第17話 照会書
第17話 照会書
黒川修刑事は、自席でパソコンに向かっていた。
昨日、課長から許可は下りている。
やるべきことは一つ。
証拠を集めることだった。
「桐山」
「はい」
サイバー犯罪担当の桐山が椅子を引いて隣へ来た。
「会社から提出されたログだが」
「はい」
「次に何を見る」
桐山は少し考えた。
「通信記録です」
「通信記録?」
「会社のサーバーへアクセスしたことは分かっています」
「その前後に、どこと通信したのか確認したいです」
黒川は頷いた。
「管理元は?」
「ハードパンクです」
「照会を出せるか」
「出せます。対象時刻とIPアドレスが必要です」
「会社ログに残っている」
「では、捜査関係事項照会でいけます」
「なるほど」
「会社のログだけでは分かりません」
「通信事業者への照会になります」
「ああ」
黒川は机の引き出しから様式を取り出した。
捜査関係事項照会書。
事件名。
照会先。
対象日時。
必要事項を一つずつ記入していく。
横では桐山が会社から提出された資料を確認していた。
「対象時間は」
「アクセス前後を含めて三十分ほど見た方がいいと思います」
「分かった」
黒川は修正する。
「理由は」
「会社機密へのアクセス後の通信先確認」
「それで十分です」
書き終えると、黒川は立ち上がった。
まず係長。
係長は黙って目を通す。
「時間帯をもう少し広げろ」
「はい」
黒川は席へ戻り、修正した。
再び係長へ。
今度は頷いた。
「課長へ回せ」
刑事課長は最後まで読み終えると、
何も言わず判を押した。
「よし」
「ありがとうございます」
黒川は書類を受け取った。
部屋を見回す。
一人、若い刑事が暇そうに事件簿を読んでいた。
「おい、藤井」
「はい」
若い刑事が立ち上がる。
「これ、庶務課へ回しといて」
黒川は照会書を差し出した。
藤井は受け取る。
表紙をちらりと見た。
「ハイ、分かりました」
そう言うと、軽く頭を下げ、部屋を出て行った。
黒川はその背中を見送った。
それから数日が過ぎた。
「黒川さん」
庶務から声が掛かった。
「回答が来ています」
机の上へ封筒が置かれる。
思ったより早かった。
黒川は封を切った。
「桐山」
「はい」
二人で資料を開く。
桐山は一行ずつ確認していく。
会社サーバーへの通信。
時刻。
通信終了。
そして、
その直後。
別の通信記録があった。
「黒川さん」
「何だ」
桐山は紙から目を離さない。
「接続先が確認できました」
「どこだ」
一瞬の沈黙。
「……ハードパンク回線を通じて、証券会社のサーバーへ接続しています」
黒川は眉をひそめた。
「証券会社?」
「はい」
「何をしたかまでは分かりません」
「分かるのは、接続したという事実だけです」
黒川は資料を閉じた。
「なら」
静かに言う。
「次は証券会社だ」
桐山は頷いた。
「取引内容を確認しましょう」




