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THE GUILD  作者: axe
第四章 旅の仕事
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第百五十九話 東の羊


ハルドで取った宿は、通りから一本入ったところにあった。


エイルが見つけた中では安い方だったが、荷物を置く場所には鍵がかかり、食事も出る。


部屋を見たガレスは、それだけ確認して荷物を下ろした。


「ここでいい」


「もう一軒、少し安いところもありましたよ」


「荷物は?」


「部屋の隅に置くだけでした」


「ならこっちだ」


エイルも荷物を置いた。


安い宿を探せと言われたが、値段だけで決めるわけではないらしい。


---


二人は宿を出ると、昨日荷車の男から聞いた酒場へ向かった。


まだ客は少ない。


ガレスは店の主人に声をかけた。


「東の方で羊が減ったって話を聞いた」


「ああ」


主人はすぐに思い出した。


「ベルノだな」


「どこだ」


「ここから東だ。丘を二つ越えた先にある」


「いつの話だ」


「何日か前だな」


「何頭やられた」


「やられたかは知らんぞ」


主人は首を振った。


「羊がいなくなったって話だ」


「死骸は?」


「そこまでは聞いてない」


「誰から聞いた?」


「羊毛を運んできた商人だ。ベルノを通ってきたって言ってた」


ガレスが頷く。


昨日よりは話が具体的になった。


それでも、まだ分からないことの方が多い。


「その商人は?」


「もう西へ行ったよ」


「そうか」


ガレスは水を一杯頼んだ。


エイルも隣に座る。


「ベルノに行きます?」


「まだだ」


「まだ?」


「他でも聞く」


ガレスは水を飲み干した。


---


次に入ったのは、羊毛や革を扱っている店だった。


店先には毛を束ねた大きな袋が積まれている。


ガレスがベルノの名前を出すと、店主は知っていた。


「羊がいなくなった話なら聞いたぞ」


「何頭だ」


「三頭だったかな」


「いつ頃だ」


「最初の一頭は何日か前だと言ってたな」


「誰から聞いた?」


「ベルノの羊飼いだ」


ガレスが顔を上げる。


「本人が来たのか」


「ああ。羊毛を持ってきた」


「人を探してるとは?」


「そこまでは聞いてないな」


「魔物の話は?」


「それも知らん」


店主は積んである羊毛を指した。


「俺が聞いたのは、羊が三頭いなくなったってところまでだ」


「分かった」


二人は店を出た。


---


「三頭」


歩きながらエイルが言った。


「ああ」


「さっきよりはっきりしましたね」


「話した本人に近づいただけだ」


「本人に聞けば、もっと分かる?」


「普通はな」


「じゃあベルノへ?」


ガレスは少し考えた。


「行く」


エイルが頷く。


「今から?」


「いや」


ガレスは通りの向こうを見る。


日が傾き始めている。


「今日はここで仕事を探す。行くなら明日の朝だ」


「分かりました」


せっかくハルドまで来たのだから、何もせず一日を終える必要はない。


二人は市場の方へ向かった。


---


その日は、商店の荷を倉へ移す仕事が見つかった。


二人で木箱を運ぶ。


それほど重いものではないが、数が多い。


身体強化を使うほどでもない箱はそのまま運び、重いものだけ二人で持つ。


途中、店の主人が急かした。


「そっち、二つまとめていけないか?」


エイルが箱を見る。


持てなくはない。


だが、上に積めば前が見えにくくなる。


「一つずつ運びます」


「時間かかるぞ」


「落としたらもっとかかりますよ」


主人は一瞬黙り、


「それもそうだな」


と引いた。


少し離れたところでガレスが箱を運んでいる。


こちらを見てはいなかった。


エイルもそのまま次の箱を取りに戻った。


仕事が終わると、二人は約束した分の賃金を受け取った。


---


翌朝、二人はハルドを出た。


東へ向かう。


道は次第に細くなり、畑の代わりに草地が増えていった。


途中、羊を連れた男とすれ違う。


ガレスが道を聞いた。


「ベルノならこのままだ」


