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AIショック事件〜AIに父を犯罪者にされた〜  作者: カトーSOS


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第09話 家電量販店

挿絵(By みてみん)


第09話 家電量販店


 昼食を終えたあと。


 森田家の三人は近くの家電量販店へ来ていた。


 目的は一つ。


 洗濯機である。


「思ったより大きいな」


 俊昭が売り場を見渡した。


 壁一面に洗濯機が並んでいる。


 縦型。


 ドラム式。


 乾燥機付き。


 値段も様々だった。


「洗濯機なんて全部同じだと思ってた」


「全部違うの」


 香織が即答した。


「違うの?」


「違うの」


 その時点で俊昭は少し驚いていた。


     


「こちら、人気の商品になります」


 店員が説明を始めた。


 香織は真面目に聞いている。


 遥はなんとなく聞いている。


 俊昭は途中から妙に真面目になっていた。


「この洗濯機と、この洗濯機は何が違うんですか?」


 俊昭が聞く。


 値段差は十万円近い。


「こちらの商品は乾燥機能が強化されています」


「なるほど」


「こちらはさらにAI制御が搭載されています」


 俊昭が反応した。


「AI?」


「はい」


 店員は笑顔で頷く。


「衣類の量や素材を自動で判別して、乾燥時の温度や風量を最適化します」


「洗濯機にもAI!」


「そうです」


「すげー!」


 俊昭の目が輝いた。


 遥は吹き出した。


「お父さん、そこ?」


「すごいだろ」


「そんなに?」


「考える洗濯機だぞ?」


「意味が分からない」


 香織も少し引いていた。


     


「さらにこちらの機種ですと」


 店員が続ける。


「スマートフォンから洗濯予約が可能です」


「外から?」


「はい」


「へぇ」


「帰宅時間に合わせて乾燥終了時刻を設定できます」


「ほう」


「帰ってきた頃に、ちょうど乾燥が終わっています」


 俊昭が固まった。


「帰ってきたら?」


「はい」


「ホカホカ?」


「ホカホカです」


「すげー!」


 完全に捕まった。


 俊昭は洗濯機を見つめた。


 洗濯機も俊昭を見つめ返している気がした。


「香織」


「なに?」


「これにしよう」


 即決だった。


 香織は値札を見る。


 もう一度見る。


 さらにもう一度見る。


「高い」


「でもホカホカだぞ?」


「私は四六時中家にいるから、もっと安いのでいい」


「そういう問題じゃない」


「そういう問題よ」


 香織は真顔だった。


「乾燥終わったら取り出せばいいだけだもの」


「夢がないな」


「現実よ」


 遥が笑った。


「お父さんとお母さん、昨日と言ってること逆になってるよ」


 二人が同時に遥を見た。


「そう?」


「そうだよ」


 遥は呆れた。


「昨日はお父さんが高いって言ってたじゃない」


「昨日は昨日だ」


 俊昭は真面目な顔だった。


「今日は今日だ」


「意味分からない」


「実物を見た」


「説明も聞いた」


「説明は大事だ」


 香織は額を押さえた。


「完全に店員さんの思う壺ね」


     


 香織はふと気になった。


 普段の俊昭なら、


 ここまで気前よくはならない。


 乾燥機付きでさえ悩むはずだ。


 まして一番高い機種など。


「ねえ」


「ん?」


「あなた」


「なんだ?」


「投資でどれくらい儲かったの?」


 俊昭は少し周囲を見回した。


 店員はいない。


 遥も別の洗濯機を見ている。


 俊昭は香織を手招きした。


「?」


 香織が近づく。


 俊昭は小さな声で耳打ちした。


 数秒後。


 香織の動きが止まった。


「……え?」


 聞き間違いかと思った。


「え?」


 もう一度言った。


「どういうこと?」


「そうなるよな」


 俊昭は苦笑した。


「俺もそう思った」


 香織はしばらく何も言えなかった。


 値札を見る。


 俊昭を見る。


 洗濯機を見る。


 もう一度値札を見る。


「……そう」


 小さく呟く。


「SITE1000様ね」


「SITE1000様だ」


 二人は深く頷いた。


     


 その時だった。


「何の話?」


 遥が戻ってきた。


「大人の話」


 香織が言う。


「怪しい」


「怪しくない」


「絶対怪しい」


 遥は二人を見比べた。


 だが二人とも何も言わない。


 しばらくして、


 香織が洗濯機を見た。


「じゃあ」


「うん」


「これにしましょうか」


 俊昭が笑った。


「決まりだな」


 配送日は来週になった。


 香織は新しい洗濯機を楽しみにした。


 遥も少し楽しみだった。


 俊昭は一番楽しみにしていた。

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