013 阿多野愛菜05
さて、私の話はまだ続きます。
それもそのはず、私はこれから2ヶ月という時間でこの世界で、最低限生きるすべを身につけなければいけないからね。
私は藤原さんの家へと戻って、東照君と会って決まったことを報告をします。
「ということになりました」
「2ヶ月だな……よーし、任せろ」
「あの……」
「ん?」
「よろしくお願いします」
「おう、任せとけ」
藤原さんは笑顔でそう言ってくれました。
始めるのは明日からということになり、今日はそのまま夜までこの世界のことを聞きました。東照君のことを聞いても良かったけど、なんとなく本人から聞ければいいなと思ったから。
「そんなことがあったの……へぇ~」
「へぇ~ってお前なぁ!」
「あたしがいない時にそういうのいつもあんたは決めるでしょ」
夜になると奥さんが帰ってきたみたいで、私は居ていいのかなってすごく思います。
「あたしはカナミ・ルロイド……じゃなくて、カナミ・フジワラかな。今は」
「こいつは怖いからな。怒らせちゃいけないぃっ!?」
「あんたが余計なことしなければあたしはなにもしないっての!」
それにしてもこの世界はファンタジー的な世界です。
今まで必死だったのか、無意識で意識的に気にしてなかったのかわからないけど、夜も部屋が明るいのは蝋燭とか、あれは、えっと――そう、カンテラだったかな。
とにかく機械っていうものは存在してないんだね。
「ったく。さあ、できたから食べようか」
「いってて……」
「え? あの……いいんですか?」
「うちにしばらくはいるんでしょ? それなら、むしろ食べていってもらわないと、それに事情も事情だしね。こっちの世界に慣れるためにはご飯も食べなきゃ」
「そうだそうだ。それに、なんだかんだ。結婚したのは嬉しいが、旅してた頃と比べると寂しさもたまにあったから多い分には構わん」
なんだかんだ、ラブラブなんだなとこの会話を聞いて思いますが、ちょっと私には甘すぎるかな。
それに人と一緒にご飯を食べるのは何時ぶりだろう――お城では一応食べてたけど、なんていうか……温かみはこんなふうに感じられなかったな。
「あの寝てる子はどんな様子なの?」
「しばらくとは言ったけど、明日には起きるだろ」
「しかし、厄介ね。あたしらの時代なら勇者も初対面だったから、派閥ができたけど。今回は集団で知り合いが多いんでしょ?」
「そうだな。まあ、なんとかなるだろ……お前、相変わらず米炊くの下手だな」
「そもそも、ライスなんてこの地方じゃ殆ど食べられてないのよ。あんたの世界だと主食だったって言われても、直火で使い慣れない釜みるのは難しいっての」
「……そういえば、お米ですね」
「おう、俺が好きだったから見つけた時は嬉しかったぜ」
藤原さんは誇らしげにそう言います。
その後は談笑しながら晩ごはんを終えて、片付けは私も手伝って――。
「この部屋使っていいよ。元々この辺にあった建物増築して作った診療所だから、部屋少し多いの」
「ありがとうございます」
「明日から大変だから、ゆっくり休みな。おやすみなさい」
「はい……おやすみなさい」
最後には部屋まで貸してくれる――いいのかな、本当に。
そんな風に思いながら、疲れが溜まっていたのか私はすぐに眠りにつきました。
「阿多野さん……阿多野さん」
誰だろう。私は体を揺すられて目を覚ましました。
「おはよう、ぐっすり眠れたかしら?」
「……お、おはよう。大丈夫なの? 姉ヶ崎さん」
「えぇ、おかげさまでね。ありがとう」
「私は何もしてないよ」
「朝ごはんだから起こしてきてって頼まれてね。行きましょう」
「う、うん」
良かった、どうやら姉ヶ崎さんも元気になったみたい。
「おはよう」
「おはようございます……あれ?」
「あいつはいいのよ、朝いに弱いの」
「そうなんですか」
「そうそう、それに仕事だって切羽詰まってるわけでもないしね」
起きていくと、カナミさんがそう言いながら朝食を作ってました。
藤原さん――だともうわかりにくいな、水面さんでいっか。
水面さんはどうやらまだ寝ているようです。この世界で時計は見たことないし感覚なのかな。
「まあ、やることは決まってるし。朝はあたしがいろいろ教えてあげるよ」
「え? ……あの、カナミさんは昨日はお仕事だったんですよね?」
「そうだよ。昨日で終わったけどね。正直動いてないと落ち着かなくて」
カナミさんの作った朝食を済ますと――私も料理、いつか覚えようかな。元々、お菓子作りとかはしてたし。
とにかく、これからのための訓練が始まります――が、その直前に姉ヶ崎さんと話もしました。
「阿多野さんひどいじゃない。私が寝ている間にそんな話になっているなんて」
「ごめんね……でも、私は行きたい」
「ふふっ、もちろん私も付き合うわよ」
「えっ? でも、危ないことも多分」
「――この世界に来た時点で、私からすれば危ないことだらけよ。今更……それに、今の私はあなたしか、しっかりと信頼できる人間はいないから」
「……うん、わかった」
姉ヶ崎さんは強いな。心と体の強さは比例しないんじゃないかなと、失礼ながらに思ってしまいました。




