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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百五十六話 血の跡

翌朝、三人は再び牧場へ向かった。


デリクの左腕には昨日より厚く布が巻かれている。


ガレスがそれを見る。


「弓は?」


「今日はやめとく」


「そうしろ」


デリクは弓を持っていなかった。


代わりに腰へ短剣を下げ、森へ入るための荷物だけを持っている。


「来るんですか?」


エイルが聞いた。


「血の跡くらいなら見られる」


デリクは左腕を軽く上げた。


「こっちは使わなきゃいい」


「無理なら戻れ」


ガレスが言う。


「ああ」


牧場へ着くと、昨日の餌はそのまま残っていた。


新しい被害もない。


ガレスは牧場主から夜の様子だけ聞くと、昨日森牙が逃げ込んだ場所へ向かった。


草にはまだ血が残っている。


昨日より色は暗い。


ガレスがしゃがんだ。


「入るぞ」


デリクが頷く。


エイルも一歩前へ出たところで、ガレスが振り返った。


「お前はここまでだ」


「はい」


エイルは止まった。


昨日、森牙は傷を負ったままこの先へ入っている。


今までより危険なのは分かる。


「牧場で待ってればいいですか?」


「ああ」


ガレスは少し考えてから付け加えた。


「俺たちが戻った時は昨日と同じだ」


「合図まで近づかない」


「そうだ」


デリクが森へ入る。


ガレスも続いた。


二人の姿はすぐ木々に隠れた。


---


牧場へ戻ると、エイルは柵の修理を手伝った。


昨日、牛を一か所へ集めたせいで一部の杭が傾いている。


牧場主の息子と二人で杭を抜き、打ち直す。


「今日は倒せるかな」


息子が言った。


「どうでしょう」


「昨日あれだけ矢が刺さったんだろ?」


「二本ですね」


「じゃあ弱ってるんじゃないか?」


エイルは縄を引きながら森を見る。


「弱ってるかもしれないですけど、だから安全とは限らないと思います」


「そういうもんか」


「たぶん」


エイル自身、傷ついた森牙と戦ったことはない。


ただ、ガレスが自分を森へ連れていかなかった。


それだけでも、簡単ではないのだろうと思った。


二人で杭を立て直す。


今度は身体強化を使って押し込んだ。


「もう少しこっち」


「はい」


作業が終わる頃には、手のひらに土がついていた。


---


昼を過ぎても、二人は戻ってこなかった。


エイルは牧場主たちと食事を取った。


昨日と同じように、時々森を見る。


何も分からない。


森の中で何が起きているのか。


二人がどこまで進んだのか。


森牙が生きているのか。


待つしかなかった。


やがて牧場主が言った。


「昨日より長くないか?」


「そうですね」


「見に行かなくていいのか?」


エイルは首を振った。


「行かないです」


「でも何かあったら」


「俺が入っても、どこにいるか分からないですから」


それに、ガレスから来いとは言われていない。


牧場主もそれ以上は言わなかった。


---


日が傾き始める前に、森の端で人影が動いた。


エイルは立ち上がった。


一人目はガレスだった。


剣は抜いていない。


少し遅れてデリクも出てくる。


歩き方におかしなところはない。


それでもエイルはその場に残った。


二人が森から十分に離れる。


ガレスが手を上げる。


そこでエイルは近づいた。


「どうでした?」


ガレスは水筒を出した。


「見つけた」


「森牙を?」


「ああ」


牧場主もやってくる。


「倒したのか?」


「死んでた」


牧場主が目を見開いた。


「昨日の傷で?」


「たぶんな」


デリクが答えた。


「沢の近くまで行って倒れてた」


「じゃあ終わったのか」


牧場主の表情が緩む。


だが、ガレスは答えなかった。


エイルが気づく。


「子は?」


「いた」


ガレスが水を飲む。


「生きてる」


「一頭で?」


「ああ」


---


森牙の親は、昨日の場所からかなり奥まで移動していた。


血の跡は途中で薄くなったが、デリクが足跡を見つけたらしい。


沢を越えた先で、親は倒れていた。


「子は近くから離れなかった」


デリクが言う。


「近づいたら唸ってきた」


「襲ってきたんですか?」


「いや」


ガレスが答える。


「逃げもしなかった」


「じゃあ、どうしたんです?」


「置いてきた」


牧場主が眉を寄せた。


「置いてきた?」


「ああ」


「また大きくなって牛を襲うんじゃないのか?」


「その可能性はある」


「なら今のうちに――」


「まだ小さい」


ガレスが言った。


「今すぐここへ出てくるとは限らん」


牧場主は納得していない。


「でも、森牙なんだろ?」


「ああ」


「だったら同じじゃないのか」


デリクが首を振った。


「親が牛を襲ったのも、最初から牛ばかり狙ってたとは限らん」


「どういうことだ?」


「森の中で餌が取れてりゃ、こっちまで出てこないこともある」


牧場主は森を見た。


「じゃあ、あれはどうする」


ガレスは少し考えた。


「明日もう一度見る」


「殺すのか?」


「それも見て決める」


---


その日の報酬についても話になった。


牧場主は親を倒したのだから、これで討伐分を払うと言った。


ガレスはデリクと確認してから頷いた。


ただし、明日の確認については別だった。


「まだ取るのか?」


牧場主が言う。


「子の様子まで見てほしいならな」


ガレスが答える。


「親を倒すところまでは最初の話だ」


「子も一緒にいたんだろ?」


「最初に数が分かった時点で話はした」


牧場主が黙る。


以前、追加の調査や人数について話した時のことを覚えているらしい。


「いくらだ」


ガレスが金額を伝える。


高くはない。


森へ入って様子を確認する分だけだった。


「分かった」


牧場主は渋い顔で頷いた。


---


村へ戻る途中、エイルが聞いた。


「明日は俺もここで待つんですか?」


「いや」


ガレスが答えた。


エイルが横を見る。


「じゃあ?」


「来なくていい」


「え」


「子を見るだけだ。デリクも来なくていい」


「俺もか?」


デリクが聞く。


「腕を休めろ」


「そりゃ助かる」


デリクはあっさり答えた。


エイルは少し考えた。


「ガレスさん一人で行くんですか?」


「ああ」


「親がいないから?」


「それもある」


「他には?」


ガレスは歩きながら答える。


「一人の方が近づかずに見やすい」


「なるほど」


エイルは頷いた。


何でも人数が多ければいいわけではないらしい。


村の手前でデリクと別れる。


「じゃあな」


「腕、ちゃんと休めてくださいね」


「お前、俺の母親みたいなこと言うな」


「昨日から痛いって言ってるじゃないですか」


「分かった分かった」


デリクが笑って歩いていく。


ガレスも宿へ向かう。


エイルはその隣を歩いた。


森牙を倒す仕事は終わった。


けれど、森にはまだ一頭残っている。


明日はガレスが、それを見に行く。


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