21 ※愚者
今多さんが赤いクリスタル三つを嵌め込んだ肉厚なショートソードで滅多斬りにして、赤いドラゴン・朱雀は、炎のブレスを吐く前に虫の息となった。
最期に水戸さんがホーリーソードで首を落とす。巨体は光の粒子となって弾け、降り注ぐ。
今日はこれで、三体目になる。
育成用ダンジョンの最下層は浅く、ここは地下二十階層である。多くのダンジョンは最下層が八十〜百階層というが、このダンジョンはその深さを圧縮しているらしい。スライムがいないのもそれが原因と聞いた。
最下層のドラゴンは全部で四体いる。今多さんはその龍の色から玄武、青竜、朱雀、白虎と呼んでいる。
四体を一回の潜入で同時に倒すことはない。ダンジョン崩壊を招く危険があるからだ。必ず毎回一体を残す。今回残したのは光魔法を使うという白いドラゴン、白虎だ。
地下二十階層に来るのはこれで三日連続三回目。今日で九体のドラゴンを粒子にしたことになる。
ただ俺はトリガーを引くだけ、水戸さんはとどめを指すだけ。やっていることは一階層からここ二十階層までほぼ変わらない。
魔物が強くなってBB弾では攻撃認定されなくなったので、俺はマグナムに、水戸さんは剣術の鍛錬も兼ねてホーリーソードで、と手段が変わったぐらいだ。
今多さん一人で、どんな魔物も半殺しにしてしまう。
大きな赤いクリスタルを拾うと、
「さあ、帰りましょう」
今多さんはなにもなかったかのように、僕らに声をかける。
二人で、はい、と言いながら地上に戻るのだが、今多さんは強すぎる、と今回も思う。
俺たちがそれを言うと、鍛錬の賜物です、と今多さんは答える。
この育成用、元研究用ダンジョンがホームグランドで、もう数えきれないほどソロで、ドラゴンを含めて踏破したらしい。たしかに、このダンジョン内は詳しく、道に迷ったこともないし、各階のトイレの場所もちゃんと知っている。
ここは研究用ダンジョンでもあるし、二十階しかないこともあって、各階にきれいなトイレが用意されているのだ。どうも、女性の研究者が多いせいみたい。研究者は五人ほどのパーティーで調査するという。その研究の恩恵をたとえば、偽装の装置とか、魔道具とかで俺たちも受けている。
今日でドラゴンが九体、あれば、そろそろじゃないかな? 今多さんがそうつぶやいたあと、
「ステータスは、どう?」と尋ねる。
「ホーリーソードと回復魔法がLevel3に、ホーリーガードLevel1が初めて出ました!
空間魔法も聖域Level1が初めて出て、蘇生魔法も初めて出ました。ですが蘇生はLevel表示はありません」
水戸さんの答える声が聞こえる。ずいぶん多そうだ。
俺は自分のステータスを見て感無量になっていた。
とうとうマックスになったのだ。
大宮くんは? 今多さんの声が聞こえる。
「はい! とうとうアシストがマックスになりました。A100000+(max)と出ています。ジョブの愚者の前にも印がつきました! これで自分に害なく愚者を成長させることができそうです! 無力も状態、物理、魔法がLevel1になっています! ありがとうございます!」
「やっとね。おめでとう。長いような、短いような。ほんとうにお疲れさま……【愚者】でそこまで成長したのは、大宮くんが初なので、これからのデータの提供もお願いね」
そろそろ上限を超えたと予想していたのだろう、今多さんはホッとした表情をした。
「クズスキルじゃなくなったの? なんだかつまんない! でも、よかったね〜」
水戸さんは、からかう材料がなくなってしまったからか、喜んではくれているが、なぜか泣きそうになっている。
俺のステータス表示はこうなっていた。
【※愚者】A100000+(max)
《※愚考Level2(max)》
《※愚挙Level2(max)》
《※愚図Level2(max)》
《無力》〈状態Level1〉〈物理Level1〉〈魔法Level1〉
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