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THE GUILD  作者: axe
第四章 旅の仕事
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第百六十二話 残りの二頭


ベルノへ戻ると、ロマは柵の前にいた。


エイルが羊を連れているのを見るなり、こちらへ歩いてくる。


「それ、うちのだ」


「やっぱり?」


「ああ」


ロマは羊の首元を確認した。


「間違いない」


縄を受け取ると、羊の身体を一通り見る。


大きな怪我がないことを確認してから、柵の中へ戻した。


「どこにいた?」


「東の村です」


エイルが答えた。


「道を歩いてたところを、向こうの人が預かってくれてました」


「そんなところまで行ってたのか」


ロマは羊を見る。


「こいつは昔から柵を抜けるようなやつじゃなかったんだがな」


ガレスが聞いた。


「最初に消えたのはこいつか?」


ロマは少し考える。


「分からん」


「三頭を見分けられるか」


「もちろんだ」


「どの順番で消えたかは?」


「そこまでは覚えてない。最初の二頭は同じような白いやつだったからな」


ガレスは羊へ目を向けた。


「そうか」


---


ガレスはそのまま柵をもう一度見始めた。


昨日確認した場所ではなく、今度は外側をゆっくり歩いていく。


エイルも少し離れてついていった。


「まだ調べるんですか?」


「ああ」


「一頭は逃げただけでしたよ」


「一頭はな」


残りは二頭。


エイルも地面を見る。


昨日まで何度も羊が歩いているため、蹄の跡はいくらでもある。


その中から何かを見つけろと言われても難しい。


しばらく歩いたところで、ガレスが門の前に戻った。


「ロマ」


「なんだ」


「羊を出す時、誰が門を開ける」


「俺か息子だ」


「戻す時は?」


「同じだ」


「一度に全部入れる?」


「ああ」


「数えるのは?」


「中に入れてからだ」


ガレスは門を見る。


「逃げた一頭が、いつ外へ出たか分からんな」


「そうだな」


ロマもようやく気づいたようだった。


「昼の間に群れから離れて、そのまま戻らなかった可能性もあるってことか?」


「ああ」


「でも残り二頭も?」


「それを今から見る」


---


ニルの家へ行くと、今日はいた。


左手に弓を持ち、矢筒を背負っている。


「また山ですか?」


エイルが聞く。


「罠を見に行く」


ニルは二人を見る。


「羊は?」


「一頭見つかった」


「生きてたか?」


「ああ」


「そりゃよかった」


ガレスが聞いた。


「罠はどっちだ」


「北の林だ」


「東には行かない?」


「今日はな」


「なら一つ聞きたい」


ニルが足を止める。


「最初に狼の跡を見た時、羊の跡も一緒にあったか?」


「羊の?」


「ああ」


ニルはしばらく考えた。


「そこまでは見てない」


「狼の跡だけ見つけた?」


「そうだ」


「どっち向きだった」


「林から出てきた方だと思ったが……」


ニルが眉を寄せる。


「いや、逆かもしれん」


ガレスは頷いた。


「分からんならいい」


「悪いな」


「何日も前の跡だ。そんなもんだ」


ニルはそのまま北へ向かった。


---


「また分からなくなりましたね」


エイルが言った。


「最初から分かってない」


「狼が怪しいと思ってました」


「ニルもそう思っただけだ」


二人は村の東側へ向かう。


昨日見つけた羊毛の場所まで歩いた。


ガレスはそこで足を止めず、さらに周囲を見て回る。


エイルも草の間を見る。


少し離れた場所で、白い毛が目に入った。


「こっちにもあります」


ガレスが来る。


昨日より少ない。


数本だけだった。


その先にもある。


「同じ羊ですかね」


「分からん」


「ですよね」


エイルはもう慣れてきた。


ガレスが少しだけ口元を動かした。


---


二人は毛を追った。


昨日とは違う方向だった。


林の北側へ回り込み、低い斜面を上がる。


途中から羊毛は見つからなくなった。


代わりに、柔らかい土の上に蹄の跡が残っている。


ガレスがしゃがむ。


「羊ですね」


「ああ」


一頭分なのか、何頭分なのか。


