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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百五十二話 倒すかどうか


牧場へ戻ると、ガレスは見たものをそのまま牧場主に伝えた。


森牙が一頭。


その近くに子が一頭。


六日前に消えた山羊のものと思われる骨。


牛を襲ったものも、同じ個体である可能性が高い。


牧場主は腕を組んだ。


「じゃあ、やっぱりあいつが牛をやったんだな」


「そう見ていいと思う」


「なら倒してくれ」


ガレスはすぐには頷かなかった。


「デリク」


「ああ」


呼ばれたデリクが前へ出る。


ガレスは牧場主に言った。


「二人でやる」


牧場主がエイルを見る。


「三人じゃないのか?」


「こいつは入れない」


エイルは黙っていた。


昨日までなら少し残念に思ったかもしれない。


だが、森で実物を見たあとでは、簡単に「自分も戦える」とは言えなかった。


「二人なら、前に話した額より上がる」


ガレスが金額を示した。


牧場主が顔をしかめる。


「そんなにか?」


「二人分だ」


「でも一頭だろ?」


「子がいる」


「子まで金を取るのか?」


「そういう話じゃない」


ガレスは森の方を見た。


「親の動きが変わる。追い方も変わる」


デリクも口を挟む。


「俺も安いならやらんぞ。子連れの森牙なんて、わざわざ近づきたい相手じゃない」


牧場主は黙った。


⸻


しばらく金額の話が続いた。


牧場主にとっても小さな金ではない。


牛を一頭失っている。


さらに討伐の金を払う。


それでも、森牙がこの辺りを餌場にしているなら、次の牛が襲われるかもしれない。


「……分かった」


最後に牧場主が言った。


「その額で頼む」


ガレスが頷く。


「ただし、もう一つ決める」


「何だ?」


「子だ」


牧場主が眉を寄せる。


「子?」


「親を倒したあと、どうする」


「どうするって……」


「殺すのか、追い払うのか」


牧場主は困った顔をした。


「そんなの俺に聞かれても分からん」


「俺も今は決めない」


ガレスが言う。


「大きさと状態を見て決める。親がいなくても生きられるくらいなら、森の奥へ逃がす。まだ無理なら別だ」


「危なくないなら、それでいい」


「分かった」


そこで話がまとまった。


⸻


牧場主から離れたところで、エイルが聞いた。


「子供って、逃がすこともあるんですね」


「ある」


デリクが答えた。


「魔物なのに?」


「魔物だから全部殺すのか?」


「いや……そういうわけじゃないですけど」


エイルは少し考えた。


学校では魔物の種類や危険性を習った。


討伐の方法も習った。


だが、子をどうするかまでは覚えていない。


ガレスが言う。


「人を襲うなら話は別だ」


「今回のは家畜だけですよね」


「今のところはな」


「でも牛は殺した」


「そうだ」


「じゃあ危険じゃないんですか?」


「危険だ」


エイルは少し困った。


「難しいですね」


「だから現場を見て決める」


ガレスは荷物を下ろした。


⸻


すぐに森へ戻るわけではなかった。


デリクは牧場の周囲を歩き始めた。


「何してるんです?」


エイルが聞く。


「場所を見る」


「森はさっき見ましたよね」


「森牙を倒す場所は森の奥じゃない方がいい」


デリクは放牧地を見る。


ガレスも別の方向から地形を確認している。


エイルは二人について歩いた。


森の北側。


放牧地。


小さな沢へ続く低地。


柵。


牛舎。


「追い出すんですか?」


エイルが聞く。


「できればな」


ガレスが答えた。


「森の中で戦わない?」


「木が多いとデリクの弓が使いにくい」


「俺は森でも撃てるぞ」


デリクが言う。


「撃てるのと、撃ちやすいのは別だろ」


「まあな」


二人は普通に話している。


エイルは少し面白くなった。


「二人とも意見違うことあるんですね」


デリクが笑う。


「当たり前だろ」


「ガレスさん、いつも一人で決めるから」


「お前と二人しかいなかったからだ」


「ああ」


考えてみれば当然だった。


⸻


しばらく地形を見たあと、ガレスが一本の道を指した。


森から放牧地の端へ続く、細い獣道だった。


「ここを使わせる」


デリクが見る。


「沢側から回す?」


「ああ」


「子もいるぞ」


「だから急に追わない」


二人で話が進んでいく。


エイルは聞いていたが、途中から分からなくなった。


「俺は何するんです?」


ガレスが振り返る。


「牧場に残れ」


「やっぱり?」


「ああ」


「何か手伝えることは?」


ガレスは少し考えた。


「牛を森から離しておけ」


エイルは牛を見る。


「俺が?」


「牧場主と一緒にな」


「ああ、そういうことですか」


「それと」


ガレスが放牧地の端を指した。


「俺たちが森から出てきても、近づくな」


「森牙がいなくても?」


「ああ」


「なんでです?」


「追ってくるかもしれん」


「分かりました」


エイルは頷いた。


⸻


準備が始まった。


牧場主と息子が牛を牛舎側へ移す。


エイルも手伝った。


牛は思ったようには動かない。


後ろから追うと横へ逃げる。


牧場主に言われて、広がりすぎないように回り込む。


「そっち塞いでくれ!」


「はい!」


一頭が柵の方へ行く。


エイルは走った。


間に合わないと思い、身体強化を使う。


地面を強く蹴る。


牛より先に柵際へ回り込み、両腕を広げた。


牛が止まり、向きを変える。


「そのまま!」


牧場主の息子が反対側から追った。


ようやく牛が牛舎の方へ戻る。


エイルは息を吐いた。


少し離れたところで、ガレスがこちらを見ていた。


「何です?」


「いや」


ガレスはそれだけ言って、自分の荷物へ戻った。


⸻


牛を移し終える頃には、ガレスとデリクの準備も終わっていた。


デリクは矢を確認している。


ガレスは剣の位置と背負い袋を確かめた。


「今日やるんですか?」


エイルが聞いた。


「まだ決めてない」


「え?」


「場所を見るところまで行く」


デリクが弓を背負う。


「条件が悪けりゃ帰る」


「依頼を受けたのに?」


「受けたからって、今日絶対やるとは言ってない」


ガレスが答えた。


「雨が降るかもしれん。森牙が想定と違う場所にいるかもしれん。子がもう一頭いるかもしれん」


「まだ増える可能性もあるのか……」


「ある」


エイルは森を見る。


姿まで確認した。


相手も分かった。


人数も増えた。


金の話も終わった。


それでも、まだ戦うとは決まらない。


「じゃあ、行ってくる」


ガレスが言った。


「はい」


エイルは頷いた。


デリクが笑う。


「坊主、牛に負けるなよ」


「さっき一頭止めましたよ」


「牛と戦うな」


「戦ってません」


デリクは笑いながら森へ向かった。


ガレスも続く。


エイルは二人が森へ入っていくのを見送った。


その後ろから、牧場主の声が飛んできた。


「エイル! そっちの柵閉めてくれ!」


「はい!」


エイルは森から目を離し、柵の方へ走った。

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