第5話:盗賊団のアジトに手土産持って挨拶に行け
聖女アリシアが正式に隣に座るようになってから数日。配信は妙に平和な日々が続いていた。
「今日はさすがに平和に終わりそうだな……」
呑気にそう呟いた瞬間、視界の端に見覚えのある赤い光が明滅した。
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スキル発動:【視聴者ガチャ】
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▼当選者抽選中……
進捗:██████████ 100%
「フラグ立てるんじゃなかった……!」
絞り込みの候補文字列が高速で明滅し、やがてピタリと静止する。
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当選者確定
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ハンネ :他配信者の信者
称号 :対抗煽り担当・隠れ最古参
発動まで:00:00:05
危険度 :★★★★☆(治安の悪さ注意)
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「お前、いつも他の配信者推してるやつじゃねえか! なんで俺のガチャに!?」
コメント欄には、いつもの煽り口調が流れ込んでくる。
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[他配信者の信者]:あっちの配信者ならこんなの秒で終わらせるけどな
[他配信者の信者]:西の森の盗賊団のアジトに、手土産持って堂々と挨拶しに行ってみろよ
[他配信者の信者]:どうせビビって逃げるんだろ?
[底辺時代からの生き証人]:信者珍しく無茶振りしてきたな
[解説おじさん]:西の盗賊団は物騒だが義理は通す一団だと聞く
[名無しの視聴者]:煽られてて草
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続けて、指令確定のウィンドウが叩きつけられるように表示される。
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指令確定
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内容 :西の森の盗賊団のアジトへ手土産を持参し、
堂々と挨拶に向かうこと
制限時間:00:00:05以内
未達成の場合……対象は即座に消滅する
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「盗賊のアジトに挨拶って、それもう普通に殺されるやつじゃん!!」
隣で聞いていたアリシアが「私もついていきます」と申し出るが、指令の性質上、単独行動でなければ発動条件を満たせない。ソウタは震えながらも、市場で買った酒瓶を一本抱えて森の奥へと向かった。
「あの煽り野郎……どうせビビるって言われたんだ、こっちが引くわけにいかねえだろ!!」
アジトの前に立つ強面の見張りに、ソウタは震える足を叱咤しながら、それでも笑顔を作って声を張り上げた。
「はじめまして! 近くに越してきたソウタと言います! ご挨拶に伺いました! これ、つまらないものですが!」
見張りたちが顔を見合わせる。物騒な空気の中、奥から出てきた頭目らしき大男が、酒瓶を一瞥してニヤリと笑った。
「……面白いやつだな。まともに挨拶に来た人間なんて何年ぶりだ」
「あ、いや、その、実は視聴者に無茶振りされまして……」
正直に事情を話すと、頭目はますます興味深そうにソウタを眺め、酒瓶を受け取りながら言った。
「気に入った。この森を通るときは、うちの名前を出していい」
ウィンドウが眩い光を放って躍る。
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指令達成
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他配信者の信者の狙い:まさかの成功
対象の生存 :確認
特記事項 :盗賊団との友好関係、成立
NICE GACHA!!
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コメント欄が沸騰した。
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[他配信者の信者]:は!? 煽ったのに成功してて草
[底辺時代からの生き証人]:信者の煽りが結果的に良い方向に
[解説おじさん]:義理を重んじる相手には正面突破が効くという好例だな
[名無しの視聴者]:盗賊のツレになってて草
[尊死予備軍]:聖女様が心配そうにしてるの尊い
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無事に王都へ戻ったソウタを、アリシアが飛びつくように出迎えた。心配していたのだろう、その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
「……次からは、ちゃんと一緒に行かせてくださいね」
「善処します……」
命懸けの挨拶回りは、思いがけず頼れる後ろ盾を連れてくる結果になった。
……さて、明日の無茶振りは何だ? 第6話へ続く。
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煽られて突撃したはずが、まさかの信頼関係構築という結末になりました。他配信者の信者、実は最古参なだけあって侮れません。
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