012 阿多野愛菜04
「い、行っちゃった」
「そりゃ、行くだろう。とりあえず中入りな」
藤原さんはそういってくれるけど。
森にいった後は東照君がこの世界で、一度勇者を経験してるという事実など色んな話がありました。
けど、私として私のことを話すならば次に辿り着く先はここ、東照君と別れた時。
藤原さんは私にそういってくます。今はお言葉に甘えて中に入ります。
「それじゃあ、まあ……そうだな」
「はい……」
「あんなことを言ったし、しばらくうちで過ごしてくれて構わない……が」
「これからどうするかですよね」
藤原さんはそれを聞くと、一瞬驚いたような顔になりました。
「凱人といいここ数年の若い子は、落ち着いてるというか現実見てるな。まあ、そうだね。この世界で生きていくすべを身に付ける必要がある」
「戻る方法はない……ですよね」
「そうだ……って、まさか知らなかったのか? いや、あの王ならあり得るか。俺らの時も質問した奴がいたからしれただけだし」
「東照君は一度戻ってるのはなんでかって、わかるんですか?」
「ん? 多分だけど大きすぎる魔力がぶつかりあって、イレギュラーが起きたって感じだったな。俺もその場にはいたが正直生きてると思ってなかった」
「そうですか」
私は今どんな顔してるんだろう――暗い顔かな。
「まあ、この街でとか他の街で暮らすってのが、安全だとは思うぜ。そのためのすべくらいなら俺でも教えてやれるし」
藤原さんはとても優しい、そうれが私から今持ってる印象。
「あの、東照君ってどこにいったんですか」
「どう考えてもスラム街だな。あのへんには盗賊ギルド……といっても犯罪常習とかそういうんじゃなくて、情報屋だな。そこに挨拶でもしにいったんだろ」
「そう……ですか」
「凱人のこと気になるか?」
「まあ、ここまで連れて来てくれたのは東照君ですし。それになんでしょう、勝手な想像ですけどあのままじゃいけないし、私もこのままじゃいけないと思ってて」
「ほう……」
「いや、何が行けないのかはよくわからなくて、でもその力をもってこの世界にいるんですし――何かしないと」
私は何言ってるんだろう。何かを伝えようとしてるんだ。でも、伝えても意味が無いないってわかってて、それでも言いたくて――。
「阿多野ちゃん!」
「は、はい!」
「阿多野ちゃんは今何がしたい?」
「えっ? 何が?」
「元の世界に帰りたいとか、お腹がすいたから飯が食べたいとかいろいろあるでしょ。なんでもいいのよ、なんかないの?」
突然なんだろう、でも何がしたい――私がしたいことはなんだろう。
「ゆっくりでいいから言ってごらん」
「え~と、その、私は――」
私は何がしたいんだろう――私は今まで何をしてたんだろう。
この世界に突然連れてこられて、周りのみんながおかしいって思って、城から逃げ出して、姉ヶ崎さんも一緒で、最後は東照君に助けられて、今は藤原さんにお世話になって――私、こっちにきてから何かしたのかな。
「あ、あれ……? おかしいかな?」
「人間の無意識なんてものは俺にもわからないけどさ。阿多野ちゃんは必死でやってたんだと思うよ。お城の方ではどうだったかな? 俺の想像ではなんか、こう。周りの人に心配をかけないために頑張ってたとかそういうイメージだ」
周りの人に心配かけないために――そうかもしれない。
現実でも私は委員長になってそれでみんなから頼られて、でも頼られなかった私は自分から話しかけるような相手はいなくて。
「あんまり、勧めたくはないけど。俺の想像上ですすめたいことがある」
「え?」
「凱人と一緒にこの世界を回ってみるといい」
「え? でも、東照君は」
「だから、あいつと旅ができるようになるくらいにまでは、俺は稽古をつけてやるってことさ。これでもあいつと旅してたんだぜ」
「でも、なんで」
「君は頼られるタイプだ。俺の高校時代からよくいる委員長タイプ。だけど、頼る相手がいない……でも凱人はどんな理由であれ頼れる相手だったろ」
「それは……」
「だから、とりあえず、あいつとたびに出てみろ……荒療治だけどな」
「は、はぁ……」
藤原さんの言ってることは理解できない――理解できないのに納得してしまった。
「ということで行って来い」
「え? え?」
「一緒に旅に連れて行けと。こっからまっすぐいけばスラム街だ。その間のどっかで会えるはずだから!」
私は藤原さんに押し出されてしまった。
だからゆっくりと言われた方向へと歩き出した。
私は今まで何も自分からしてこなかったのかな。
自分からは何かしてきたかもしれないけど、自分で解決しようとしてたな。
それでどうにかなってたから。
……そうだ、私は東照君には一度も頼られたことなかったかも。
じゃあ、なんで東照君は頼れると思ったんだろう。
それは――わかんないな。
でも、知りたいかも。そう、知りたい。
そうかもしれない、私は藤原さんが言うとおりに頑張ってたかも。
言ってたこととは違うかもしれないけど、私は東照君に頼られる人間になろう。
そのために東照君のことを知ろう。
そのために言われたとおりに旅をしよう。
私は自分でやろうと思ったことじゃなくて言われたことをやってみよう。
私の足は気づけば走りだしていた。
そして見つけた――。
「東照君! はぁ……はぁ……」
「……阿多野」
見つけた。
「これからどうするの?」
「……少し仕事してから獣人族の国へ向かう予定だ」
見つけたのかな。
「あのさ……私たちも一緒に行っていいかな」
「――何故?」
間違えて私たちって言っちゃった。姉ヶ崎さんに後で確認しないとだね。
「ただ……今はこの世界を知りたいから」
嘘、本当は今はあなたが知りたいから。
「…………2ヶ月だ」
「え?」
予想外だった。
「2ヶ月の間にせめて小さい魔物には対処できるようにしておけ。それが条件だ」
「……わかった」
東照君は優しいんだよね。
「俺はこの街のどこかしかにはいる。最悪水面に手紙でも渡しておいてくれれば届けるすべをあいつは知っている」
「わかった……2ヶ月後にまた」
「あぁ……まぁ楽しみにはしないでおく」
そしてひねくれた答えを返してくるんだ。




