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リゼ

「さぁーー続いての試合ィィ!」


サルサの軽快な声が、闘技場に響き渡る。


「先ほどはとんでもない無名の剣士が現れましたがーー!!」


「今度はどうだァ!?」


観客の熱が、まだ冷めきらない中ーー


「登場するのはァ!!」


ドォンッ!!

重い音と共に、闘技場の門が開いた。


「鎖鎌のノブゥゥゥゥゥ!!!」


ざわっーー

空気が、わずかに変わる。


現れたのはーー

細身の男。

だが、その手には異様な武器。


鎖。

そして、その先に繋がれた鎌。


ジャラ‥‥‥ジャラ‥‥‥

地面を擦る、不気味な音。


「見てくれこの武器!!」


「間合いを自在に操るトリッキーな戦法!!」


「一度捕まれば逃げ場なし!!」


ノブが、ゆっくりと首を傾げる。


「ヒヒッ‥‥‥‥」


歪んだ笑み。

舌が、わずかに覗く。


「バラバラにしてやるよォ‥‥‥」


観客席の一部が引く。


「うわ‥‥なんだあいつ」

「気味悪い‥‥‥‥」


だがーー


「対するはァ!!」

サルサの声が弾む。


「二刀流の女戦士ーー双刀のリゼェェェェェ!!」


歓声が上がる。


軽装。

無駄のない体。

両手には、逆手に構えたダガー。


コツ、コツ、と軽い足取りで前に出る。


「へぇ‥‥」

ノブが目を細める。


「いいねぇ‥‥滾ってきた‥‥‥」


「すぐ壊れそうでよォ‥‥‥‥!!」


鎖が鳴る。

対してリゼはーー


「‥‥‥‥」


何も言わない。

ただ、じっと相手を見ている。

その目はーー冷たい。


「ーー試合、開始ィィィィィ!!」


次の瞬間。


ジャラッ!!

鎖が弾けた。


「ヒャハッ!!」

ノブの鎖鎌が、蛇のように走る。


一直線ではない。

うねりながら、死角へ回り込む軌道。


(来る)




控え通路ーー


アーサーは、静かにその戦いを見ていた。


歓声は遠い。

だが、戦いの気配は鮮明に伝わる。


(あの軌道‥‥‥‥)

目を細める。


(読みにくい‥‥‥)




鎖が、リゼの背後へ回り込む。


ガシィッ!!


「捕まえたァ!!」


鎌が振り下ろされる。


ーーだが。


スッ‥‥‥‥


「なっ!?」


消えた。


いやーー違う。


一歩。

たった一歩で、間合いから消えている。


「チッ‥‥‥‥!」

ノブが舌打ちする。


(速ぇな‥‥‥!)


再び鎖を振るう。


横。

縦。

背後。


全方向からの連撃。


ジャラララララッ!!


だがーー

すべて、空を切る。


「はっ‥‥‥ははっ‥‥‥!」

ノブの笑みが歪む。


「いいねぇ!!逃げるのが上手いじゃねぇか!!」


だがその時ーー


「もういい?」

退屈そうに、リゼが呟いた。


「え?」

一瞬の隙。


その瞬間ーー

消えた。


「ーーは?」

視界から、完全に消失。


背後。


「遅い」


ゾクッーー

ノブの背筋に悪寒が走る。

振り向くより早くーー


ズバッ!!

ダガーが、一閃。


血が舞う。


「がっ‥‥‥!?」

体勢が崩れる。

だが終わらない。


トンッーー

軽い踏み込み。


次の瞬間。

ズバババババッ!!


見えない。

連撃。

斬撃。

音だけが、遅れて響く。


「ぐっ‥‥‥‥あ‥‥‥!」

ノブの膝が落ちる。

鎖が、力なく地面に落ちた。


ジャラ‥‥‥

静寂。

リゼは、ゆっくりと距離を取る。

血を払うように、ダガーを振る。


「‥‥‥‥‥‥」


そして一言。


「こんなもんか」


ドサッーー

ノブが完全に崩れ落ちた。



「ーー勝者ぁァァァァァ!!リゼェェェェ!!」


一瞬の静寂。

そしてーー


「おおおおおおおおおおおおおおッ!!」

歓声が爆発する。


「速すぎるゥゥゥゥゥ!!」

「見えなかったぞ今の!!」

「なんだあいつ‥‥‥!」



「‥‥‥‥おいおい」

蓮が目を細める。


「なんだ今のスピード!?

 ‥‥見えなかったぞ」


「アーサーとは、全然タイプが違うな‥‥‥」


マーリンも静かに呟く。


「やばいかも」


「あの人‥‥‥アーサーと同じ匂いがする」




控え通路。


「‥‥‥‥‥‥」


アーサーは、黙って見ていた。


(速い‥‥‥‥)


(それにーー)


拳を、わずかに握る。


(迷いがない)


あの動き。

あの踏み込み。


(戦い慣れてる‥‥‥)


静かに、息を吐く。


(強い)



歓声の中ーー

リゼは、観客にも、倒れた相手にも興味を示さない。


ただ一度だけ。

視線を動かした。


ーー控え通路。

アーサーのいる方向へ。


「‥‥‥‥‥‥」


一瞬だけ、目が合う。


そしてーー

ふっと、口元が歪んだ。


その目は、言っていた。

ーー「次は、アンタだ」



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