8 ステータス
その後、一時間ほど地下一層を回った。ブラックラビットには百羽近く出会った。数匹だが、素早さがアップしているファイターラビットにも会った。
ダンジョンを出る前にステータスオープンと、水戸さんと二人で唱えてみた。
「あっ、スキルが出た! 《光魔法》だって! 〈ホーリーアローLevel1〉を覚えてる〜。すご〜い。大宮はクズジョブ、成長したの?」
クズジョブ言うな。それに呼び捨てかよ。ウサギの初殺しのときは、大宮くんって言っていたじゃないか。くん、をつけろ。
まぁ、元気になったのはいいことか……
「成長しているよ。A98だ」 ジョブ名以外はそれしか表示されていない。98ということはBB弾が当たっていないときもあるということなんだろう。かなり寂しいものがある。
「それだけ? カッコ悪〜い」 水戸さんがクスクス笑う。
「【愚者】のアシストは成長が遅いので、大目に見てあげましょう。【聖女】のジョブは初期が無力なので、ホーリーアローを早くに覚えるんです。それでも水戸さんはよく乗り越えて、がんばりましたね」
今多さんのことばに、はい! と返事をして、水戸さんは意気揚々とダンジョンを出ていった。
地下一階にあるロッカーをあてがわれ、その中に二人で武器などをしまってから、研究所の外に出る。夏の陽はもう暮れかかっていた。
「明日も研修の続きがありますが、都合はいかがですか?」
今多さんの問いに二人で、はい、大丈夫です、と返事をする。
これから夏休み中、ダンジョン探索ができるなんて、いい夏休みになりそうだ。
「それでは、9時免許センター前に集合です。後日になりますが、交通費も、日当も出ます。お昼はセンターの食堂からお弁当をもらうので、不要です」
「「やったーー」」
交通費や日当が出るということに、二人で歓声を上げてしまった。
車で駅まで送ってもらう。
「今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
お礼を言って車から降りる。
水戸さんとは途中まで電車が一緒だ。なにを話せばいいのかわからず、互いに黙ったまま、改札を抜け、電車に乗る。
水戸さんはドアに寄りかかりながら、スマホをいじり始めた。
車窓から暗くなった空を見る。
ヒューマンキラー。
ダンジョンに入る以上、自分もそうならないとは言い切れない。
自分にあんな仕事ができるのだろうか。
街にはすでに明かりがついて、暗い中、星のような街並みが見えた。
そんな風景をしばらく見ていたが、気持ちを切り替えて、俺はスマホを取り出し、メールチェックをしてみる。
友だちから、免許証、取れたか? ジョブはなんだった? と、案の定、何通かメールが来ていた。
『ジョブエラーとかが出て、不適合者になっちゃったよ(涙)』とまとめて送る。
公的には、俺はダンジョンには入れない人になったんだ……
ふたたび車窓に目を移すと哀愁を帯びた灯が見える。
突然、連絡先交換しよ、という声が聞こえた。声のほうを見ると、水戸さんがメッセージの連絡先交換画面を開いて見せてきた。
「そうだね」
俺はそう言ってスマホの画面を切り替えた。
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