騒がしい訪問者
バァン!!
勢いよく扉が開かれた。
「エルメス聞いたぞー!!」
店中に響き渡る大声。その音に、セシルが肩を跳ねさせる。
マーリンもアイスを咥えたまま入口を見る。
そして。
「ルイ!?」
エルメスが思わず立ち上がった。
入口に立っていたのは、一人の青年だった。
長い耳。銀色の短髪。
綺麗に整えているわけではなく、寝癖のようにあちこち跳ねている。
年齢だけ見れば十七、十八歳ほど。
活発そうな少年にも見える。
だが、その瞳だけは妙に生き生きとしていた。
好奇心。興味。探究心。
そんな感情をそのまま詰め込んだような目だった。
「久しぶりだね!」
青年――ルイ・ビトンは満面の笑みを浮かべながら店へ入ってくる。
そしてーー
「どこ!?」
いきなり周囲を見回した。
「どこどこ!?」
「弟子!」
「エルメスの弟子どこ!?」
全く落ち着きがない。
エルメスは額を押さえた。
「来て早々それかい……」
「だって気になるじゃん!」
即答だった。
「ハイクラス奴隷商人のエルメスが弟子を取ったんだよ!?」
「気にならない方がおかしいって!」
「普通はまず手紙くらい送るんだけどね」
「知ってる!」
「でも待てなかった!」
何も知らない蓮は呆然としていた。
何だこの人。嵐みたいだ。
そんな感想しか出てこない。
「お久しぶりです、ルイ様」
セシルが小さく頭を下げる。
「あっ!」
ルイが振り返った。
「セシルちゃん!」
ぱっと顔が明るくなる。
「久しぶり!」
「元気だった!?」
「はい」
「ちゃんと寝てる!?」
「寝てます」
「ご飯は!?」
「食べてます」
「働きすぎてない!?」
セシルは少しだけ視線を逸らした。
「……働いてます」
「それは知ってる!」
ルイが即座にツッコむ。
トリスタンが思わず吹き出した。
「なんじゃこいつ」
エルメスが疲れた顔で答える。
「これがルイだよ」
その時。
ルイの視線が動く。
今度はアーサーで止まった。
数秒。じっと見つめる。
「あっ!!」
嫌な予感しかしない声だった。
「君!」
ルイがアーサーを指差した。
「剣闘大会の優勝者だよね!?」
「え?」
突然話を振られたアーサーが目を瞬かせる。
「確か聖剣にも選ばれた子!」
「そうですが……」
「本物!?」
「本物です」
「見せて!」
「何をですか?」
「聖剣だよ!聖剣!!」
アーサーが困ったように腰の剣を見る。
その瞬間だった。
「何この子供」
呆れたような女性の声が響いた。
店内が静まり返る。
ルイが固まる。
「剣がしゃべった!?」
「そりゃしゃべるわよ」
腰の剣――エクスカリバーが答えた。
「聖剣なんだから」
「本当にしゃべった!!」
ルイの目が輝く。興奮が倍増していた。
「何よっ!?」
エクスカリバーが若干引いていた。
「何なのこの反応」
「すごいっ!」
「初めて見た!」
「友達になろうよ!」
「意味分かんないわよ!」
エクスカリバーが押されていた。
トリスタンが肩を震わせる。
酒を飲みながら笑いを堪えていた。
蓮も少し呆れている。
その横でアーサーが小さく呟いた。
「何だか子供みたいな方ですね」
「子供そのものじゃない」
エクスカリバーも同意する。
するとエルメスが苦笑した。
「こう見えても彼は僕よりだいぶ年上だよ」
その場が静まり返った。
「……は?」
蓮が固まる。
「え?」
アーサーも目を丸くした。
「嘘じゃろ」
トリスタンまで驚いている。
ルイ本人だけが平然としていた。
「本当だよ?」
アーサーが思わずルイを見た。
「……さすがエルフですね」
妙に納得した。
「エルフって便利よねぇ」
エクスカリバーがぼやく。
ルイは楽しそうに笑っていた。
その時だった。
ふと。
ルイの視線が店の奥で止まる。
ソファへ座りながらアイスを食べているマーリンの姿があった。
先ほどまでの軽さが一瞬だけ消える。
数秒。じっと見つめる。
そしてーー
ゆっくりと指を差した。
「君は――」
マーリンがアイスを咥えたまま首を傾げる。
「?」
次の瞬間。
「エルフだ!!!」
店中に大声が響き渡った。
「うわっ!?」
マーリンの肩がびくりと跳ねる。
彼は目を輝かせていた。
ルイの声が、やけに近く感じる。
「本物だ!」
「同族だ!!」
「いつぶりだろう!?」
「何でこんな所にいるの!?」
エルメスが額を押さえる。
バーキンは静かに目を閉じた。
「……始まったな」
小さく呟いた。




