第12話 新入り視聴者、心配性すぎる
聖地から王都へ戻る道中、ソウタたちは久しぶりに何事もない道のりを楽しんでいた。
「魔王城への出発まで、あと少しか……。今のうちに準備進めとかないとな」
平和な会話をしていたその時、視界の端に見覚えのある赤い光が明滅した。
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スキル発動:【視聴者ガチャ】
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▼当選者抽選中……
進捗:██████████ 100%
「今日はどんなやつだ……」
絞り込みの候補文字列が高速で明滅し、ピタリと静止する。表示された名前は、これまで見たことのないものだった。
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当選者確定
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ハンネ :泣き虫
称号 :新規・過保護担当(見習い)
発動まで:00:00:05
危険度 :★☆☆☆☆(精神的疲労のみ)
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「泣き虫? 初めて見る名前だな……」
コメント欄には、これまでとはまったく毛色の違う、おろおろとした文面が流れ込んでくる。
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[泣き虫]:あの、あのっ、ソウタさん、いつも命懸けすぎませんか……!?
[泣き虫]:無事に帰ってきてほしいので、今日は絶対安全な行動をしてください……!
[泣き虫]:具体的には、その、宿でゆっくり休んでほしいです……
[底辺時代からの生き証人]:初めて見る顔だ、新規か?
[解説おじさん]:無茶振りというより心配の表明だな、これは
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続けて、指令確定のウィンドウが叩きつけられるように表示される。
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指令確定
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内容 :本日一日、危険な行動を一切せず、
宿でゆっくり過ごすこと
制限時間:00:00:05以内
未達成の場合……対象は即座に消滅する
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「……え、待って。これ無茶振りか? めちゃくちゃ優しくないか?」
ソウタは思わず二度見した。命懸けの無茶振りに慣れきった身には、あまりに拍子抜けする内容だった。
「もしかして、これが一番達成しやすい指令なのでは……?」
隣を歩くアリシアも、くすくすと笑いながら言う。
「せっかくですから、素直に甘えてはいかがですか?」
「……そうする」
久しぶりの宿で、ソウタは本当に何もせず、ただゆっくりと過ごした。狼も丸くなって隣で眠り、アリシアは刺繍をしながら静かに時間を過ごす。命懸けの日々の中で、こんなに穏やかな一日は久しぶりだった。
夕方、窓の外を眺めながらソウタはぽつりと呟いた。
「……こういう無茶振りも、たまにはいいもんだな」
ウィンドウが眩い光を放って躍る。
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指令達成
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泣き虫の願望:成就
対象の生存 :確認
特記事項 :対象、心身ともにリフレッシュ
NICE GACHA!!
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コメント欄には、これまでにない安堵の空気が広がった。
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[泣き虫]:よかった……! 無事に一日過ごせて本当によかったです……!
[底辺時代からの生き証人]:泣き虫、良い名前つけてもらったな
[解説おじさん]:たまにはこういう無茶振りも悪くない
[名無しの視聴者]:新規なのに一番平和な指令出してて草
[尊死予備軍]:泣き虫さんの優しさに癒される
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翌朝、すっかり気力を取り戻したソウタは、大きく伸びをした。
「よし、休んだ分、これからしっかり準備していくか」
「はい。あの泣き虫さんも、きっと安心して見ていてくれますよ」
危険な指令にも、優しい指令にも、それぞれの意味がある。無茶振りガチャは、思いがけない形で、ソウタに束の間の休息を与えてくれたのだった。
……さて、明日の無茶振りは何だ? 第13話へ続く。
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初登場の泣き虫さん、まさかの一番平和な無茶振りでした。心配性なりの優しさ、今後も見守ってあげてください。
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