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THE GUILD  作者: axe
第二章 学びの街
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第九十六話 二年目


長い休暇が終わった。


エイルが学校へ戻ったのは、授業が始まる二日前だった。


門をくぐると、一年前と同じように大勢の生徒が行き来している。


けれど、最初に来たときほど大きくは感じなかった。


建物の場所も分かる。


食堂への近道も知っている。


寮まで迷うこともない。


「ただいま」


部屋の扉を開ける。


「遅い」


カイがベッドに寝転がっていた。


「カイ!」


「おう」


「いつ帰ってきたの?」


「昨日」


エイルは荷物を置いた。


「家どうだった?」


「普通。店手伝わされた」


「俺も畑手伝った」


「休みなのにな」


「でも楽しかったよ」


「俺は学校の方が楽だと思った」


「なんで?」


「店だと親が先生だから」


エイルは少し考えた。


「嫌なの?」


「逃げられない」


「先生からも逃げちゃ駄目だよ」


「そういう話じゃない」


久しぶりに会ったのに、話していることは以前とほとんど変わらなかった。


---


新学期。


七組の教室に入ると、見慣れた顔が揃っていた。


「ミナ」


「久しぶり」


「腕は?」


「もう大丈夫」


ミナが右腕を上げてみせる。


動きに問題はない。


傷跡は残っているが、それ以外は以前と変わらなかった。


「休み中も動かしてた?」


「少しずつね」


「剣は?」


「もう振れるよ」


「じゃあ――」


「エイル」


ミナが先に言った。


「何?」


「今から勝負しようって言うつもりだった?」


「違うよ」


「本当?」


「ちゃんと治ったか聞こうと思った」


「それならいい」


横からカイが言った。


「ちょっと怪しかったけどな」


「怪しくない」


「エイルなら言いそう」


「言わないよ」


そんな話をしていると、セレナとノアもやって来た。


最後にレオンが入ってくる。


「おはよう」


「レオン」


エイルが立ち上がる。


「休み中、訓練した?」


「ああ」


「どれくらい?」


「ほぼ毎日」


「俺もした」


「そうか」


「あとでやろう」


「授業が先だ」


「終わってから」


「分かった」


カイがため息をつく。


「戻って早々それか」


---


ヴァレンが教室へ入ってきた。


生徒たちが席につく。


「久しぶりですね」


一年目と同じ声だった。


「今日から二年目です」


その言葉で、教室が少し静かになる。


「昨年は、全員が共通して学ぶ内容がほとんどでした」


読み書き。


計算。


歴史。


地理。


基礎魔力学。


身体訓練。


魔物学。


ほかにもいくつもの授業があった。


「二年目も共通して学ぶ授業は残ります。ただし、今年から自分で選択する授業が増えます」


ヴァレンが紙を配る。


エイルは受け取った。


休暇前にも簡単な一覧は見ていたが、今回は詳しい説明が書かれている。


商業と会計。


行政と法。


工芸。


魔道具。


戦闘。


魔術。


魔物と薬草。


ほかにもある。


それぞれ一つの授業だけではなく、いくつかに分かれていた。


「全部取れる?」


エイルが手を挙げて聞いた。


教室から笑い声が出る。


ヴァレンは普通に答えた。


「無理です」


「なんで?」


「時間が重なります」


「じゃあ、いっぱい取るのは?」


「決められた範囲なら構いません」


エイルは紙を見る。


困った。


どれも少し気になる。


「選択授業は、将来の職業を決めるためだけにあるものではありません」


ヴァレンが続ける。


「興味があるから選んでも構いません。自分に向いているか確かめるためでもいい。選んでみて、思っていたものと違うと知ることも勉強です」


エイルには、その方がありがたかった。


まだ何になりたいか分からない。


けれど、何をやってみたいかならいくつもある。


---


昼休み。


六人は食堂の同じ卓に集まった。


当然、話題は選択授業になった。


「私は行政と法を取る」


セレナが言った。


カイが驚く。


「もう決めたの?」


「休み中に考えたから」


「魔術は?」


「取るわよ」


「二つ?」


「ほかにも取る」


「早いな」


レオンもほとんど決めていた。


「戦闘は取る。魔物学も続けたい」


「俺も戦闘取る」


エイルがすぐに言う。


「知ってる」


「なんで?」


「お前なら取るだろ」


ノアは紙の魔道具の欄を見ている。


聞かなくても分かりそうだった。


「ノアは魔道具?」


「うん。工芸も迷ってる」


「両方取れば?」


「時間が一部重なってる」


「じゃあ難しいね」


「だから迷ってる」


ミナはまだ決めていなかった。


「私はこれかな」


指したのは、文書や記録を扱う授業だった。


「これ何するの?」


エイルが聞く。


「だから受けてみようと思ってるの」


「分からないから?」


「そう」


「それいいね」


カイが笑う。


「お前と同じだな」


「俺?」


「お前、全部分からないから全部気になってるだろ」


エイルの前には、印をつけた授業がいくつもあった。


魔術。


戦闘。


魔物。


魔道具。


工芸。


商業にも小さく印がある。


「これ全部は無理だぞ」


「分かってる」


「何をやめる?」


エイルは紙を見る。


「……分からない」


「だと思った」


「カイは?」


「商業と会計」


「やっぱり店継ぐの?」


「兄貴がいるから、たぶん俺は継がない」


「じゃあなんで?」


「知ってることが多いから楽そう」


セレナが呆れた顔をした。


「それで選ぶの?」


「駄目とは言われてない」


「確かに」


「あと、知らないこともあるしな。うちの店だけが商売じゃないだろ」


「そっか」


エイルはまた自分の紙を見る。


ますます全部受けてみたくなった。


---


午後は選択授業の説明会だった。


教師たちが順番に授業内容を説明する。


商業では、品物を仕入れて売るだけではなく、運搬や帳簿、契約なども扱うという。


行政では、土地や税、法律、文書について学ぶ。


工芸では材料と加工。


魔道具では術式と道具を組み合わせる基礎。


戦闘では一年目より実践的な訓練。


魔物関係では、生態や痕跡に加えて薬草や素材も扱う。


説明を聞くたび、エイルの紙に印が増えた。


「増えてるじゃん」


隣のカイが言う。


「面白そうだった」


「減らすための説明会じゃないのか?」


「違うと思う」


「お前には逆効果だったな」


最後の説明が終わる頃には、紙の半分近くに印がついていた。


---


その夜。


寮の部屋で、エイルは時間割とにらみ合っていた。


「これとこれが同じ時間」


「だから言っただろ」


カイはすでに自分の希望を書き終えている。


「魔道具と戦闘が重なってる」


「どっちかだな」


「両方やりたい」


「体二つにしろ」


「無理だよ」


「じゃあ選べ」


エイルはしばらく考えた。


戦闘は外したくない。


もっと強くなりたい。


魔術も学びたい。


魔物についても知りたい。


けれど、ノアが楽しそうに話していた魔道具も気になる。


商業の説明も思ったより面白かった。


「決まった?」


「まだ」


「先寝るぞ」


「待って」


「なんで俺が待つんだよ」


カイは本当に寝る準備を始めた。


エイルはもう一度、時間割を見る。


学校へ来る前は、魔術を学べるだけでも楽しみだった。


一年経った今は、それ以外にも知らないものがたくさんある。


結局、その夜は最後まで一つに絞れなかった。


翌朝。


エイルは少し眠そうな顔で、何度も書き直した希望用紙をヴァレンへ提出した。


二年目が始まった。


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