↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE GUILD  作者: axe
第四章 旅の仕事
PR
165/403

第百六十五話 次の仕事


ベルノを出て、二日。


エイルとガレスは街道沿いの小さな町に着いた。


村よりは大きいが、学校のあった街とは比べものにならない。


街道の両側に宿や食堂、馬を預かる場所が並び、その奥に家や店が広がっている。


荷車も多かった。


「今日はここですか?」


「ああ」


ガレスは町へ入ると、まず宿を探した。


値段を聞き、部屋を見る。


一軒目では泊まらず、二軒目へ行った。


エイルは後ろについていく。


「最初のところじゃ駄目だったんですか?」


「高い」


「そんなに違いました?」


「何日いるか分からんからな」


「ああ」


一泊なら小さな差でも、何日もいれば大きくなる。


二軒目で部屋を取り、荷物を置く。


「それで、仕事を探すんですよね」


「ああ」


「どこから行きます?」


「飯だ」


「また飯ですか?」


「昼を過ぎてる」


「……本当だ」


外へ出る。


エイルは空を見上げた。


移動していると、時間の感覚がよく分からなくなる。


---


食堂に入ると、ガレスは料理を頼んだあと、店の男に聞いた。


「最近、この辺りで人を探してるところはあるか?」


「仕事か?」


「ああ」


「何ができる?」


「護衛、採取、魔物の対処。あとは内容次第だ」


男は少し考えた。


「南へ行く商人が護衛を探してた気がするな」


「誰だ?」


「名前までは知らん。西の宿に泊まってる連中だ」


「ほかは?」


「さあな。馬を扱ってるところなら、荷運びの話を知ってるかもしれん」


「分かった」


食事が来てから、エイルが聞く。


「宿の人じゃなくても聞くんですね」


「知ってそうならな」


「誰が知ってそうかは、どうやって分かるんです?」


「人が集まるところから聞く」


「食堂とか?」


「ああ。宿、酒場、馬を扱うところ。商人が多い町なら商会もだ」


エイルはパンをちぎる。


「学校で聞いたのと同じだ」


「何が」


「仕事を探すときの話です。店とか商会とか、知ってそうな人に聞くって」


「なら聞くな」


「実際にやると違うかなと思って」


「違ったか?」


「今のところ同じです」


「そうか」


ガレスはそれ以上気にせず食べ続けた。


---


食後、二人は西の宿へ向かった。


店の前には荷車が三台止まっている。


中へ入り、主人に聞くと、南へ向かう商人は確かに泊まっていた。


しばらく待つと、四十代くらいの男が出てくる。


「護衛を探してるって聞いた」


ガレスが言った。


男は二人を見る。


「そうだ。あんたら、できるのか?」


「話を聞いてから決める」


「決めるのはこっちだろ」


「お互いにな」


商人は少し黙ってから笑った。


「まあいい。座れ」


三人で宿の隅の席につく。


「どこまで行く?」


ガレスが聞く。


「南のラクトまで」


エイルは知らない町だった。


「何日だ」


「順調なら三日」


「荷は?」


「布と酒、それから金物」


「荷車三台?」


「ああ」


「御者は?」


「三人。俺を入れて四人」


「護衛は?」


「今のところ一人いる。あと二人欲しい」


「道は?」


「街道をそのまま南だ」


「最近何かあったのか?」


商人が少し嫌そうな顔をした。


「それを聞くか」


「聞かずに受けると思うか?」


「まあ、そうだな」


男は声を少し落とした。


「先月、荷車が襲われたらしい」


「何に?」


「人だ」


エイルは顔を上げた。


「盗賊ですか?」


商人がエイルを見る。


「ああ。たぶんな」


「たぶん?」


「俺が見たわけじゃない。南から来た商人に聞いただけだ」


ガレスが続ける。


「場所は?」


「ラクトとの中間より少し南」


「一度だけか?」


「俺が聞いたのは一度だ」


「騎士は?」


「街道を見回ったらしいが、捕まったって話は聞いてない」


ガレスは少し考える。


「報酬は?」


商人が金額を言った。


エイルには高いのか安いのか、すぐには分からない。


ガレスは首を横に振った。


「安い」


「三日だぞ」


「盗賊の話がなければな」


「出るとは限らん」


「なら、お前が護衛なしで行けばいい」


商人が顔をしかめる。


「それが嫌だから探してるんだ」


「なら危険な分は払え」


二人の間で、しばらく金額のやり取りが続いた。


エイルは黙って聞く。


最初より少し上がった。


