第26話 モフモフ丸が、動かない
魔王城の最深部へ向かう通路の途中、一行の前に巨大な石像の守護者が立ちはだかった。全身が魔力の紋様で覆われた、これまでの敵とは明らかに格が違う存在だった。
「これは……! 全員、油断するな!」
解説おじさんの警告が届く間もなく、守護者の一撃が容赦なく振り下ろされる。
「危ない!!」
咄嗟に、モフモフ丸がソウタを庇うように飛び込んだ。鈍い音とともに、巨体が壁際まで吹き飛ばされる。
「モフモフ丸!!」
駆け寄ると、モフモフ丸はぐったりと横たわったまま、荒い息を繰り返すばかりだった。
「なんでだよ……なんで庇ったんだよ……!」
震える声で呼びかけるソウタの視界の端に、見覚えのある赤い光が、これまでにない鈍い色で明滅した。
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スキル発動:【視聴者ガチャ】
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▼当選者抽選中……
進捗:██████████ 100%
「頼む、今こそ助けになるやつを引いてくれ……!」
絞り込みの候補文字列が高速で明滅し、ピタリと静止する。
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当選者確定
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ハンネ :泣き虫
称号 :過保護担当(見習い卒業)
発動まで:00:00:05
危険度 :★★★☆☆(覚悟が試される)
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「お前……こんな時こそ来てくれたんだな」
コメント欄に、震えながらも力強い一言が流れ込んでくる。
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[泣き虫]:泣いてる場合じゃない、しっかりして
[泣き虫]:黒曜の鎧の力、まだ全部引き出してないはず
[泣き虫]:モフモフ丸を抱きしめて、鎧の力を分け与えてあげて
[解説おじさん]:装備の力を仲間に分与する術、理論上は可能だ
[底辺時代からの生き証人]:泣き虫が一番冷静だったの、初めて見た
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続けて、指令確定のウィンドウが叩きつけられるように表示される。
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指令確定
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内容 :モフモフ丸を抱きしめ、
黒曜の鎧の力を分け与えること
制限時間:00:00:05以内
未達成の場合……対象は即座に消滅する
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「分け与えるって、やり方なんて知らないぞ……! でも、やるしかない!」
ソウタはモフモフ丸を強く抱きしめ、黒曜の鎧に意識を集中させた。
「頼む……! こいつを、助けてくれ……!」
祈るような想いに応えるように、鎧が淡い光を放ち始める。光はソウタの腕を伝い、モフモフ丸の体を優しく包み込んでいった。
「アリシア、力を貸してくれ!」
「はい!」
アリシアの聖なる祈りが重なり、光はさらに強さを増していく。しばらくの静寂の後――モフモフ丸の瞼が、ゆっくりと開いた。
「……モフモフ丸!」
弱々しいながらも、モフモフ丸は尻尾をひと振りし、ソウタの頬に鼻先を擦り寄せてきた。
「よかった……! 本当に、よかった……!」
安堵のあまり、ソウタの目に涙がにじむ。
ウィンドウが眩い光を放って躍る。
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指令達成
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泣き虫の願望:完全成就
対象の生存 :確認
特記事項 :モフモフ丸、回復。絆、さらに強固に
NICE GACHA!!
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コメント欄が安堵の声で埋め尽くされる。
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[泣き虫]:よかった……本当によかった……
[底辺時代からの生き証人]:泣き虫、今日は完全に主役だったな
[解説おじさん]:仲間を想う力が、装備の力を超えることもある
[無茶振り将軍]:今日ばかりは、俺も何も言えねえよ
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モフモフ丸を起こしたまま、ソウタは石像の守護者を再び見据えた。仲間を失いかけた恐怖が、逆に静かな覚悟へと変わっていく。
「……今度はこっちの番だ」
装備の力と絆を取り戻した一行は、守護者に向かって最後の力を振り絞った。黒曜の鎧を纏ったソウタの一撃と、アリシアの聖なる光、そして怒りに震えるモフモフ丸の咆哮が重なり、石像の守護者はやがて崩れ落ちていった。
静けさが戻った通路で、ソウタはモフモフ丸の頭を何度も撫でた。
「……もう、無茶するなよ」
モフモフ丸は答える代わりに、そっと体を寄せてきた。
……さて、明日の無茶振りは何だ? 第27話へ続く。
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シリーズで一番書いていて手が震えた回でした。モフモフ丸、本当に無事でよかったです。
次回もお楽しみに! ブックマーク登録・評価・感想レビュー、お待ちしております!