男が答える。


「丘を越えたら見える」


「最近、向こうで羊がいなくなったと聞いた」


「ああ、それか」


男も知っていた。


「魔物ですか?」


エイルが聞く。


「知らん」


男は羊の群れを見る。


「狼じゃないかって話もあるけどな」


「普通の狼?」


「だから知らんって」


「すみません」


エイルが笑う。


ガレスが続けた。


「何頭だ」


「二頭じゃなかったか?」


エイルがガレスを見る。


ガレスは特に反応しなかった。


「いつ聞いた」


「昨日だな」


「誰から?」


「この先ですれ違った奴だよ」


それ以上は分からなかった。


礼を言って別れる。


少し歩いてから、エイルが口を開く。


「三頭から二頭になりましたね」


「噂だからな」


「次は四頭になるかも」


「なるかもな」


エイルは少し笑った。


だから本人に聞くのだろう。


---


ベルノに着いたのは、日が高くなってからだった。


村の周囲には広い草地があり、あちこちで羊が草を食べている。


家の数はそれほど多くない。


ガレスが村を見回す。


「聞いてこい」


「俺が?」


「ああ」


「誰に?」


「それも自分で決めろ」


エイルは周囲を見る。


村の入口近くで、女が桶を洗っている。


少し離れたところには荷車を直している男もいる。


エイルは女の方へ歩いた。


「すみません」


女が顔を上げる。


「最近、羊がいなくなった家があるって聞いたんですけど、どこか分かりますか?」


「ああ、ロマのところだよ」


女はすぐに丘の方を指した。


「向こうの大きな柵がある家」


「ありがとうございます」


エイルはガレスのところへ戻った。


「ロマさんって人みたいです」


「ああ」


二人で丘へ向かった。


---


大きな柵の中に、何十頭もの羊がいた。


男が一人、柵の板を直している。


ガレスが声をかけた。


「ロマか?」


男が振り返る。


「そうだが」


「羊がいなくなったと聞いた」


男の手が止まった。


「どこで聞いた?」


「ハルドだ」


「それで来たのか?」


「ああ」


ガレスは柵の中を見る。


「まだ困ってるなら話を聞く」


ロマはガレスとエイルを交互に見た。


「何の人だ?」


「獣や魔物の仕事もする」


ガレスが答える。


「ただ、今のところ魔物かどうかは知らん」


ロマは道具を置いた。


「三頭だ」


エイルは黙って聞く。


ようやく数が確かめられた。


「いつからだ」


「最初が六日前。その二日後に一頭。それからもう一頭」


「死骸は?」


「ない」


「血は?」


「見つけてない」


「柵は壊れてたか」


「いや」


「羊が自分で出た可能性は?」


ロマは少し考えた。


「ある。だが三頭とも見つからん」


「誰か見たか」


「村の猟師に頼んだ」


「何て言ってた」


「狼かもしれんと」


「足跡は?」


「俺には分からん」


「猟師は?」


「今朝から山だ。日暮れ前には戻ると思う」


ガレスが羊の群れを見る。


すぐには何も言わなかった。


ロマが聞く。


「見てくれるのか?」


「調べるなら金をもらう」


「見つからなくても?」


「ああ」


「いくらだ」


ガレスが金額を伝える。


ロマは顔をしかめた。


「それなら、まず猟師が戻るのを待つ」


「それでいい」


ガレスはあっさり答えた。


「そいつが分からなかったら、また話せ」


二人は柵から離れた。


---


村へ戻りながら、エイルが聞いた。


「見ないんですね」


「頼まれてないからな」


「少しくらい見れば、何か分かるかもしれないですよ」


「分かるかもしれんな」


「でも見ない?」


「ああ」


ガレスは歩き続ける。


「調べるのも仕事だ」


エイルは後ろを振り返った。


ロマはもう柵の修理に戻っている。


「じゃあ、猟師が戻るまでどうします?」


「飯を食う」


「その後は?」


「仕事があれば仕事」


「なければ?」


「待つ」


エイルは少し笑った。


また待つらしい。


二人は村の中心へ向かった。


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