それでもガレスは受けなかった。


「明日の朝まで考える」


「ほかに決まったら知らんぞ」


「それならそれでいい」


宿を出る。


---


「受けないんですか?」


エイルが聞いた。


「まだな」


「報酬が安いからですか?」


「それもある」


「ほかにも?」


「話が足りん」


ガレスは歩きながら答える。


「盗賊が何人いたのか。武器は何だったのか。どこで襲われたのか。ほかにも被害があるのか」


「商人の人は知らなかったですね」


「ああ」


「じゃあ、調べるんですか?」


「聞けるだけな」


エイルは少し考える。


「誰に聞くんです?」


「南から来た奴だ」


「どうやって探すんです?」


ガレスが街道を見る。


「荷車を見ろ」


何台もの荷車が行き来している。


エイルには、どこから来たのか見ただけでは分からない。


「分かりません」


「だろうな」


「ガレスさんは分かるんですか?」


「全部は分からん」


「じゃあ、どうするんです?」


「聞く」


「結局それなんですね」


「ああ」


---


馬を預かる店へ行くと、ちょうど南から到着した荷車があると教えてもらえた。


御者は馬具を外しているところだった。


ガレスが声をかける。


「ラクトから来たのか?」


「ああ」


「途中で何かあったか?」


「何も」


「盗賊の話は?」


男の手が止まった。


「聞いたのか」


「少しな」


「俺も見てないぞ」


「知ってる範囲でいい」


御者は馬の背を撫でながら話した。


襲われたのは一台ではなく、二台の荷車だったらしい。


人数は分からない。


ただ、生き残った御者が町まで戻ってきたという。


「荷は?」


「かなり取られたって話だ」


「人は?」


「一人怪我した。死んだ奴はいなかったと思う」


「どこだ?」


御者は道の様子を説明した。


林が街道の近くまで迫る場所。


ガレスはさらにいくつか聞いた。


最近、同じ場所を通った者はいるか。


騎士の見回りはあったか。


道が塞がれていたのか。


相手は追ってきたのか。


御者が知っていることは、それほど多くなかった。


礼を言って離れる。


「どうです?」


エイルが聞いた。


「まだ分からん」


「でも、さっきより増えましたね」


「ああ」


「二台だった。怪我人が一人。場所も少し分かった」


「そうだな」


エイルは指を折る。


「でも人数は分からない」


「ああ」


「武器も分からない」


「ああ」


「……これで受けるんですか?」


ガレスは答えず、歩き続けた。


---


夕方。


宿の部屋で、ガレスは地図を広げた。


エイルも向かいに座る。


町からラクトまでの街道。


途中に小さな村が二つ。


御者が話していた場所は、その先だった。


「ここですか?」


エイルが指す。


「たぶんな」


「林が近いところ」


「ああ」


「盗賊がいるなら、またそこにいるんですか?」


「分からん」


「場所を変えるかもしれない?」


「そもそも盗賊がまだいるかも分からん」


エイルは地図を見る。


「分からないこと多いな……」


独り言のように呟く。


ガレスが顔を上げる。


「全部分かるまで待ってたら、仕事にならん」


「じゃあ、どこまで分かったら決めるんですか?」


「自分が受けられる危険かどうか判断できるところまでだ」


「今は?」


「微妙だな」


エイルは少し驚いた。


「ガレスさんでも迷うんですね」


「迷うだろ」


「もっと、すぐ決めるのかと思ってました」


「知らんことが多いほど、すぐ決める理由がない」


エイルは地図へ目を戻した。


「明日の朝までに、もう少し聞きます?」


「ああ」


「それで駄目なら?」


「断る」


「仕事なくなりますよ?」


「また探す」


エイルは少し黙った。


宿代も食事代もかかる。


仕事を受けなければ、その分だけ金は減っていく。


それでも、分からないことだらけの仕事に飛びつく必要もない。


「明日、俺も聞いてみます」


「誰に」


「南から来た人です」


「何を聞く」


エイルは少し考える。


「最近、街道で変わったことがなかったか。盗賊を見た人を知らないか。それと……」


ガレスが待つ。


「護衛を増やしてる商人が多いか」


「なんでだ」


「危ないって思ってる人が増えてるなら、何か理由があるかもしれないからです」


「聞いてみろ」


「はい」


エイルは地図を見た。


次の仕事は、まだ決まっていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。