038 東照凱人26
少し時がまた巻き戻ってしまった。
そんな気がしてくるが、俺は気にしないでおく。
ゴブリンやオーガの軍団を全員倒した俺は、指揮している奴の場所と拠点の場所を吐かせてた。
方法は単純明快に、自白剤に近い毒だ。
この聖剣の効果は毒を生成することとは前にも言ったが、毒に対する知識がなくとも、大雑把に俺が思ったことに近い毒を剣が勝手に作ってくれるわけだ。
まあ、明らかにやばい毒とかについては俺自身が作り出す気がないんだがな。
「帰ったか……結果はどうだ……人族!?」
「よう」
俺は無表情を決め込む。
「な、なぜ人族がここに! どうやって知った!?」
「お前の奴隷様の洗脳を毒で上書きして吐かせた」
「オレの魔法が……くそっ! だが、オレに近づいてきたのは間違いだったな! オレの魔法は洗脳……そしてお前はすでに射程内だ!」
そう言うと。
目の前で。
スキだらけで。
呪文をブツブツと唱えだした馬鹿がいた。
「――!」
そして唱え終わり発動しようとしたのか目を開いた瞬間、その顔面に蹴りを入れてやった。
「がぁっ!?」
「スキだらけなんだよ。タイマンはったことねえのかお前」
「馬鹿な……ゴブリンやオーガはこれで洗脳できた。人族などその程度の知能しか持っていないはずじゃ!」
典型的に人族を舐め腐ってるタイプの魔族ってわけか。
そりゃ、人族とか獣人を攻めこむ魔族に加担してそうなことだよ。実際にどうなのかはしらねえけど。
「よーし、それじゃあお前の選択肢をやろう」
「こ、こっちにくるな……なんだ、その禍々しい剣は!?」
「さっきからずっと出しっぱなしだっただろうが……こいつで刺されて死ぬか、まだ生き残れる可能性がある獣人族に引き渡されるかのどっちかだ」
俺は剣を露骨に見せながら近づいていく。
そして洞窟のような拠点の壁に追い詰めると、目の前の角の生えた魔族は泡を吹いて気絶してしまう。
「……こんなんで戦争挑もうとしてるってのも、ある意味すごい度胸だな」
俺は気絶した魔族を肩に担いで、拠点から出て行くことにしたんだが、出口で他の魔族に出会う。
「何かようか?」
男女の魔族っぽい人間だ――ていうかこの見た目はもしかして。
「魔族を代表してお礼を言わせてもらいたい。先程までそいつに洗脳されて、獣人族や人族に多大な迷惑をかけてしまった」
「まあ気にすんな。一応魔族側の状況も理解はしてるからな。それより、あんたら――ミイって娘がいたりしないか?」
その名前を出すと、わかりやすく驚きの反応を見せる。
「ミ、ミイは私たちの娘です」
「近くの獣人族領にある、寂れた灯台にいるからいってやんな……あ、いやでも、魔族だと俺も一緒に行かないと厄介なことになるか……?」
「それについては大丈夫です。我々は魔族に近くはあれど魔族ではない南にすむ希少種族のひとつです」
「そうか。まあ、なら早く行ってやってくれや」
「は、はい! 本当にありがとうございました」
思わぬところで、深く礼をされてしまった。
だが、経験のないその気持ちは心地よくあった。




