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THE GUILD  作者: axe
第四章 旅の仕事
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第百六十話 村の猟師


ベルノには宿と呼べるほどのものはなかった。


村の女に聞くと、旅人を泊めることがある家を教えてくれた。


夕食と寝床をつけてもらい、二人はそこで猟師が戻るのを待つことにした。


「今日はもう仕事ないですね」


エイルが言った。


「たぶんな」


ガレスは荷物を壁際へ置いた。


「ハルドに戻った方が稼げたんじゃないですか?」


「そうかもな」


「三頭の羊が魔物じゃなかったら?」


「明日戻る」


エイルは頷いた。


ベルノまで来たからといって、仕事になるとは限らない。


今日の宿代と食事代は、自分たちで払う。


---


日暮れが近づいた頃、村の外から犬の鳴き声が聞こえた。


少しして、一人の男が戻ってきた。


背負っているのは弓と獲物だった。


大きな兎が二羽。


腰には短い山刀を下げている。


年はガレスより少し若く見える。


ロマがその男を呼び止めた。


少し話したあと、こちらを指した。


男がガレスを見る。


ガレスも立ち上がった。


「羊を見たのはあんたか」


「ああ。ニルだ」


「ガレスだ」


それだけ名乗る。


ニルはエイルにも目を向けた。


「そっちは?」


「エイルです」


「一緒に来てる」


ガレスが言った。


ニルは頷き、背負っていた獲物を下ろした。


「ロマから聞いた。羊の件を調べたいんだって?」


「まだ受けてない。あんたが見たって聞いたから、先に話を聞きたい」


「そうか」


ニルは近くの木箱に腰を下ろした。


---


「最初に見たのは?」


「三頭目がいなくなった次の日だ」


ニルが答える。


「柵の周りと、羊を出してる草地を見た」


「跡は?」


「あった」


「何の」


「狼に見えた」


エイルは黙って聞く。


「普通の狼か?」


ガレスが聞く。


ニルが少し間を置いた。


「たぶん」


「たぶん?」


「跡がきれいに残ってなかった。雨も降ったし、羊の跡だらけだ」


「大きさは?」


ニルが手で示す。


「これくらいだ」


「一頭?」


「分からん」


「血は?」


「なかった」


「毛は?」


「それらしいのを少し拾った」


「残ってるか?」


「ああ」


ニルは立ち上がった。


「家にある」


しばらくして戻ってくる。


小さな布の中に、灰色がかった毛が数本入っていた。


ガレスが受け取る。


指で触り、光にかざす。


「狼っぽいな」


「だろ」


「森牙では?」


エイルが聞いた。


ガレスが毛を見る。


「これだけなら、そうは見えん」


ニルも頷く。


「俺も森牙なら、もう少し硬い毛だと思った」


「見たことあるんですか?」


「二度だけな」


エイルはそれ以上聞かなかった。


---


「それで、なんで狼だと思ってるのに捕まえてない?」


ガレスが聞いた。


ニルは少し笑った。


「俺にも仕事がある」


足元の兎を指す。


「毎日ロマの羊を探して歩けん」


「頼まれたんじゃないのか」


「一度見てくれって頼まれただけだ」


「金は?」


「肉を少しもらった」


「それで終わりか」


「ああ」


ニルは肩をすくめる。


「狼なら、また来た時に追えばいいと思ってた」


「来たか?」


「それから羊は減ってない」


ガレスが黙った。


エイルもロマの話を思い出す。


最後の一頭が消えてから、すでに何日か経っている。


「じゃあ、もういないかもしれない?」


エイルが聞く。


「かもしれん」


ニルが答えた。


「ただな」


「何です?」


「変なのが一つある」


ガレスが顔を上げる。


「何だ」


「羊がいない」


「それは聞いた」


「そうじゃない」


ニルは首を振った。


「狼に持っていかれたなら、どこかに血くらい残りそうなもんだろ」


「三頭とも?」


「ああ」


「柵の外も見たか」


「見た。近くはな」


「羊が逃げた跡は?」


「分からん。あそこは羊の足跡だらけだ」


ガレスは少し考えた。


「柵を見せてくれ」


---


まだ明るさが残っていた。


四人でロマの牧場へ向かう。


ニルが最初に調べた場所を案内した。


「ここだ」


柵の一角。


壊れてはいない。


ガレスは板の間隔を見る。


そのまま地面へ目を落とした。


「羊なら抜けられるか?」


「子ならな」


ロマが答える。


「いなくなったのは?」


「全部大人だ」


「ならここからは難しいな」


エイルも柵を見る。


飛び越えた可能性もある。


門から出た可能性もある。


誰かが出した可能性もある。


まだ何も決まらない。


ガレスがニルを見る。


「跡を見つけたのは?」


「こっちだ」


柵沿いに少し歩く。


草地の端。


「この辺だった」


ニルが示した。


今はもう、何も残っていない。


「雨の前か」


「ああ」


「どっち向きだった」


「森の方だと思う」


ガレスが顔を上げた。


牧場の東には低い丘がある。


その先に林が続いていた。


「羊を普段出すのは?」


ロマが丘とは反対側を指した。


「主に南だ」


「東には?」


「たまに行く」


ガレスはしばらく丘を見た。


---


「明日の朝、見る」


ガレスが言った。


ロマが顔を上げる。


「引き受けるのか?」


「調査だけだ」


「昨日言ってた金で?」


「ああ」


「魔物じゃなくても?」


「ああ」


ロマは少し迷ってから頷いた。


「分かった」


話が決まる。


ニルがガレスを見る。


「俺も来た方がいいか?」


「明日はいい」


「そうか」


「ただ、また狼の跡を見つけたら消すな」


「消してないよ」


「踏むなって意味だ」


「分かってる」


ニルが少し笑った。


---


泊めてもらう家へ戻る途中、エイルが聞いた。


「明日は俺も行っていいですか?」


「ああ」


ガレスはすぐに答えた。


エイルが少し驚いて横を見る。


「いいんですか?」


「調べるだけだからな」


「森にも?」


「必要なら入る」


ガレスは続けた。


「ただし、見つけても追わない」


「はい」


「前に出ない」


「はい」


「跡を見つけたら勝手に踏むな」


「それも分かってます」


「ならいい」


エイルは少しだけ笑った。


前にも聞いたことばかりだった。


それでもガレスは確認する。


明日は、森牙の時とは違う。


何がいるのかさえ、まだ分かっていない。


二人は暗くなる前に宿へ戻った。


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