↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE GUILD  作者: axe
第二章 学びの街
PR
97/401

第九十七話 選ぶ授業


二年目の授業が始まった。


一年目との一番大きな違いは、毎日同じ顔ぶれで授業を受けるわけではなくなったことだった。


朝の読み書きや計算など、七組全員で受ける授業はまだある。


けれど選択授業の時間になると、生徒たちはそれぞれ別の教室へ向かう。


「じゃあ、あとで」


セレナが廊下の途中で曲がる。


「どこ行くの?」


「行政と法」


「何するの?」


「だから今から習うのよ」


「あ、そっか」


その少し先ではノアも別方向へ向かった。


「ノアは?」


「魔道具」


「いいな」


「エイルも取ればよかったのに」


「取りたかった」


「じゃあ取ればよかっただろ」


「戦闘と同じ時間だった」


「なら仕方ない」


ノアはそのまま歩いていった。


エイルは少しだけ立ち止まった。


「行くぞ」


レオンに呼ばれる。


「うん」


今日は戦闘の授業だった。


---


一年目の身体訓練では、走り方や姿勢、基本的な身体の使い方を学ぶ時間が多かった。


二年目の選択授業では、そこから少し内容が進む。


木剣。


盾。


槍。


素手。


教師が並べられた道具を指した。


「今年は、いくつかの武器に触れてもらう」


エイルが手を挙げる。


「全部使えるようになるんですか?」


「なりません」


すぐに答えが返ってきた。


「一年で全部使いこなせるなら、専門に訓練する人間は苦労しない」


何人かが笑う。


「目的は、自分に何が向いているか知ること。そして相手が違う武器を持っているとき、何が変わるのか知ることだ」


最初は木剣だった。


エイルには慣れている。


構える。


身体強化を使う。


前へ出る。


相手の木剣を受ける。


足を動かす。


以前なら、受けた直後に体勢が崩れることが多かった。


今は戻せる。


次の一撃にも間に合った。


「よし、交代」


教師の声で止まる。


「どうだった?」


レオンが聞いた。


「前より動けた」


「ああ」


「次、レオンとやる?」


「今は決められた相手とやれ」


「あとで?」


「あとでな」


---


別の日。


エイルが向かったのは魔物に関する選択授業だった。


一年目の魔物学では、代表的な魔物の特徴や痕跡、危険を避けるための基本を学んだ。


二年目は、それをもう少し詳しく扱う。


教師が机にいくつかのものを並べた。


角。


毛皮。


乾燥させた植物。


小さな骨。


「魔物について知るというのは、戦い方を知ることだけではありません」


教師は角を持ち上げた。


「倒した後に何が使えるのか。何が売れるのか。逆に、扱うと危険なものは何か。そうしたことも含まれます」


エイルは角を見る。


「これ売れるんですか?」


「売れます」


「いくら?」


「状態と地域によります」


「どこに売るんですか?」


「それを扱う商人や工房ですね」


「誰でも買ってくれる?」


「いいえ」


エイルは少し考えた。


「じゃあ、持って帰っても売れないことがある?」


「あります」


「重いのに?」


「重いのに、です」


教室から笑い声が起きた。


エイルは角を見直した。


魔物を倒せば終わりだと思っていたわけではない。


けれど、その後のことを詳しく考えたこともなかった。


「食べられる魔物もいるんですか?」


今度は別の生徒が聞いた。


「います。ただし、知識なしに食べないでください」


「牙ネズミは?」


エイルが聞いた。


「おすすめはしません」


「まずい?」


「その質問は調理の先生にしてください」


また笑われた。


---


カイは商業と会計の授業を取っていた。


ある日の昼休み。


六人で食事をしていると、カイが紙に何かを書いていた。


「何してるの?」


エイルが覗き込む。


「課題」


「飯食べながら?」


「今日までなんだよ」


「何の?」


紙には品物の名前と数字が並んでいた。


「三つの町から同じ品物を仕入れるとして、どこから買うのが一番いいか」


「一番安いところじゃないの?」


「俺も最初そう思った」


カイが一つを指す。


「ここが一番安い。でも遠い」


「うん」


「運ぶ金を入れたら、こっちの方が安くなる」


別の町を指す。


「でも大量に買うなら、また変わる」


「なんで?」


「だから説明すると長いって」


「教えて」


「今?」


「うん」


「飯食わせろ」


---


ノアは魔道具の授業が始まってから、以前よりさらに道具を見る時間が増えた。


食堂でも、小さな照明用の魔道具をじっと見ている。


「それ、毎日あるよ」


エイルが言う。


「知ってる」


「何見てるの?」


「どうやって同じ明るさを保ってるのかなって」


「開ければ?」


ノアがエイルを見る。


「学校の備品だぞ」


「前は開けたそうにしてたじゃん」


「開けたいのと開けるのは違う」


「成長したね」


「最初から開けてない」


---


セレナの机には、以前より文字の多い本が増えた。


エイルが一冊を開いてみる。


すぐ閉じた。


「何これ」


「土地の扱いについての規則」


「面白い?」


「面白いわよ」


「どこが?」


「同じ土地でも、誰が使うか、何に使うかで扱いが変わるところとか」


「難しい」


「まだ最初だからね」


セレナ自身も、分からないところには印をつけていた。


学校へ来る前から勉強していたセレナでも、知らないことはいくらでもあるらしい。


「エイルは何取ったの?」


「戦闘と魔物と魔術」


「三つ?」


「あと一つ」


「何?」


「商業」


セレナが少し意外そうな顔をした。


「どうして?」


「カイがやってた問題が面白そうだったから」


「それだけ?」


「うん」


「あなたらしいわね」


---


ミナは文書や記録を扱う授業を選んでいた。


最初の課題は、長い文章を短くまとめることだった。


エイルが答案を見せてもらう。


「短い」


「短くする課題だから」


「俺だったらもっと書く」


「エイルは聞かれてないことまで書きそう」


「ちゃんと書くよ」


「じゃあこれまとめてみる?」


渡された文章を見る。


エイルは読み始めた。


しばらくして。


「長い」


「だからまとめるの」


「どこまで消していいの?」


「必要なところを残す」


「全部必要そう」


ミナが笑った。


「それを考える授業なんだよ」


---


二年目になって、六人が一緒にいる時間は少し減った。


同じ教室で受ける授業もある。


別々に学ぶ時間もある。


けれど昼になれば、いつの間にか同じ卓に集まっていた。


「今日、槍使った」


エイルが言う。


「どうだった?」


カイが聞く。


「難しい。でも遠くまで届く」


「当たり前じゃない?」


「使うと違うんだよ」


ノアが話し始める。


「今日、魔力を通す板を加工した」


「動いた?」


「まだ板だけ」


セレナは行政の授業で習った話をする。


カイは商業の課題について愚痴を言う。


ミナは提出する文章を直している。


レオンは食べながら聞いていた。


一年前には、全員ほとんど同じものを知らなかった。


今は少しずつ、知っていることが違ってきていた。


「午後何だっけ?」


エイルが聞く。


カイが呆れた顔をする。


「自分の時間割くらい覚えろよ」


エイルは鞄から紙を取り出した。


「……商業だ」


「俺と一緒じゃん」


「じゃあカイについていけばいいね」


「覚える気ないだろ」


二人は食事を急いで片づけた。


二年目の日々は、そんなふうに始まっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。