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AIショック事件〜AIに父を犯罪者にされた〜  作者: カトーSOS


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第11話 結婚の話

挿絵(By みてみん)


第11話 結婚の話


 遥が家につく頃には、夕方だった。


 遥が帰宅すると、リビングからテレビの音が聞こえてきた。


 俊昭はソファに座り、ニュースを眺めている。


 香織はダイニングテーブルでスマートフォンを見ていた。


「ただいま」


「おかえり」


 二人の声が重なる。


 いつもの光景だった。


 遥はバッグを置き、冷蔵庫から麦茶を取り出す。


「デートどうだった?」


 香織が聞いた。


「普通」


「普通じゃ分からない」


「普通だよ」


 遥は笑った。


「コーヒー飲んで、ケーキ食べて、話しただけ」


「話しただけで二時間?」


「二時間?」


 俊昭が反応した。


「長いな」


「お父さんの会議より短い」


「それはそうか」


 俊昭は納得した。


     


 香織はスマートフォンを置いた。


「そういえば」


「なに?」


「勇人くんのお母さんからLINE来てた」


 遥の動きが止まる。


「え?」


「今度、一緒に食事でもどうですかって」


「あっ」


 思わず声が出た。


「あっ、って?」


 香織は笑う。


「ユウもそんなこと言ってた。」


「報告しなさいよ」


「なんで」


「私たちだけ知らないと恥かいちゃう」


「考えすぎだよ」


「家と家のつきあいなの。」


「ふーん」


「それに…」

「付き合って何年になると思ってるの」


「それはそうだけど」


「そろそろでしょ」


 遥は少しだけ困った顔をした。


 結婚の話が嫌なわけではない。


 ただ、現実味を帯びると少し照れる。


     


「結婚か」


 俊昭がぽつりと言った。


 遥はすぐに反論する。


「いやだな、お父さんまで…」


「決まってるようなもんだろ」


「決まってない」


「そうか?」


「そう」


 俊昭は少し笑った。


 香織も笑っている。


 どうやら味方はいないらしい。


「勇人くん、いい人だものね」


 香織が言う。


「まあ」


「優しいし」


「まあ」


「真面目だし」


「まあ」


「ちゃんと挨拶するし」


「まあ」


「反論が弱い」


 香織は楽しそうだった。


     


「寂しい?」


 突然、香織が聞いた。


「誰が?」


「あなた」


 俊昭は少し考えた。


「別に」


 即答だった。


「嘘」


 遥が言う。


「嘘ね」


 香織も言う。


 二対一だった。


「なんでだよ」


「顔」


「顔がね。」


「顔?」


「顔」


 俊昭は少し困ったように笑った。


 そして肩をすくめる。


「まあ、少しはな」


 遥は思わず笑った。


「正直だ」


「子供だと思ってたからな」


「失礼ね」


「ついこの前までランドセルだった気がする」


「何年前よ」


「十数年前だな」


「十分長い」


「でも親なんてそんなもんだ」


 俊昭はそう言った。


 香織も静かに頷く。


     


 夕食の時間になった。


 食卓には煮魚と味噌汁が並んでいる。


 いつもの食卓だった。


「そういえば」


 俊昭が言った。


「洗濯機、来週だな」


「あら」


 香織が笑う。


「楽しみなの?」


「少し」


「少しじゃないでしょ」


「少しだ」


「絶対違う」


 遥が言った。


「お父さん、売り場で一番はしゃいでたじゃない」


「そんなことない」


「AI!」


 遥が真似をした。


「ホカホカ!」


 香織も続く。


「やめろ」


 二人は笑った。


 俊昭も苦笑した。


 平和な夕食だった。


     


 その夜。


 自室へ戻った遥はベッドに腰掛けた。


 スマートフォンが震える。


 勇人からだった。


『今日はありがとう』


 短いメッセージ。


 遥は少し考えて返信する。


『こちらこそ』


 数秒後。


『また来週だね、おやすみ』


 遥は小さく笑った。


『うん、おやすみなさい』


 送信する。


 それだけだった。


 特別な言葉はない。


 約束もない。


 けれど、不思議と安心できた。


 今度は母親同士の食事か。


 そんなことを考える。


 結婚。


 家族。


 未来。


 少し前まで遠い話だった。


 でも今は違う。


 少しずつ近づいている気がした。


 遥はスマートフォンを置く。


 部屋の灯りを消した。


 明日は月曜日だ。




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