060 東照凱人44
「さすがに暗いな」
松明をつけて穴の中を歩きながら俺はそう呟く。
洞穴の中はしかたのないことだが、地上からの光がしっかりとははいってこなく、さらには思ったよりも深くて闇は増していくばかりだ。
ヤイアはダガーなども使えるが、弓を得意としている。松明は俺が持つのは自然な流れなわけだ。
「たぶんこれ土竜ですね……」
「まあ、こんだけ深ければな」
幸いだったのは横幅縦幅ともに思っていたよりも広いことにある。これなら自由に動きやすい――が、これを掘るのが一匹だった場合は、それにふさわしいサイズとなるわけで、それと遭遇はとてもじゃないがしたくないという気持ちもあった。
「もうこのさい土竜の穴でも、奥に花が咲いていてくれるくらいあってもいいだろうに」
「さすがに数日で咲くほどの繁殖力はないですよ」
グダグダいいながら進んでいくと、穴が左右に分かれている。
「これは土竜の穴と洞穴がつながったのか。それとも……」
警戒しながら左の道に入る。どっちにいっても、最終的には見つからなければ反対側にいくという考えで即決した。
「不気味なほどになにもないのがよくわかんないな。なんのために掘られた穴なんだ。寝床なら毛ぐらい落ちててもいいだろ」
「土竜の体毛って個体差あるらしいですから」
「ハゲてるやつが掘ったってことか……なんか、そう考えると愛着沸くな。同情的な何かで」
「僕はわきませんが」
道の奥に行くとまた道がある。今度は上と下か。
その時――
「……何だこの音?」
ドドドというような地響きのような音が聞こえる。穴の中で反響しているせいか、どっちからの音かがよくわからないが、数秒後に目の前の穴からのものだと判明する。
「戻れ! なんかくるぞ!」
「は、はい!!」
俺たちは元の道を走って戻っていく、途中一瞬振り返った時に、あの穴の正体と音の主が判明した。
「最悪だ。『ギルドアント』の巣とつながっちまってたみたいだ。あの穴」
ギルドアント――現代でいえば一番近いのはぐんたいアリだ。他の魔物と比べればサイズは小さいもののその数が計り知れず、さらに統率のとれた働きアリが群れで襲ってくる。
ただ、かなり僻地にしか生息していないと聞いたことがあり、実物を見たのははじめてだ。
「まさか乾燥地帯に住んでるとは予想外でしたよ! あ、でも湿地帯が隣だから……もしかして、水が近くて乾燥した住みやすい場所っていう条件が揃ってるんですかね」
「考察してる場合じゃないけど、多分そうなんじゃないか」
そこにさらに穴掘りをする何かがいて、地面内の家が集合住宅にへんかしてしまったってわけか。なんという不運。なんという不幸。
最初の分かれ道まで戻ってきて、さらに地上に出る道ではなく右の道に飛び込んだ。
「はぁ……はぁ……通過してくれると嬉しいんだが」
手に持ってた松明は入り口のほうに投げておいた。そっちに言ってる途中で落としたとか本能で思ってくれると嬉しいんだが。
「いったみたいです……ふぅ……」
おれたちふたりはほっとした。
くそっ、あのネクロマンサー覚えてろよ。思ってたよりも時間かかりそうだし、危険度高いじゃねえか。




