと断ち切った。
ザシュッ!!
黒が霧散する。
「なに‥‥?」
男の表情に、初めて明確な動揺が走る。
(聖剣の力よ)
エクスカリバーが冷たく告げる。
(魔族の影なんて、本来相性最悪なの)
アーサーが男の懐へ潜り込む。
距離、ゼロ。
「これで――」
男が舌打ちした。
「まだだ」
影が爆発するように膨張した。
黒い奔流が、至近距離からアーサーごと飲み込もうとする。
「アーサー!!」
蓮が叫ぶ。
だがアーサーは止まらない。
目が、ぶれない。
(行きなさい)
エクスカリバーが静かに言う。
(アンタなら届く)
アーサーが低く息を吐く。
「はい」
剣が、振り下ろされた。
「アルトリア流剣術ーー白閃!!」
白い閃光が、敵を斬り抜けた。




