第7話 聖女の弟(生意気な王子)に認めてもらえ
門番隊との一件からしばらく経ち、ソウタとアリシアは正式に城の応接間へと通されていた。理由は単純、アリシアの弟が「姉上の恋人とやらを品定めしてやる」と言い出したからだ。
「ふん、お前が姉上の……」
現れたのは、十四、五歳ほどの少年。豪華な衣装を身にまとい、腕を組んで露骨に見下すような視線を向けてくる。王子リオンだった。
「底辺配信者上がりだと聞いたぞ。姉上には、もっとふさわしい人間がいるはずだ」
「い、いきなり手厳しいな……」
初対面から全否定され、ソウタが冷や汗をかいたその瞬間、視界の端に見覚えのある赤い光が明滅した。
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スキル発動:【視聴者ガチャ】
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▼当選者抽選中……
進捗:██████████ 100%
「このタイミングでかよ!! せめて印象良くしてから引かせてくれ!!」
絞り込みの候補文字列が高速で明滅し、ピタリと静止する。
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当選者確定
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ハンネ :底辺時代からの生き証人
称号 :唯一の素性を知る古参
発動まで:00:00:05
危険度 :★★★☆☆(羞恥ダメージ中)
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「お前、この状況で何言ってくるつもりだよ……」
コメント欄に、懐かしむような一言が流れ込んでくる。
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[底辺時代からの生き証人]:あの頃を思えばこんなの余裕だろ
[底辺時代からの生き証人]:昔の十八番、まだ覚えてるよな?
[底辺時代からの生き証人]:あれで王子笑わせてこい
[解説おじさん]:昔のネタとはただ事ではないな
[名無しの視聴者]:急に古参の圧が強くて草
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続けて、指令確定のウィンドウが叩きつけられるように表示される。
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指令確定
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内容 :底辺配信時代の十八番ネタを披露し、
王子を笑わせること
制限時間:00:00:05以内
未達成の場合……対象は即座に消滅する
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「よりによってあれかよ……!」
ソウタの脳裏に蘇るのは、底辺時代、誰も見ていない配信の中で編み出した渾身の一発芸。今さら人前でやるには、あまりにも恥ずかしい代物だった。だが、拒否すれば消滅する。
「り、リオン殿下。少々お目汚しになりますが、失礼して」
ソウタは覚悟を決めると、変な動きをつけながら、聞いたこともない裏声で叫び始めた。
「我こそは底辺の王――誰も見ていなくても、俺だけは俺を推してるぜぇぇい!!」
意味不明な決めポーズと共に締めくくる。応接間に、痛いほどの沈黙が流れた。
「……は?」
リオンが呆気に取られた顔でソウタを見つめている。地獄のような静寂が続く中、やがて――リオンの肩が、小刻みに震え始めた。
「ふ……くくく……なんだ、それは……! 誰も見てないのに推す、だと……!?」
こらえきれなくなったのか、リオンはついに声を上げて笑い出した。
「傑作だ! 姉上、この者、意外と面白いではありませんか!」
隣で見ていたアリシアも、口元を押さえながら肩を震わせている。
ウィンドウが眩い光を放って躍る。
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指令達成
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底辺時代からの生き証人の願望:成就
対象の生存 :確認
特記事項 :王子リオンとの関係、大幅改善
NICE GACHA!!
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コメント欄が大盛り上がりを見せる。
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[底辺時代からの生き証人]:まだ覚えてて草、成長してないな
[解説おじさん]:黒歴史が外交カードになるとは
[名無しの視聴者]:王子様の笑顔初めて見た
[尊死予備軍]:アリシア様も笑ってて尊い
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涙を拭いながら息を整えたリオンが、ふいに真顔になって言った。
「……姉上を、頼んだぞ。お前が本当にふさわしいかは、これからじっくり見定めさせてもらうがな」
「は、はい……頑張ります……」
王子公認とまではいかなくとも、確かに一歩、認められた手応えがあった。過去の黒歴史ネタが、まさかこんな形で役に立つとは、ソウタ自身も思っていなかった。
……さて、明日の無茶振りは何だ? 第8話へ続く。
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底辺時代の遺産が思わぬところで火を吹く回でした。あの十八番、まだまだ出番がありそうです。
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