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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百五十七話 残された子

翌朝、エイルが目を覚ますと、ガレスの寝床はもう空だった。


昨日言っていた通り、一人で森へ向かったらしい。


エイルは朝食を済ませると、宿の主人に仕事がないか聞いた。


「今日は聞いてないな」


「荷運びも?」


「朝の分はもう人が決まった」


「分かりました」


外へ出る。


ガレスが戻るまで待っている必要はない。


市場を回り、荷を運ぶ人を探している店がないか聞いてみた。


二軒目で、雑貨屋から倉庫の整理を頼まれた。


荷車から降ろした箱を店の裏へ運び、古い棚を動かす。


半日ほどの仕事だった。


昼を過ぎた頃、仕事を終えたエイルは宿へ戻った。


ガレスはいない。


エイルは昼食を取り、そのあと剣の手入れをした。


昨日は抜かなかった。


それでも森の近くで何日も過ごしていると、鞘や柄に細かな土がついている。


布で拭き、刃も確かめる。


しばらくすると、宿の扉が開いた。


ガレスだった。


服の裾に泥がついている。


「おかえりなさい」


「ああ」


「どうでした?」


ガレスは水を頼んでから椅子に座った。


「いた」


エイルも向かいに座る。


「子ですか?」


「ああ」


「親のところに?」


「近くにな」


「元気でした?」


ガレスは少し考えた。


「動いてはいる」


「それなら大丈夫?」


「分からん」


「何を見てきたんです?」


「まず距離を取って見た。親の死骸の周りをうろついてた」


「近づいたんですか?」


「近づいてない」


ガレスは運ばれてきた水を飲んだ。


「見るだけだからな」


「子の方も?」


「こっちには気づいてた。逃げはしなかった」


昨日と同じだった。


親のそばから離れたくないのかもしれない。


「餌は?」


「それも見た」


ガレスが言った。


「沢の近くに、小さい獣を食った跡があった」


「その子が?」


「たぶんな」


「じゃあ、自分で狩れる?」


「少なくとも、何も食えないほど小さくはない」


エイルは頷いた。


「なら、置いておくんですか?」


「ああ」


答えは短かった。


夕方になる前に、二人で牧場へ向かった。


牧場主へ結果を伝えるためだった。


デリクはいない。


今日は腕を休めている。


牧場主は柵のそばで牛を見ていた。


「どうだった?」


「子は生きてる」


ガレスが答える。


「それで?」


「そのままにする」


牧場主の顔が曇った。


「大丈夫なのか?」


「大丈夫とは言わん」


「じゃあ、何で放っておく?」


ガレスは森を見る。


「自分で餌を取ってる跡がある。牧場まで出てきた跡もない」


「でも大きくなるだろ」


「ああ」


「また牛を襲ったら?」


「その時は対処する」


牧場主は納得していないようだった。


「今なら簡単に倒せるんじゃないのか」


「親よりはな」


「だったら――」


「今のところ、殺す理由がない」


牧場主が眉を寄せた。


「森牙なんだろ?」


「ああ」


「なら危ないだろ」


「森に森牙がいるのはおかしくない」


ガレスは淡々と答えた。


「森にいるだけのやつまで全部狩るわけじゃない」


牧場主は森へ目を向けた。


「でも、こっちに来るかもしれない」


「来るかもしれん」


「その時じゃ遅いこともあるだろ」


「ああ。だから跡を見る」


ガレスは柵の外を指した。


「しばらくは森の近くを見ておけ。大きな足跡が増えたら、牛を森側へ出すな」


「また来たら?」


「その時は人を呼べ」


牧場主はしばらく黙っていた。


やがて息を吐く。


「……分かった」


完全に安心した顔ではなかった。


それでも、それ以上は何も言わなかった。


報酬を受け取ると、ガレスはその場でデリクの分を分けた。


「渡してくる」


「俺も行きます」


二人でデリクの家へ向かう。


デリクは家の前で矢を直していた。


昨日曲がった矢から鏃を外している。


「休んでるんじゃなかったんですか?」


エイルが言う。


「弓は引いてない」


「そういう意味ですか」


「そういう意味だ」


ガレスが金を渡す。


デリクは受け取ると、一度だけ中身を確かめた。


「子は?」


「残した」


「そうか」


それだけだった。


エイルはデリクの手元を見る。


「気にならないんです?」


「何が?」


「また牧場に来るか」


「来るかもしれん」


デリクは鏃を布で拭く。


「来ないかもしれん」


「それでいいんですか?」


デリクが顔を上げた。


「森にいる獣を全部殺すわけにもいかんだろ」


「ああ、まあ……そうですね」


「畑や家畜のところまで来るなら話は別だ」


デリクは外した鏃を箱へ入れた。


「来てからじゃ遅い時もあるけどな」


ガレスが言う。


「だから跡を見る」


「そういうことだ」


デリクが頷いた。


宿へ戻る途中、エイルは昨日まで通っていた道を歩いた。


数日間、同じ牧場へ通った。


牛の死骸を見て。


足跡を調べて。


山羊の話を聞いて。


森へ入り。


デリクを探し。


森牙を見つけ。


待って。


ようやく親を倒した。


「結構かかりましたね」


エイルが言った。


「何がだ」


「この仕事」


「そうだな」


「もっと早く終わることもあるんですか?」


「ある」


「逆も?」


「ある」


「もっとかかる?」


「ああ」


ガレスは特に嫌そうでもなく答えた。


エイルは少し考える。


「次の仕事は?」


「ない」


「また探すんですね」


「ああ」


「どこで?」


ガレスがエイルを見る。


「それを今から考える」


「決まってないんですか」


「決まってたら、もう向かってる」


「それもそうですね」


村へ戻る道の途中で、ガレスが立ち止まった。


道が二つに分かれている。


片方は宿のある村の中心へ。


もう片方は南へ続いていた。


ガレスは南の道を見る。


「明日はこっちへ行く」


「仕事があるんですか?」


「ない」


「じゃあ、何で?」


「ここにいても、今は聞いてないからだ」


ガレスは再び歩き出した。


エイルも隣を歩く。


「俺も行っていいですか?」


「好きにしろ」


「じゃあ行きます」


翌日はまた、仕事を探すところから始まることになった。

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