037 姉ヶ崎莉乃03
「……あれだけで、終わりなんてことあるのかしら?」
気持ちを落ち着かせた後、少し考えてみたけど私のところにきた数人を除いた相手は東照君が戦っているのよね。
増援がきても押さえ込めているのかしら。
「姉ヶ崎さん、大丈夫?」
「阿多野さん。私は大丈夫よ。あなたは?」
「一応大丈夫だよ。精神的には参ってるけど」
「やっぱり……?」
「やっぱり人間に近い存在なんだなって思っちゃって」
でも、生きてるなら阿多野さんも打ち勝った――もしくは気持ちを抑えこんで対処したということよね。
多分、この世界では重要になることだからお互い気をつけていきたいわ。
「そうね。それでもやらなきゃやられるのよ。本当にゲームみたいな世界」
「本当だね……これからどうしよう? 東照君のほうにいったほうがいいのか、ここらへんで村の警戒したほうがいいのか判断しないと駄目だよね」
「そうね……」
だけど、何かしらこの言い知れない違和感は……いくら東照君といえども、あんな数人だけしか抜かれないなんてことあるのかしら。
もしかして、主力と別働隊がいて、別働隊にもそれなりの人数が回されているとかないかしら――考えすぎかしらね。
***
だけど、そんな私の嫌な予感は数十分後に当ってしまうことになったわ。
「――っ!? 後ろからきてる。結構な数!」
阿多野さんは音に集中しながらそう言う。
つまりは、挟撃とまではいかなくとも、分散での行動。
どこかで、傭兵がいることがバレてたか村の抵抗に嫌気が差してやったかのどちらかだけど、今はそのどちらなのかは考えるほど私は優秀じゃない。
それならば、やることはひとつよね。
「行くわ!」
「うん、守らないと!」
後ろから現れたのはゴブリンと――ローブをきてるゴブリンかしら?
警戒する必要はありそうね。
その集団とぶつかる時、阿多野さんが先行して相手を翻弄する。
そして、私は攻撃してきたゴブリンを力任せに吹き飛ばしてたのだけれど――ローブのゴブリンの正体がわかることがおきる。
「――!」
「? ……阿多野さん伏せて!」
「えっ!? なに!?」
私はとっさに阿多野さんの前で、腕を交差させて盾にする。
そして、ローブのゴブリンが何かを言い終えた瞬間に、火の球が飛んできた。
私の甲殻を貫いたり溶かすほどの威力はなかったけど、阿多野さんにあたってたら危なかったわね。
ただ、魔法を使うってことは――シャーマン。ゴブリンシャーマンとでも言うのかしら。
そういうことよね。
「阿多野さん、あのローブ頼める?」
「わかった!」
私の速度よりも阿多野さんが短期決戦したほうが、恐らくいいはず。
私は他のゴブリン達を引き受けて、阿多野さんにゴブリンシャーマンの相手を任せた。
戦闘は終了し、なんとか村に敵を入れること無く事は終わった。
「はぁ……はぁ……さすがに疲れたわ」
「私も疲れたかな」
体力もなくなって、地面に膝をついてしまった私たち。
そして、足音が更に聞こえて、私たちの前までやってきた。
「おつかれさん」
「東照君! 無事でよかった!」
「それは?」
やってきた東照君は肩に角の生えた人間を担いでいたわ。
「今回の主犯だ……大規模な転移で人族や獣人に攻めこむための魔法の試しのために、今回のことをしてたらしい」
「転移魔法……」
「ああ。まあ、主犯格をこんな感じで捕まえたし、獣人の方に引き渡して依頼終了だ」
「そう……よかったわ」
***
その数日後の夜。
なんとなく、宿から夜空を眺めていた私の隣に東照君はやってきた。
「どうしたのよ?」
「いや……この前はなんつうか。お疲れっつうか、巻き込んで悪かった」
「何のことよ」
「魔族の相手をさせることになったことだよ」
ひとりで全部終わらそうとしてたのかしらね、この男は。
「別にいいのよ。この世界で生きていくなら仕方のないことだと、私は思ってる」
「否定はしないが、それでもとりあえず謝っておきたかったんだよ……なんとなくな」
「そう……」
この世界での人間は人族・魔族・獣人族のことをさしている。
つまり、今後もおそらく人間と戦っていくことに私たちはなるんでしょうね。
それでも、私はもう割り切った。割りきったことにした。
だから、
「今度からは、もう少しちゃんと作戦会議とかしましょう。私たちのできることも取り入れて」
「……了解だ」
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします




