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AIショック事件〜AIに父を犯罪者にされた〜  作者: カトーSOS


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第10話 勇人とのデート

挿絵(By みてみん)


第10話 勇人とのデート


 待ち合わせは駅前だった。


 翌日の日曜日。


 駅前広場には買い物客や学生が行き交っている。


 遥はスマートフォンで時間を確認した。


 約束の五分前。


 すると後ろから声がした。


「久しぶり」


 振り返る。


 山下勇人が立っていた。


 遥は思わず笑った。


「三日ぶり」


「俺にとっては久しぶり」


「おもっ!」


「ひどいよ!」


 勇人は肩を落とした。


 その様子がおかしくて、遥は少し笑う。


 勇人もつられて笑った。


 いつものやり取りだった。


     


 二人は駅前のカフェに入った。


 窓際の席。


 コーヒーとケーキを注文する。


 休日らしい穏やかな時間だった。


「土曜は何してたの?」


 勇人が聞いた。


「洗濯機買った」


「そんな報告ある?」


「ある」


 遥は真顔だった。


「お父さんが大喜びしてた」


「洗濯機で?」


「洗濯機で」


 勇人は笑った。


「お父さんらしいな」


「どうして?」


「前に会った時、空気清浄機の話を三十分された」


 遥は吹き出した。


「ありそう」


「しかも楽しそうだった」


「それもありそう」


 勇人はコーヒーを飲んだ。


「新しいのどんな?」


「ドラム式」


「高そう」


「高かった」


「買ったの?」


「買った」


「思い切ったな」


「考える洗濯機らしい」


「どんなん!」


勇人は笑う。


「仕上がりがフワフワになるよう考えるんだって…」


「マジで?」


 遥は少し考えてから言った。


「SITE1000様らしい」


「なんだそれ」


「私もよく分からない」


 二人は笑った。


     


 窓の外では人が行き交っている。


 休日の街は平和だった。


 勇人はケーキを一口食べた。


「仕事はどう?」


「普通」


「それ一番信用できない返事」


「本当に普通」


「残業は?」


「ある」


「人間関係は?」


「ある」


「はるちゃんだな」


 勇人は笑った。


 遥も少し笑う。


 父と同じことを聞かれた気がした。


「ユウは?」


「普通」


「信用できない」


「ひどい」


「お互い様」


 また笑った。


     


 しばらくして話題が変わる。


 勇人は何気なく言った。


「結婚したらさ」


 遥はコーヒーカップを置いた。


「うん」


「駅近がいい」


「高い」


 即答だった。


 勇人は苦笑する。


「現実派だな」


「薬剤師だから」


「関係ある?」


「ある」


「本当に?」


「詰めるよね」


「気をつける…」


「でも、通勤時間が大事なのは分かるよ」

「毎日のことだから」


「はるちゃんは?」


「私?」


 遥は少し考える。


「スーパーが近いところ」


「駅じゃなくて?」


「駅も大事だけどスーパーが大事」


「生活感あるな」


「生きるのに必要だから」


 二人は笑った。


     


「子供は?」


 勇人が聞いた。


 遥は少し驚いた。


「まだ早いよ」


「そう?」


「そう」


「俺は二人くらい」


「具体的」


「男の子と女の子」


「もう決まってるんだ」


「なんとなく」


 勇人は照れくさそうに笑った。


「犬も飼いたい」


「それは賛成」


「大型犬」


「大きすぎる」


「かわいいぞ」


「散歩大変だよ」


「それも込み」


 勇人は楽しそうだった。


 遥はその顔を見た。


 本気で未来を考えている顔だった。


 少しだけ照れくさい。


 でも嫌ではなかった。


     


 気付けば二時間近く話していた。


 特別なことは何もしていない。


 コーヒーを飲んで、


 ケーキを食べて、


 どうでもいい話をしていただけだ。


 それでも時間はあっという間だった。


 店を出る。


 駅前まで戻る。


「来週どうする?」


 勇人が聞いた。


「予定確認しとく」


「了解」


「ユウもね」


「分かった」


 短いやり取り。


 いつも通りだった。


「じゃあまた」


「また」


 二人は手を振った。


 勇人は改札へ向かう。


 遥はその背中を見送った。


 不思議と居心地の良い相手だった。


 一緒にいて疲れない。


 無理もしない。


 特別な言葉もいらない。


 そういう関係だった。


 遥は少しだけ笑う。


 そして駅とは反対方向へ歩き出した。


 夕方の風は少しだけ涼しかった。


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