エイルには分からない。


ガレスもすぐには答えなかった。


足跡は斜面を上っている。


二人は追った。


上まで出ると、向こう側に小さな谷があった。


草が伸び、その先には木が集まっている。


エイルが辺りを見回す。


「ここ、羊が来るんですか?」


「ロマに聞かないと分からん」


斜面を下りる。


途中でガレスが止まった。


エイルもすぐ止まる。


「何です?」


ガレスは答えず、少し先を指した。


草が倒れている。


その間に白いものが見えた。


エイルは目を凝らす。


羊だった。


横倒しになっている。


動いていない。


---


ガレスが先に近づいた。


エイルは少し後ろで待つ。


ガレスが周囲を確認してから手で呼んだ。


エイルも近づいた。


羊は死んでいた。


身体の一部が食われている。


「狼ですか?」


「傷を見る」


ガレスが羊の首元を調べる。


毛を分けると、血の固まった跡があった。


「噛まれてる」


エイルも見える位置から覗く。


首に深い傷がある。


「じゃあ、一頭目とは違う」


「ああ」


ガレスは地面を見る。


羊の周囲には土が露出した場所がある。


そこに足跡が残っていた。


四本の指。


犬に似ている。


エイルにも分かった。


「昨日の毛のやつ?」


「可能性はある」


「普通の狼?」


ガレスは足跡の横に手を置いた。


大きさを見ている。


「少なくとも森牙ほどじゃない」


足跡は一つではない。


羊の周り。


谷の奥。


斜面。


いくつも重なっている。


エイルが数えようとした。


「一、二……」


「数えるな」


「え?」


「同じやつが何度も歩いてる」


「ああ」


エイルはやめた。


ガレスは少し離れた跡も確認する。


「でも一頭じゃない」


「分かるんですか?」


「大きさが違う」


エイルも見比べる。


言われてみれば、少し小さな跡が混じっていた。


「何頭?」


「まだ分からん」


ガレスは立ち上がった。


---


死骸には、それほど古くない食べ跡があった。


ガレスは周囲を調べたが、谷の奥へは進まなかった。


「戻るぞ」


「追わないんですか?」


「ああ」


「足跡は続いてますよ」


「だからだ」


エイルは谷の奥を見る。


木々の間は暗い。


「複数いるから?」


「それもある」


ガレスは羊の死骸を指した。


「ここに戻ってくるかもしれん」


「狼が?」


「ああ」


「待てば見られる?」


「見られるかもしれん」


「じゃあ――」


「今日は二人だ」


ガレスは歩き出した。


「数も分からん。地形も知らん。ここで待つ理由がない」


エイルもついていく。


森牙の時と同じだった。


見つけたから、そのまま戦うわけではない。


---


ロマは死んだ羊の特徴を聞くと、すぐにどの個体か分かった。


「二頭目に消えたやつだ」


「残り一頭だな」


ガレスが言う。


ロマの顔は重かった。


「狼だったのか?」


「犬に近い足跡はあった」


「狼じゃない?」


「まだ見てない」


「でも羊は食われてたんだろ」


「ああ」


「なら狩ってくれ」


ガレスはすぐには答えなかった。


「何頭いるか分からん」


「一頭じゃないのか?」


「足跡は複数ある」


ロマが黙る。


「調べるなら、もう一日いる」


ガレスが続けた。


「その上で、俺たちでやれるなら別に金の話をする」


「また別か」


「ああ」


ロマは嫌そうな顔をした。


だが、今度はすぐに断らなかった。


柵の中の羊を見る。


その中には、昨日戻ってきた一頭もいる。


「……分かった」


ガレスが頷いた。


「今日は羊を東へ出すな」


「ああ」


「夜もできるだけ家の近くに置け」


「分かった」


---


泊まっている家へ戻る途中、エイルが聞いた。


「明日も俺は一緒ですか?」


「調べるところまではな」


「その後は?」


「見てからだ」


エイルは頷いた。


森牙の時とは違う。


今度は最初から、ガレスと一緒に跡を追っている。


だが、だからといって戦う側に入ったわけではない。


その線はまだ残っていた。


村の向こうで、羊の鳴き声が聞こえた。


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