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THE GUILD  作者: axe
第四章 旅の仕事
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第百六十六話 受けるかどうか


翌朝。


エイルが食堂へ下りると、ガレスはすでに朝食を食べていた。


「おはようございます」


「ああ」


エイルも向かいに座り、パンとスープを頼む。


「昨日の話、聞きに行きますよね」


「ああ」


「俺も行きます」


「好きにしろ」


朝食を済ませると、二人は宿を出た。


---


最初に向かったのは、昨日も立ち寄った馬を預かる店だった。


朝ということもあって、何台かの荷車が出発の準備をしている。


ガレスは店の男に聞いた。


「南から来た奴はいるか?」


「今朝着いたのなら、あそこだ」


指された先には、二人の男がいた。


荷車の横で馬具を外している。


ガレスが声をかけた。


「ラクトから来たのか?」


一人が振り返る。


「ああ」


「街道で何か変わったことは?」


「何かって?」


「襲われた荷車があると聞いた」


「ああ、その話か」


男は馬具を置いた。


「俺たちは何もなかったぞ」


「道中で騎士は見たか?」


「見たな。一度だけ」


「どの辺りだ?」


男は少し考えてから答える。


昨日聞いた、荷車が襲われた場所より北だった。


「ほかの商人は?」


「普通に走ってる」


横にいた男も口を挟む。


「ただ、あの辺りじゃ前より固まって走る奴は増えたかもな」


エイルが反応する。


「一台で行かないってことですか?」


「ああ。宿で行き先が同じ奴を探したりな」


「護衛を増やしてる人もいます?」


「いるんじゃないか? 俺たちも一人増やした」


「今回だけですか?」


「そうだ」


「やっぱり盗賊がいるから?」


「そりゃ、何もなけりゃ増やさない」


エイルはガレスを見る。


ガレスはさらに聞いた。


「襲われた場所を通ったか?」


「ああ」


「何か見たか?」


「何も」


「林の中は?」


「わざわざ見に行くかよ」


「そうだな」


ガレスは礼を言って離れた。


---


そのあとも、南から来た御者や商人を何人か探した。


話は少しずつ違った。


盗賊は五人だった。


いや、十人近かったらしい。


剣を持っていた。


弓もいた。


道に木を倒して荷車を止めた。


そんなものはなかった。


エイルは途中から混乱してきた。


「全然違いますね」


「ああ」


「どれが本当なんですか?」


「分からん」


「これ、聞く意味あります?」


「ある」


ガレスは歩きながら答える。


「同じ話が何度も出れば、それは少し使える」


「少し?」


「自分で見た奴がいないからな」


「ああ……」


エイルは今まで聞いた話を思い返す。


人数や武器はバラバラだった。


一方で、共通していることもある。


襲われた場所。


荷車が二台だったこと。


少なくとも一人は怪我をしたこと。


そして、その後も街道自体は使われている。


「人数は分からないままですね」


「ああ」


「でも、南から普通に荷車は来てる」


「ああ」


「護衛を増やした人もいる」


「そうだな」


ガレスはそこで足を止めた。


「お前なら受けるか?」


「俺ですか?」


「ああ」


エイルは少し考えた。


「……昨日よりは、受けてもいいと思います」


「なんでだ」


「南から普通に人が来てるからです。危ないから誰も通らない、ってほどではない」


「ほかは?」


「騎士も見回ってる」


「ほか」


エイルは考える。


「商人の荷車は三台。護衛はもう一人いる。それにガレスさんと俺が加わる」


「お前は一人分に数えるな」


「分かってます」


エイルは少しむっとして答えた。


「でも、何かあったら俺も何もしないわけじゃないですよね」


「それはそうだ」


「だったら昨日よりは受けてもいいかなって」


ガレスは再び歩き出した。


「報酬が上がればな」


「あ、そこはまだなんですね」


「そこが一番決まってない」


---


西の宿へ戻ると、昨日の商人は店の前にいた。


荷車の積み荷を確認している。


ガレスを見ると、向こうから声をかけてきた。


「決めたか?」


「昨日の額なら受けん」


「まだ言うのか」


「なら別を探せ」


商人は顔をしかめた。


「出発は今日なんだぞ」


「俺には関係ない」


「分かった、分かった」


商人が昨日より少し高い金額を出した。


ガレスは首を振る。


そこからまた話が始まった。


エイルは横で聞いている。


今回は昨日ほど長くなかった。


商人も出発を遅らせたくないらしい。


最後にガレスが金額を一つ出した。


「二人でそれか?」


「ああ」


「食事は?」


「道中はそっち持ち」


「泊まるなら?」


「それもそっち持ちだ」


商人が唸る。


「高いな」


「盗賊が出たんだろ」


「出るとは限らん」


「その話は昨日した」


しばらくして、商人が息を吐いた。


「分かった。それでいい」


「出発は?」


「昼前には出たい」


「荷を見せろ」


「荷?」


「何を運ぶかは聞いた。実物を見る」


商人は少し怪訝そうな顔をしたが、三台の荷車へ二人を案内した。


---


布。


酒。


金物。


聞いていたものと違いはなかった。


ガレスは荷車の周囲を回り、積み方も確認していく。


一台目。


二台目。


三台目。


そこで、荷を固定している縄を引いた。


少し緩んでいる。


「これ、締め直せ」


御者が縄を確認する。


「これくらいなら大丈夫だろ」


「途中で崩れても俺は積み直さんぞ」


「分かったよ」


御者は面倒そうに縄を締め直した。


エイルはその様子を見ていた。


以前、自分が荷運びの仕事をしていたときにも、途中で縄が緩んだことがあった。


「やっぱり緩むんですね」


「ああ」


「前にも一回ありました」


「なら道中も見とけ」


「はい」


---


最後に、先に雇われていた護衛と顔を合わせた。


男の顔を見て、エイルは足を止めた。


どこかで見た顔だった。


向こうもエイルを見て、少し眉を寄せる。


「……お前」


「あ」


エイルも思い出した。


「ダンさん?」


「エイルだったか」


「はい。ラダまで一緒だった」


以前、エイルが荷運びの仕事で北へ向かったとき、一緒に街道を歩いた護衛だった。


「また護衛してるんですね」


「それが仕事だからな」


「そりゃそうか」


エイルが笑う。


ダンはその隣にいるガレスを見る。


「そっちは?」


「ガレスだ」


「ダンだ」


二人は短く名乗り合った。


ダンがもう一度エイルを見る。


「今度は荷運びじゃないのか?」


「今回はガレスさんの補助です」


「そうか」


それ以上、ダンは特に驚かなかった。


「前は俺が行く。後ろはそっちでいいか?」


ガレスが聞く。


「ああ。そのつもりだった」


話はすぐに仕事の方へ移った。


エイルも三台の荷車を見る。


前にダン。


後ろにガレスと自分。


「俺はガレスさんと一緒でいいんですよね?」


「ああ」


「分かりました」


---


昼前。


三台の荷車が町を出た。


先頭の少し前をダンが歩く。


その後ろに三台の荷車。


ガレスとエイルは最後尾についた。


しばらく歩いてから、エイルが前を見る。


以前は、同じような荷車のそばで荷物を扱いながら歩いていた。


今はガレスの隣にいる。


前方には、見覚えのあるダンの背中があった。


「三日でしたよね」


エイルが聞く。


「ああ」


「何も起きなかったら、そのままラクトに着いて終わりですか?」


「そうだ」


「それが一番いいですね」


「護衛ならな」


街道は南へ伸びている。


三台の荷車が、ゆっくりとその道を進んでいった。


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