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THE GUILD  作者: axe
第二章 学びの街
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第八十五話 違う痕跡


四回目の実地訓練の日。


森へ入る前に、六人は地図を囲んでいた。


エイル、カイ、レオン、セレナ、ノア、ミナ。


前回と同じ班だ。


「今日は先に決めとこう」


カイが言った。


「誰が決めるか、だろ?」


レオンが聞く。


「そう。前みたいに、なんとなくレオンになるんじゃなくて」


ミナが笑う。


「結局レオンなんだ」


「いいのか?」


レオンが全員を見る。


誰も反対しなかった。


「じゃあ俺が最後に決める。ただ、気づいたことは全部言ってくれ」


「それでいいと思います」


セレナが頷く。


役割も決めた。


レオンが前方。


ミナが後方。


エイルとカイが左右。


ノアが地面の痕跡を確認し、セレナが地図と資料を見る。


もちろん、ずっと同じ場所だけを見るわけではない。


だが、少なくとも全員が一つの足跡を覗き込むことはない。


「前よりちゃんとしてるな」


エイルが言った。


「三回やってるからな」


カイが答えた。


---


出発前。


バルガが生徒たちを集めた。


「第四回は、これまでより俺たちが口を出す場面を減らす」


生徒たちの前には、それぞれ今日使う区域の地図と資料がある。


「第一回では、何を見るかを教えた。第二回では、遭遇したときの行動をやった。第三回では、自分たちで進路や役割を決めた」


バルガが四本目の指を立てる。


「今日は、現地で得た情報を使って、進むか戻るかまで自分たちで考えてもらう」


カイが聞いた。


「先生は何もしない?」


「前回と同じだ。危険だと判断すれば止める」


「ですよね」


「お前たちが判断する訓練と、お前たちを危険にさらすことは別だ」


バルガはそう言ってから、資料を持ち上げた。


「それから、これを正解だと思うな」


エイルも自分の資料を見る。


今回の訓練区域は学校の南西。


森の向こうには小さな村がある。


資料には、この辺りで確認されている三種類の魔物が載っていた。


最近の巡回記録もある。


**五日前――異常なし。**


「資料に書かれているのは、確認された時点での情報だ。現地と違えば、現地を見ろ」


魔物学でも習ったことだった。


情報は古くなる。


今日の森を知っているのは、今日そこへ入る自分たちだ。


---


最初のうちは順調だった。


資料に載っている小型魔物の足跡。


低い位置についた木の傷。


食べられた木の実。


一つ見つけるたびに必要な者だけが確認し、残りは周囲を見る。


「右、異常なし」


エイルが言う。


「後ろも大丈夫」


ミナが答える。


ノアとセレナが痕跡を確認する。


レオンが報告をまとめる。


三回目よりずっと滑らかだった。


バルガは後ろを歩いている。


ほとんど何も言わない。


エイルは少し嬉しかった。


自分たちだけでも、ちゃんと動けるようになってきた。


---


昼前。


先頭のレオンが止まった。


手を上げる。


全員がその場で止まった。


「何かある?」


エイルが聞く。


「足跡」


ノアが前へ出る。


エイルは自分の位置から周囲を見たまま、地面を覗いた。


今までのものより大きい。


かなり大きい。


「これ……」


カイも気づいた。


「資料にあった?」


セレナが確認する。


一枚。


もう一枚。


首を振った。


「ありません」


レオンがバルガを見る。


「先生」


バルガが近づいた。


足跡の前にしゃがむ。


しばらく見てから、その周囲も確認する。


「何の魔物ですか?」


レオンが聞いた。


「分からん」


「先生も?」


カイが聞く。


「ああ」


バルガは立ち上がった。


「少なくとも、学校が今回想定していた三種類のものではない」


エイルが足跡を見る。


「危ない魔物?」


「それも分からん」


「大きいけど」


「足跡が大きい。それは分かる」


バルガがエイルを見る。


「そこから先はまだ分からん」


第一回で何度も言われたことだった。


見えたことと。


想像したことを混ぜない。


---


レオンが聞いた。


「どうすればいいですか?」


「それを考えるのが今日の訓練だ」


バルガは答えた。


それから、すぐに付け加えた。


「ただし、俺もこの痕跡の正体を知っていて黙っているわけじゃない」


六人を見る。


「俺にも分からん」


エイルは足跡を見た。


今までとは少し違った。


先生が答えを持っていて、それを当てる問題ではない。


本当に、誰も答えを知らない。


「まず分かっていることを整理しよう」


レオンが言った。


---


六人は道の端へ寄った。


「五日前は異常なし」


セレナ。


「今は資料にない足跡がある」


ノア。


「大きい」


カイ。


「それは見れば分かる」


「でも情報だろ」


「そうですね」


「ほら」


カイが少し得意そうな顔をする。


エイルは周囲を見ながら聞いた。


「何匹?」


「分からない」


ノアが答える。


「いつ?」


「それも分からない」


「どっち行った?」


これは分かった。


足跡は道を横切って、森の奥へ続いている。


自分たちが進む方向とは違う。


「じゃあ、もういない?」


ミナが聞く。


「そうとは限りません」


セレナが答える。


「戻ってきているかもしれませんし、別の個体がいる可能性もあります」


分からないことが多い。


それでも今のところ。


音はしない。


ほかの痕跡もない。


足跡は進路から外れている。


「戻る?」


カイが聞いた。


「足跡一個で?」


ミナが言う。


「でも何か分からないんだぞ」


「だからって、知らない足跡を見るたびに全部戻ってたら森を歩けないよ」


どちらも分かる。


エイルはレオンを見る。


レオンはすぐには答えなかった。


---


「次の開けた場所まで行こう」


しばらくしてレオンが言った。


「そこまで?」


「ああ。距離は近い」


地図を指す。


「ただし、何かもう一つ見つけたら、そこで止まってもう一度考える」


「足跡でも?」


「何でもいい。同じ足跡、木の傷、糞、鳴き声」


セレナが頷いた。


「今より、近くにいる可能性が高くなる情報が出たら、ということですね」


「そう」


全員が納得した。


レオンはバルガを見る。


「進みます」


バルガは周囲を確認した。


「分かった」


それだけだった。


---


進む速度は自然と遅くなった。


さっきまでより、森が静かに感じる。


エイルは左を見る。


何もない。


枝が揺れた。


風だった。


また歩く。


しばらくして。


「止まってください」


セレナの声。


全員が止まった。


「上です」


少し先の木。


エイルが見る。


高い位置の樹皮が、大きく剥がれている。


ノアが確認する。


「さっきまでの小型魔物の傷じゃない」


「古い?」


レオンが聞く。


「かなり古いようには見えない」


さらに。


木の近くの地面にも、跡があった。


大きな足跡。


さっきと似ている。


一つ。


その先にも。


「同じやつ?」


エイルが聞く。


「同じ種類の可能性は高そうです」


セレナが答える。


そしてノアが、足跡の先を見る。


「これ……道と同じ方向に行ってる」


全員が黙った。


さっきは横切っていた。


今度は違う。


自分たちが向かう先へ続いている。


レオンがバルガを見る。


バルガも足跡と木の傷を確認した。


「これも、事前の調査では確認されていない」


「先生もまだ分からない?」


エイルが聞いた。


「ああ」


バルガの返事は変わらなかった。


「ただ、さっきより情報は増えた」


それだけ言って、バルガは下がった。


決めるのは六人だった。


目的地はこの先。


遠くはない。


だが。


正体の分からない何かも、同じ方向へ進んでいる。


レオンが地図を開いた。


「どうする?」


今度は、すぐに答える者はいなかった。


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