第19話 星空の下で、正直に言えよ
実況泥棒との一件から数日、いよいよ魔王城への出発を翌日に控えた夜。ソウタとアリシアは、宿場町の外れにある丘で、静かに星空を眺めていた。
「明日から、いよいよですね」
「ああ。……なんか、色々あったなって、しみじみ思うよ」
出会ってからの日々を振り返るように、アリシアが穏やかな表情を浮かべる。二人の間に、心地よい沈黙が流れたその時、視界の端に見覚えのある赤い光が明滅した。
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スキル発動:【視聴者ガチャ】
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▼当選者抽選中……
進捗:██████████ 100%
「こんな雰囲気の良いタイミングで!? 頼むぞ、空気読んでくれ!!」
絞り込みの候補文字列が高速で明滅し、ピタリと静止する。
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当選者確定
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ハンネ :尊死予備軍
称号 :聖女推し新規勢代表
発動まで:00:00:05
危険度 :★★★☆☆(羞恥ダメージ特大)
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「お前、こんな時に限って本気出してくるよな……」
コメント欄に、これまでで一番熱のこもったコメントが流れ込んでくる。
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[尊死予備軍]:このタイミング逃したら一生後悔するぞ
[尊死予備軍]:ちゃんと言葉にして伝えろ、行動だけじゃダメだ
[尊死予備軍]:明日死ぬかもしれないんだから、今夜のうちに
[底辺時代からの生き証人]:珍しく真面目な無茶振りだな
[解説おじさん]:戦いの前に想いを伝える、悪くない判断だ
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続けて、指令確定のウィンドウが叩きつけられるように表示される。
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指令確定
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内容 :アリシアに、誤魔化さず
本当の気持ちを言葉で伝えること
制限時間:00:00:05以内
未達成の場合……対象は即座に消滅する
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「これ、一番の無茶振りかもしれない……」
命懸けのミッションよりも、よほど心臓に悪い指令だった。だが、拒否すれば消滅する。ソウタは深く息を吸い込み、アリシアに向き直った。
「なあ、アリシア。……最初の告白、正直言うとガチャのせいだったんだ。ずっと言えなかったけど」
アリシアが少し驚いた表情を浮かべる。
「でも、そこから一緒に過ごしてきて……お前と一緒にいる時間が、いつの間にかすげえ大事なものになってた。ガチャがきっかけだったのは事実だけど、今この気持ちは、もう俺自身のものだ」
夜風に髪を揺らしながら、アリシアがじっとソウタを見つめる。しばらくの沈黙の後、彼女の目にじわりと涙が浮かんだ。
「……知ってました。最初の告白が、その、無茶振りだったこと」
「え」
「でも、それでも構わなかったんです。きっかけが何であれ、あなたが私のために本気で向き合ってくれるのを、ずっと見てきましたから」
アリシアがそっとソウタの手を握る。
「私も、あなたのことが好きです。魔王城に行っても、ずっと一緒にいさせてください」
星空の下、二人の距離が、これまでで一番近くなった。
ウィンドウが眩い光を放って躍る。
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指令達成
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尊死予備軍の願望:完全成就
対象の生存 :確認
特記事項 :二人の絆、確固たるものに
NICE GACHA!!
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コメント欄が感動に包まれる。
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[尊死予備軍]:尊死した もう思い残すことはない
[底辺時代からの生き証人]:ここまで長かったな、感慨深い
[解説おじさん]:戦いの前にしっかり絆を固めるのは戦略的にも正しい
[名無しの視聴者]:見てるこっちが照れる
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星空の下、寄り添う二人。翌日にはいよいよ魔王城への出発が控えている。だが今この瞬間だけは、ただ穏やかな時間が流れていた。
「……明日から、本番だな」
「はい。でも、今夜はもう少し、このままでいさせてください」
無茶振りが繋いだ縁は、いつしか誰にも揺るがせない絆へと変わっていた。
……さて、明日の無茶振りは何だ? 第20話へ続く。
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シリーズ屈指の甘々回でした。書いているこちらまで少し照れました。
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