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同期

アーサーが踏み込んだ瞬間だった。


「っ――!?」

蓮の身体が、唐突に軋んだ。

心臓を直接握り潰されるような圧迫感。

肺が潰れ、まともに息が吸えない。


「がっ‥‥‥!?」

膝が落ちる。


「マスター!?」

マーリンが振り返る。


蓮は胸元を押さえたまま、荒く息を吐く。


「な、んだよ‥‥これ‥‥‥」

視界の端に、ウィンドウが浮かぶ。

***************

【同期】進行中

対象:アーサー

負荷分散率:20%

***************


「はぁ!?聞いてねぇぞこんなの!!」


その瞬間。

頭の中に、直接声が響いた。


(うるさいわね)


「っ!?」

蓮の肩が跳ねる。

耳じゃない。頭の中に、直接。


「なんでお前が頭の中にいんだよ!?」


(同期してるんだから当然でしょ)

即答だった。


(アンタの魔力と生命力を少し借りて、この子の出力を安定させてるの)


「少しってレベルじゃねぇんだよ!!」


(死ぬほどじゃないって言ったでしょ)


「そのラインが信用できねぇんだよ!!」


マーリンが小さく目を細める。

「‥‥リンクしたんだね」


「そんな軽い説明で済ませる話かこれ!?」


(文句が多いわね。黙って魔力貸してればいいのよ)


「扱い雑っ!!」


「マスター!」

アーサーが振り返る。


「こっちはいい!!さっさと倒せ!!」


一瞬だけ、アーサーの目が揺れた。

だが、すぐに前を向く。

「了解しました」


マーリンが小さく吹き出す。

「息ぴったりだね」


「全然嬉しくねぇよ!!」


その間にも、アーサーの周囲では風圧が増していく。

白い光が、剣身を走る。

足元の砂埃がふわりと浮いた。


男が、静かに目を細める。

「気配が変わったな」


アーサーは剣を正面に構える。

無駄な力が抜けている。

呼吸すら、剣と同調しているようだった。


(いい感じ)

エクスカリバーが満足げに言う。


(ようやく少しは見られる形になったわ)


蓮が荒い呼吸のまま顔を上げる。


「おい‥‥俺、三分これ耐えるのか?」


(文句あるなら切るけど?)


「それは困る!!」


男はそのやり取りを静かに見ていたが、やがて剣を持ち直した。


「なるほど」

低い声。


「面白い術式だ」

影が、再び地面を這う。

黒が足元から滲み出し、空間を侵食していく。


「ならば、その繋がりごと断てばいい」


ズズッ、と。影が一斉に広がった。


「来るよ」

マーリンが短く告げる。


アーサーは踏み込む。

ドンッ!!


地面が砕けた。

ただの踏み込み。それだけで石畳に亀裂が走る。


「っ――!?」


男の目が、初めて大きく見開かれた。

速い。さっきまでとは次元が違う。


「そこです」

アーサーが消える。

キィィィン!!!

激突。

男の剣が、辛うじて受け止める。

だが完全には止めきれない。

ギリギリと火花が散る。


「馬鹿な‥‥」

押されている。

男の足が、地面を滑った。

蓮が目を見開く。


「押してる‥‥!?」


(当然)

エクスカリバーが鼻を鳴らす。


(今だけは、少しだけ本物に近いもの)


アーサーがさらに踏み込む。

「はあああああッ!!」


一撃。二撃。三撃。

今まで見えていたはずの軌道が、男にとっても追いづらくなっていた。

ガガガガガガガッ!!

金属音が連続する。

影が迎撃に伸びる。だが――


「遅いです」


白光を纏った剣が、影ごと断ち切った。

ザシュッ!!

黒が霧散する。


「なに‥‥?」

男の表情に、初めて明確な動揺が走る。


(聖剣の力よ)

エクスカリバーが冷たく告げる。


(魔族の影なんて、本来相性最悪なの)


アーサーが男の懐へ潜り込む。

距離、ゼロ。


「これで――」


男が舌打ちした。

「まだだ」

影が爆発するように膨張した。

黒い奔流が、至近距離からアーサーごと飲み込もうとする。


「アーサー!!」

蓮が叫ぶ。


だがアーサーは止まらない。

目が、ぶれない。


(行きなさい)


エクスカリバーが静かに言う。


(アンタなら届く)


アーサーが低く息を吐く。


「はい」


剣が、振り下ろされた。


「アルトリア流剣術ーー白閃はくせん!!」


白い閃光が、敵を斬り抜けた。



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